三匹の飼い猫姉妹は18歳、言うなれば老猫たちである。
彼女達より1歳年長の姉妹、マリは2014年に死亡し、ついで昨年マスクが死亡した。マスクは可哀想なことをした。私の腕の中で私に看取られて死にたかったであろうに(頼って、離れようとしなかった)、私は断りきれない出張のため後ろ髪引かれる思いで家を出、帰宅したときには置いて行ったそのままの寝姿で死んでいたのだった。
マスクの死から4ヶ月後、今度はサチが私のベッドに来て激しい全身痙攣を起こした。私は驚いて体をおさえ、目を見ると、瞳がすっかり白濁していた。断末魔である。しかし心臓マッサージをつづけること10分、------たぶんそのぐらいだったろう------痙攣がおさまったのだ。そして荒い呼吸をしていたが、なんと瞳の白濁が次第に消え、やがて輝きがもどったのである。断末魔からの生還は実に驚くべきことだ。
その日から毎朝、総合ビタミン剤を1/4に割ったものとカルシウム剤を1/6、餌に包み込んで与えている。小さな塊にした柔らかい餌を私が指でつまんで食べさせている。
-------死の淵から還った当初1ヶ月ほどは、もしかすると私に救けられたと自覚していたかもしれない。私から離れないばかりか、私が立ち上がって部屋を歩き回ったり、どこかへ行く姿を、すがるような目で追った。夜は、私のベッドに入り、私の身体にぴたりと自分の体を寄せ、あるいは腕枕をして眠るのである。
サチのそんな状態は現在もつづいてい、やたらと話しかけてくるようになった。しかも以前と鳴声の音質が変わったのである。
人間の世界では「老老介護」などと言うけれど、いまや我家は老老猫介護だ。
じつは、今日、家人と話したのだが、サチが私の膝で眠るのが最も良く眠れるらしいのだが、寝ながらオシッコを漏らすようになった。私は、「だいじょうぶ、だいじょうぶ、怒らないよ。きれいにしてあげるね」と言いながら体を猫用のシャンプーで拭いてやる。
私は長年たくさんの猫を飼ってきたが、驚くのは、粗相をすると私のところにやって来て、オシッコを漏らしてしまったと教えるのである。これは私には初めてのことだ。そして、後ろ向きにして泡リンスシャンプーで汚れを落としてやるのを、じっと我慢している。トイレに間に合って漏らさずにすんだときは、トイレでオシッコをしたと、鳴いて知らせるのである。「よかったね、トイレでオシッコをしたんだね」と、私は頭を撫でながら言う。
さきほど私は、「さあ、みんなもう寝なさい。明日また、元気に遊びなさい」と言って、仕事場に入ったのであった。
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