訪問入浴のスタッフが、「向いのお宅は、おおきな亀を飼っているんですね。いま、道端に水槽が出ています」と言った。
「そうなんです。小さなミドリガメが、20cmほどにもなったのだそうですよ。奥さんがときどき散歩させています」
「亀も散歩が必要なんですか-!!」
高浜虚子に、「亀鳴くや皆愚なる村のもの」という一句がある。季語は「亀鳴く」である。典拠は夫木集の藤原為家、「川越のをちの田中の夕闇に何ぞときけば亀のなくなり」という一首だという。
私は虚子のこの句が好きだ。好きというより、何か日本の底しれない闇を掬いとっているようで、忘れられない。為家なんぞ及ぶところではない。
きょうの私の句は、この虚子の句を典拠としていると申せば、ほかに説明はいらないだろう。お向かいさんの亀が鳴くかどうかは知らない。
古池や徒党を組めば亀が鳴く 青穹
亀鳴いて汚泥の底のおどろ哉
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