きのうの朝日新聞に「あっ、そうだったのか」と、60年後にして知らされた小さな囲み記事があった。
春には北へ、秋には南へ渡りをすることで知られているアサギマダラという蝶がいる。世界的にはカナダあたりから遙か南米メキシコまで3,000キロの渡りをするオオカバマダラが有名だが、アサギマダラは、日本で唯一の渡り蝶である。
そのアサギマダラが、渡りの途中に長野県大町市の古川孝雄さん宅のフジバカマ畑に立ち寄っている、というのである。
私が60年後に知ったというのは、じつは小学1年生のときに、このアサギマダラを長野県南佐久郡川上村で採集しているからだ。昆虫少年だった私にとって、それが最初で最後のアサギマダラとの出会いだった。おそらく私は、渡りの季節に、渡りの通り路で出会ったのだろう。
当時、アサギマダラが渡り蝶であることは蝶類学会でも知られていなかった。私が小学生時代から使っている保育社の横山光夫著『原色日本蝶類図鑑』(この図鑑は知る人ぞ知る名著である)には次のように記述されている。
「九州から北海道まで全土に分布するが、南方系のもので本種のように北部の寒冷地にまで棲息するものはきわめて珍しく他にあまり例をみない。(中略)かつて筆者が支那海の中央を航行中、船上に舞いおりたこの蝶を見たが、東京や大阪の都心でも度々見受けられて話題となっている。(後略)」
この記述は、アサギマダラが渡りをする蝶であることが知られていなかったことを示している。ちなみに、オオカバマダラの渡りについては、この図鑑はその旨の記述がある。
私は、いまでも採集したときの光景を周囲の景色ともども目に浮かべることができる。しかし、その影像はいわばフレームの端がぼやけていて、川上村のどこであったかを特定することはできない。なにしろ植物や蝶を探して、一人で村のあちらこちらを歩き回っていたのだったから・・・
資料保存箱をさがせば、60年後の現在でも、その標本はある。そして、添付ラベルには採集日付と場所が記録されているはずだが・・・。
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Last updated
Sep 30, 2012 10:28:32 AM
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