病院への往復にバスを使っていることについては先日の日記に書いた。車窓から見る街のなかの花や木々は、楽しみのひとつである。じつにさまざまな花木が植えられていて感心する。生垣のイヌツゲや紅カナメやコノテカシワ、梅、桜、花桃、椿は言うにおよばず、ドウダンツツジ、ツツジ、サザンカ、エニシダ、レンギョウ、シャクナゲ、サンシュユ、コブシ、モクレン、カイドウ、コデマリ、ハナミズキ、ボケ、トサミズキ・・・。個人の庭の植栽は、もちろんその人の趣味によるだろう。つまりは趣味が千差万別ということだが、そのあまりの違いに驚くのである。
ところで、ある畑地の二か所に枝垂桜、ないしは枝垂桃があって、両方ともに今が盛と咲き誇っている。しかし私が気にとめたのは、そのうちの一本の木の花が紅白いりまじっているからだ。
以前、我家の近所の梅が一重と八重が一本の木のなかでいりまじっていることを書いた。どうしてそんなことが起るのか、私は不思議でならないのだった。この枝垂桜(桃)の場合は、花の色が一本の木のなかで紅白いりまじっているのである。もう一本の木は白一色の花である。ということは、この入り混じっている木は、異種交配によるか突然変異種と考えられるが、それにしても、花色が別々のまま各々の枝がいりみだれているのだから、まことに珍なる光景だ。桃や桜は異種交配が起りやすいのだろうか。桜が自然種・園芸種あわせて160種ほどにもなるのはそのためかもしれない。
バスの車窓からその異様な枝垂桜をながめながら、「こういう華やかさは、しかし、嫌いじゃないな」と思い、ふと、「歌舞伎桜」と呼んでみたくなった。異装に身をやつすことを「かぶく」といい、そうして闊歩する男たちを「かぶき者」と称した。歌舞伎の語源である。いかがであろう、「歌舞伎桜」。
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