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本日正午、1953年以来のアナログTV放送が終了し、東日本震災の被災地である岩手県、宮城県、福島県を除く44都道府県が地上デジタル放送に移行した。
いわゆる「地デジ難民」といわれる地上ディジタル波による視聴困難な地域の問題、あるいは、TV放送をFMラジオで音声のみを聴いていた視覚障害者や寝たきりの高齢者などがTV放送から疎外されてしまうという問題を残しての出発である。
あるいは年金生活の独居老人世帯は、高価な地上ディジタル・テレビに買い替えられないなどの問題も、無くはあるまい。おそらく、テレビ視聴をあきらめて、インターネットに頼ると考える人もいるかもしれない。
情報格差の問題は、目に見えにくいかたちで非常に重要な事態をひきおこすことも予想できる。郵政民営化により、離島や過疎地域が、あるいは山奥に一人暮らしするような人が、郵便伝達手段から見放されたように。
我が家は数年前に地上ディジタルTVに替えていたので、今日正午の移行公示のテレビ画面も、家人はさほどの感慨もなく見過ごしたようだ。
思えばその昔、我が家にテレビが入ったのは、1958年のこと。私は13歳、中学1年だった。皇太子御成婚に合わせるように、八総鉱山では会社がテレビ中継塔を建設し、社員のテレビ購入にも便宜をはかったのだった。もっとも、私自身はこの時すでに家を離れて単身で会津若松の学校に行っていたので、家にテレビがやってきた感動は無い。2ヶ月に一度くらいの割合で、週末に一泊の帰宅をしたときに初めて見たのだった。
どういうわけか、私はその当時からテレビにあまり興味がなかった。現在のように24時間放送されていたわけではないが、末弟などは完全にテレビっ子で、かじりつくようにして見ていたのを思い出す。
記憶に残っているのは、日劇カーニバルにおけるロカビリー狂乱のステージや、力道山のプロレス中継、「日真名氏飛び出す」という探偵ドラマ、そして劇場中継『がめついやつ』。少し後の『事件記者』は家族全員で楽しんだ。アメリカの番組、『ローハイド』や『ルート66』『ルーシー・ショウ』『奥様は魔女』などなど。
日劇カーニバルの山下敬二郎、平尾正晃、ミッキー・カーチス。プロレスは力道山、豊登、ルーテーズ。力道山は、まだ相撲の力士の頃、戦後まもなく北海道巡業で羽幌町に来たとき、弓取式に使う弓を我が家に借りに来た。相撲は吉葉山や千代ノ山の時代である。
劇場中継『がめついやつ』は、三益愛子主演、中山千夏が子役で出演し、その演技に中学生の私は驚嘆した。3年後に、私はアマチュア劇団の童劇プーポに入団することになるが、『がめついやつ』の衝撃が少なからず影響している。
親元を離れての学校生活が長かったので、その間、私はテレビと無縁だった。その後もさほど変わっていないかもしれない。まず、テレビドラマというやつは、まったく見ない。唯一記憶に残る優れた作品は、『岸辺のアルバム』くらいだ。某女性脚本家の作品など、私にはとてもドラマとは思えないのだ。まあ、批判はしないでおこう。どうせ見ないのだから。
お笑いが好きなのだが、最近は、どうもね、学校のクラス会の余興に磨きをかけたような感じで、ちっとも面白くない。子供騙しだね。
私は昔のコントレオナルド(レオナルド熊さんと石倉三郎さんのコンビ)が好きだ。あのような社会性のあるお笑いがホシイな~。やっぱりお笑いの本質は、反権力や政治風刺、社会風刺。そういう、いわばアブナイ橋を渡ってこそ、お笑い芸なんだと思う。おとなの芸なんだよね。
テレビ局ががそういうアブナイ芸を閉め出したのかもしれない。そして子供騙しのお笑い芸人が二六時中番組を取り仕切っている。ニュース番組や、社会ドキュメンタリーや科学番組にさへ、シャシャリ出て来る。短い番組時間をバカなことを甘ったれた口調で賑わして無駄に使う。肝心な部分はむしろ付け足しのようだ。つまりテレビがつまらない、というわけ。
なにしろ自己信条として反原発を公言して、テレビから締め出された俳優がいるようだから。
テレビ局の言い分は、おそらく、反原発を信条とする俳優を使うと思想の偏向だと非難されると考えたのでしょう。しかし、それなら、原発推進を公言する人物だって締め出さなくちゃ。
こうして改めて言うとどちらにしろ奇妙でしょう?
つまりジャーナリズムの本質は偏向を云々して中庸であろうとしたら駄目なのですよ。偏向を云々すると、それ自体が思想的偏向となる矛盾に陥ってしまうのですね。そういう新聞雑誌は多いですが。
双方の主張を徹底的に取材して、加工せずに報道する。あるいは双方を「分析する過程そのもの」をジャーナリスト側の主張として公表する。それがジャーナリズムというもの。
数日前、地デジ移行にともなって、すんなり移行できない老人が、「これからはテレビを見ないよ。どうせお笑いばかりだから」と言っていた。お笑いブームだそうだが、私はお笑いが好きなので、ブームという言葉がかえって空虚な響きがする。
まあ、番組は変りはしないが、ともかくもアナログ放送58年の歴史に幕が降りた。さようなら、アナログ放送。
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