友人Sが亡くなったという報せがあった。まったく同年齢で、薄い付合いだったが、20代後半から30代前半にかけて、飲み歩いた仲間だ。最後に会ったのは、たしか、もう20年ほども前だ。新宿ステーションビルで、私がエスカレーターで降りようとしていると、Sが下からのぼってきた。互いに「オッ!」と驚き、そのまま連れ立って喫茶店に入って近況を語り合った。彼は商業デザイナーで、私と同業といってもいいが、少し分野がちがった。あまり仕事の話はしなかったと記憶している。
彼の死を報せてくれた人も、同年齢だった。もうひとり同年齢の男がいて、飲み歩いた仲間は大勢だったが、同年齢というのはたぶん4人だけ。それだけに、「ショックだ」と、報せてくれた電話での言葉は本当だろう。「 だんだん一人消え、二人消え、いなくなる。元気なのは、われわれ二人だけだ」と。