2007/11/24(土)00:55
Fleetwood Mac 「Albatross」
フリートウッド・マックといったら、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムが加入してからの、ポップ・バンドとしてのイメージが一般的だろう。'77年には「Rumours」という可もなく不可もないポップ・ロック・アルバムをメガヒットさせている(全米1位を31週間記録)というハクもあるし
しかし、フリートウッド・マックというバンドは、元々ピーター・グリーンを中心とした典型的なブルースロック・バンドで、60年代後半にはChicken Shack、Savoy Brownと共に"3大ブルースバンド"と呼ばれていた(そうだ)。
キング・クリムゾンの1stと並ぶ"鼻の穴ジャケット"(上写真)が強烈なこのアルバム「English Rose(英吉利の薔薇」は、1969年発表。アメリカ仕様の編集盤であり、日本で初めてリリースされたフリートウッド・マックのアルバムである。
ピーター・グリーン在籍時の代表作で、直球ど真ん中といった感じの、もろブルース・ロックなアルバムなのだが、エリック・クラプトンに続くジョン・メイオール門下生だったピーターのブルース・ギターは素晴らしいの一言。
その後のピーターの不遇ぶり(墓堀り人夫もやったとか)を考えると、「エリック・クラプトンになれなかったよ」という歌が捧げられてもおかしくないくらいだ。
また、サンタナで有名…というか、ほとんどサンタナの曲だと思われている「Black Magic Woman」もピーター・グリーンの作品で、このアルバムに収められているヴァージョンがれっきとしたオリジナルだ。
ここで聴けるオリジナル・ヴァージョンは、ラテン的な味付けをしたサンタナのそれよりも、やや重苦しい雰囲気を醸し出しているが、呪術的とでも言えるこちらの演奏も充分魅力的である。
もうひとつ、それと並ぶ本作の聴きものが、ラストに置かれたインスト・ナンバー「Albatross」である。
"あほうどり"の意を持つこの曲は、69年1月に全英No.1を記録。作者は「Black Magic Woman」同様、ピーター・グリーンである。
重く淡々としたリズム。簡素で地味だが、耳に残るギターのフレーズ。
何ともいえないムーディ-な雰囲気を持つ曲で、聴いていると吸い込まれていきそうな妖しさが全体を支配している。
レスポールを弾くピーター・グリーンはもちろん、当時十代だったダニー・カーワン、スライド・ギターの名手、ジェレミー・スペンサー、三人のギタリストによる一音一音に込められたフィーリングが素晴らしい。
アンビエントにも通じるこの空気。渋い。シブすぎる。
凡庸なブルース・ロックとは一線を画するナンバーであり、普段その手の音楽を聴かない人にオススメしたい名作である。
この少し後に発表されるビートルズの曲「Sun King」(「Abbey Road」収録。作者はジョン・レノン)は、全体的な雰囲気が「Albatross」に実に良く似ているのが興味深い。ジョンが「Sun King」を作る際に「Albatross」に影響された事はまず間違いないだろう。
また、同じ「Abbey Road」に収録のジョンの作品「I Want You」は、中盤のリズム・アレンジがフリートウッド・マック版の「Black Magic Woman」を思わせる。
この2曲を聴くだけでも「English Rose(英吉利の薔薇」は、一聴の価値ありと断言したい。
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