テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:カテゴリ未分類
「サユリさんは、もう準備万端、手ぐすね引いて病院で待っているので
しょう。隆一どのも同行した方がよろしいのでは」 「いえ、私は別な研究室でカンタム砲と光線銃の改良を始めます」 「分かり申した。拙者もここのスタッフと作戦を練りまする」 会議室から人間、地底人がいなくなると、その様子を別室のモニターで 観ていたカメぱっぱとガマのビッグが2匹そろって、大あくびをします。 「ボクたちの存在は忘れられたみたいパッパ」 「それでいいのじゃ、能書きよりも実践が大事なときだゲロゲロ。 ただひとつだけ作戦ミスがある」 「それなら、すぐに伝えようパッパ、今なら間に合うよ」 「いいのか、カメぱっぱ」 「なによ、ボクに関係あるの」 「おおありじゃ、赤膚族すなわち岩石人間は水圧に耐えられるからと、エラ 呼吸を進化させた皮膚呼吸が可能な手術をするならば、それよりも水中に 適している体を持つ、お前さんが最適なのじゃ。それも簡単な手術で済む ゲロゲロゲーロ」 「いやだ、手術はや~だ」 「海中で身軽な動きができる上に、岩石人間よりも水圧に強い体を持って いるのがカメぱっぱだ。体の前と後ろにある頑丈な甲羅へ深海での水圧に 耐えられる強力な材料を注入すれば1000mの潜水も可能じゃグァアグァア。 それよりも海の中にいる生物と自由に泳ぎ回れるのだ。イルカやクジラとも 友達になって楽しい時を過ごせるなんて羨ましいぞゲロゲロ」 「もーーう、さっきのデルフミュームがザビエスをたぶらかしたのと、同じ 手口だよね。それを言えばボクが喜ぶと計算しているよねパッパ」 「それは違う、ワシはカメぱっぱを信じているのじゃ、生田緑地の仲間だけで なく、友達になった多くの二本足、それにクリサーラさんと仲間の地底人を 助けるために、お前なら・・・」 「・・もう、いいパッパ、これから水中で長時間呼吸ができれば、たしかに 別な世界が広がって、もっともっと楽しいことがあるかもしれないね。 そうと決めたら、さっそくサユリさんに連絡しないと」 珍しくビッグはバツが悪そうな表情を浮かべました。 「悪い、カメぱっぱ、ここの裏口に救急車がもう1台、待機しているから、 すぐに向かってくれないかケロケロ」 「ひどい、それも、さっきのデルさんがザビエスを引っかけたのと同じだ パッパ。こっちの返事を聞く前に手術の準備をしているなんて。ビッグ、 やい、このガマガエル・・」 「もっと怒ってくれ、ののしってくれ、それでこの地球という星が平和に なるならワシは、甘んじてお前の怒りを受け止めるグァアグァア」 「いや、あなたは、やはりビッグだよ。これからもボクたちの知恵袋として 生きてよねパッパ」 そのままスタスタと短い足を動かし出口方向に向かうカメぱっぱ、その後ろ姿 を見送るビッグの大きな目ん玉には、なぜか水滴があふれていました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|