きのうの日記に時計のことを書いた。書いたあとで思い出した事がある。
昔、展覧会のために1ヶ月ばかりニューヨークに滞在していたときだ。街を知るには歩くにかぎると、かなりの距離を歩き回っていた。あるとき、通りで一人の男が近づいてきて、「時計を買わないか」と言った。私は聞き間違いかと思って、「時計?」と聞き返した。すると男は着ていた上着のボタンをはずし、胸を開いた。上着の内側にさまざまな種類の腕時計がずらりと取り付けてあった。私は「オーッ!」とか何とか言ったかもしれない。それからすぐさま気をとりなおして、平然と、「ノー、サンキュー。アイ・ドント・ジャスト・ニーディット」と言った。「オーケイ」男は言った。そして「グッバイ!」と、立去って行った。
それだけのことだ。しかし、男が上着のボタンをはずしたとき、じつは私は内心ヒヤリとしたのだった。
そのときも、私は安物の玩具時計を腕にはめていた。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 8, 2018 01:41:58 PM
コメント(0)
|
コメントを書く
もっと見る