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テーマ:洋楽(3372)
カテゴリ:ビートルズ
今も素敵なポップ・クリエイターでありつづける彼に敬意も込めて、本日はこの曲を '66年のアルバム『Revolver』は中期ビートルズの傑作として評価が高い一枚だが、実は作品自体の名曲度はそれほど高くない、というのが僕の意見だ。 ここで目立つのは(当時としては)斬新なアレンジとアグレッシヴな音楽的姿勢だろう。 ポールの作品である「Here There And Everywhere」は、そんな中でむしろ異色とさえ言えるバラードの逸品だ。 ビーチボーイズの「God Only Knows」に刺激されて書いた曲らしく、「どこへいても僕らは一緒」という純朴な歌詞は、当時の恋人だったジェーン・アッシャー(結婚寸前までいったらしい)に向けられたもの。 美しいとしか言いようのないメロディとコーラス・ワークは、ビートルズの作品でもトップ・クラスに入るクオリティを誇っている。 好き嫌いはあれど、これを「駄曲」と言える人ってそうそういないのでは? Gのコードがゆるやかに奏でられるイントロは、何度聴いてもため息が出る。 なめらかで優しく語りかけるようなボーカルは、ポールによる多重録音(ダブル・トラック)。自身の弁によると、マリアンヌ・フェイスフルのような歌い方を心がけたとか。 とろけるようなメロディ、オブリガートするギターのデリケートな音色、そしてポール、ジョン、ジョージによる三重奏コーラスが至福のひと時へと誘ってくれる。 簡素としか言いようのないアレンジは、装飾というものを拒否してるかのようでもあり、同時に楽曲の美しさを際立たせている。 加えて、楽器よりもコーラスを前面に押し出したミキシングは、「声とメロディ」による快感を満喫させてくれるものだ(それにしてもドラムの音は小さすぎるがw)。 最後の最後で聴ける管楽器の音色もたまりません。 演奏時間は二分半足らずと、楽曲としては小品の部類に入るのだが、小粒な感じはミジンもない。 また、センチメンタルではあるが適度な緊張感もあり、決して軟弱な仕上がりになっていない所が後のポール作品との違いでもある。 ジョン・レノンという硬派な相方との関係がまだうまくいっていた頃ならではの結果だろう。 ポール自身、「最も好きな作品のひとつ」として挙げている曲であり、'84年のソロ作『ヤア! ブロードストリート』では自ら再演することとなる。 ジョン・レノンも、プロデューサーであるジョージ・マーティンも賞賛を惜しまない、自他ともに認めるマッカートニー・クラシックとなった。 この曲は、ペリー・コモ、ボビー・ジェントリー、レターメンやクローディンヌ・ロンジェといった、ソフト・ロック/イージー・リスニング系の歌い手にカバーされた。 1998年には、ジョージ・マーティンがセリーヌ・ディオンをフロントに立ててレコーディングしている。 近年もCMで使われたりと、様々な形で生き続けているこの曲は、ロックではないかもしれないが心あたたまる名バラードだ。 もちろんポールも自身のライヴで後々まで演奏している。 つーコトで「Here There And Everywhere」を聴くにはここをクリック。 なおこの曲、後半からエンディングにかけては、「Ohh...」というコーラスの後ろでメンバーが指パッチンをする音がかすかに鳴っている ……のだが、こんなの普通の聴力じゃ気付かねぇよ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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