降りに降った雨があがった昨日は、一転して、強い風が吹いた。空は晴れているが、おもわず身をすくめるような冷たい風だった。
こういう日の夜は、雲が吹き払われているので、夜空が深い。東京は満天の星空などのぞみようがないが、しかし、金星がひときわ輝いて見えるのである。
このところよんどころない用事があって、しばしば夜の外出がつづいた。ふと気付くと、宵闇のなかに紅梅白梅が咲きそろっている。寒さに身をちぢめてはいても、春はそこまでやって来ていた。風は春一番なのだろうか。
こんな句を思い出した。
つやつやと梅ちる夜の瓦かな 栗田樗堂(ちょどう:1749-1814)
栗田樗堂は伊予松山のひと。小林一茶と親交があった。一茶は西国行脚のおり、四国で樗堂にあたたかく迎えられている。松山は正岡子規(1867-1902)を産み、高浜虚子(1874-1959)を産んでいるが、幕末期に四国俳壇の雄であった栗田樗堂による豊かで充分な下地が松山にはあったといえよう。
上の句。幕末期の夜は現代よりずっと暗い。おそらく月明かりがあったのだろう。梅のはなびらがちらりほらりと散っている。そのはなびらが月明かりにつやつやと光る。そして屋根の瓦もまた闇のなかでつやつやと光っているのである。なんともいえない情緒が漂う、みごとな一句。
さまざまの草木にさきがけて咲く梅は、「花の兄」の別称がある。桜は「花の弟」。
花の兄に恋慕やつもる雪女 薩摩衆
花の兄始めて見るはなんし哉 利貞
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 2, 2009 04:33:26 PM
コメント(0)
|
コメントを書く
[詩・俳句・短歌・英語俳句・英語詩] カテゴリの最新記事
もっと見る