日本の人の心が荒廃してきているなと、つくづく思った。
買い物に出かけ、街路をのんびり自転車で走っていた。とある集合住宅の下を通ったとき、たまたま他に通行人はいなかったが、いきなり頭から水をぶちまけられた。「わっ!」と声をあげて驚き、自転車を止め、水が降って来た方を見た。3階のベランダに残余の水がしたたり、しかしすでに人影はなかった。私はキャップを冠っていたのだが、キャップはもちろん、シャツもパンツも、大粒の水滴で滲みになっていた。臭いをかいでみた。薬品類ではなさそうだった。警察に届けるべきか迷ったが、急いでいたので濡れたまま買い物に行った。
最近の報道に、高層マンションが立ち並ぶ繁華な街路で、どうやらそのような高層な建物から故意に危険物を投げ落したと想われる事件が相次いだとあった。また年齢的にはすでに老境に入ろうというような男が、鉄道付近で故意に火災事件を起こしている。新幹線車内で故意に火災を発生させた事件もある。---子供のいたずらではない。分別あってしかるべき「おとな」のシワザなのである。
私は以前、2階からカラー・ボール(ぶつけると割れて色液が飛び散る)を投げつける事件が起きて、自治会で見回りをしたことがある。
「愉快犯」と一口に言うけれど、なにか日本の社会全体が陰湿になってきているような感じがする。潜伏していた病巣からジクジクと膿が出て来ているような---。「悪貨が良貨を駆逐する」というのは経済学の理論。だが、もっと広く社会的・政治的にも通じるのではあるまいか。つまり、日本人の人心荒廃は(たとえ一握りだとしても)、でたらめな政治、品性下劣な人間が権力を揮う糞溜のような日本の政治状況に因がある、それが鏡に映るように人の心に現われている、と---社会現象をすべからく分析し統合しての、広い視野に立った社会心理学は、日本ではほとんど発達をみないが---私は思う。