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毎年この日を楽しみに出かけてゆく東京薬科大学の『東薬セミナー』を受講。
1)生命科学部応用生態学研究室・野口航教授『ストレス下における植物の適応戦略』
つづいて、
2)薬学部薬学動態制御学教室・白坂善之准教授『くすりと飲料の相互作用 ーなぜくすりは水で飲まないといけないのか』
各講義のトピックスに沿って私の理解を記述したいところだが、そう単純にはいかない。理化(科)学のおもしろいのは、ただ一個の問題を分断的に抽出してもあまり意味が無く、あらゆる現象が連繋していることのエビデンス(証拠)を収集し、世界の総体的構造を究めることにある。私としては頭にたたきこんだということで、この場は済ましておく。(---自分の言葉で écrere しないということは、何も理解していないと同じことで、この日記は意味が無いということになるのだけれども---ともかく---。)幻想も信仰も、用は無い。画家である私が、何を考えながら理化学講義を受講しているか-------
このセミナーは、大学祭『東薬祭』のひとつのプログラム。私はセミナーに出席する前に、いつも名物ガラクタ市のなかの古本コーナーを覗く。きょうも以下の13冊を購入した。合計金額510円也!
買った本を解題してもしかたないが、中谷宇吉郎博士は衆知のごとく雪の研究者。すぐれた随筆家でもあった。矢内原忠雄博士は、キリスト教研究が有名であるが、私は戦中のファシズムに抵抗した人物として畏敬の念を抱く。いま、ファシズム的な大政翼賛体制に進みつつある我国において、私は矢内原忠雄博士から学ばなければと思いつつ---。小林勇著『蝸牛庵訪問記』の「蝸牛庵」とは幸田露伴のこと。須賀有加子著『岩と渦の間』は、「あとがきとして」によれば姫路獨協大学学術出版助成によるそうだ。私がここ数年取組んでいる絵の主題がいわゆる「女性問題」なので、その研究資料である。今東光著『奥州藤原氏の栄光と挫折』は、なにしろ今東光氏は中尊寺貫主であられた(後註)。その方が書く奥州藤原氏である。また、私は拙著『夢幻能の劇構造と白山信仰私考』において藤原氏に言及している。最後に記した『瞑想録』は、もちろん『パンセ(Pansées)』のこと。わたしの書棚にすでにないわけではない。しかし、それは高校生のときに読んだ抄訳本。きょう見つけたのはブランシュヴィック版を底本とした完訳である。
☆『中谷宇吉郎随筆選集』 第1巻・第2巻・第3巻(朝日新聞社、1966年)
☆『矢内原忠雄 ー信仰・学問・生涯ー』南原繁・大内兵衛・黒崎幸吉・楊井克己・大塚久雄編(岩波書店、1968年)
☆ 小林勇『蝸牛庵訪問記』(岩波書店、1955年)
☆ 新藤兼人『追放者たち 映画のレッドパージ』(岩波書店、1983年)
☆ 須賀有加子『岩と渦の間 ーイギリス小説にみる逸脱の女性像ー』(南雲堂、1990年)
☆ 今東光『奥州藤原氏の栄光と挫折』(講談社、1993年)
☆ 吉行淳之介『懐かしい人たち』(講談社、1994年)
☆ 大江健三郎『ゆるやかな絆』(講談社、1996年)
☆ 井上靖『孔子』(新潮社、1988年)
☆ 松本清張『草の径』(文藝春秋、1991年)
☆ パスカル『瞑想録』由木康訳(白水社、1959年)
【後註】
註というほどのことではない。今東光氏の在りし日のお姿を思い出したのだ。あれは、谷崎潤一郎が亡くなってその追悼講演のときだった。今東光氏は若い頃、谷崎潤一郎の謦咳を浴びて兄事されていられ、谷崎氏の思い出を語られたのだった。有職故実にしろ何にしろ、良くよく調べて話さなければ忽ち一喝されたこと。牛車(ぎっしゃ)の乗り方のことを例にされたのを覚えている。また、二度同じ話をさせなかった、「その話、聞いた!」とそっぽをむかれるのだ、と。そして、これはたしかご自分のことだったと記憶するが、僧侶としてはいたくのんびりと、村の住職のように、縁先に上がり込む鶏を「こらこらコッコッコ、コッコッコ」とやっているのだと言って、聴衆を笑わせた。そうそう、御母堂との確執についても話された。愛情の裏返しと私は受け取ったが、御母堂が逝去されたときには「万歳」を叫ばれたとか。----50年以上も昔のことを、ふと、思い出した。
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Last updated
Nov 11, 2017 03:06:05 PM
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