今朝は20分ばかり寝過ごしてしまった。
私は目覚時計を使ったことがない。というより、持っていないのだ。翌日のスケジュールに合せて、何時に起きなければならないその時間に、ちゃんと目覚めるからだ。だから今朝のように寝過ごしたというのは、我ながら大変めずらしい。
なぜ寝過ごしたのか。夢のせいである。
夢の中で、写真撮影をしていた。パイロットケースのようなバッグを撮影していたのだが、真上からの視点と真横からの視点を、ワンカットの構図で撮ろうと四苦八苦していた。ああでもない、こうでもないとやり、そうするうちに、この構図づくりは、セザンヌが静物画でやったことの再現だと気がついた。だめだ。模倣になってしまう。再び視点を探し始めた。
いつのまにか知り合いの女性(らしかった)が、私のそばにいて、二人は漆黒の闇の中を歩いていた。いつまでたっても目的地にたどりつけないような気がした。すると彼女が、「近道を行きましょう」と言った。そして急坂の崖道を先にたって登りだした。あたりは依然として闇の中だが、目をこらすと足許は崩れやすい赤土で、ところどころに直径5、60cmほどの石が突き出ている。それに手をかけるとグラグラ動き、まるでボルダリングのように探り探りのぼると、そのとたんに石は落下していった。私は下に誰か居はすまいかと暗闇の底を覗き込んだが、見えるはずもない。このまま登りつづけても、はたして目的地に到達出来るのだろうか-------。不安が沸き上がり、心臓が早鐘のように打った。
「だめかもしれない!」と思ったとたん、目が覚めた。
たぶん、夢がどんどん深くなり、あるいはとんでもない寝過ごしになるところだったかもしれない。