タン革を使わせたら・・・
スーパーカーブームの頃、当時小学生だった我らの最大の関心事は、当然のことながらその外観がいかにカッコイイかということだったと思う。でも、思い出してみると、小生の場合、内装の質感を結構重視していたような気がする。「瞬間、コスモの匂い・・・」というキャッチコピーだったかな、コスモAPの最高グレードのシートに奢られる深紅のモケット生地をイイなぁと思っていたし、BBよりカウンタックの方が良いと思った理由の一つに、当時のBBの内装が黒い革張りだったのに対して、カウンタックのそれは、焦げ茶色のスウェードのような革が張り込められていて、これが文句なくカッコイイと思っていた記憶がある。その頃は、スケドーニもフラウも知らないし、イタリアの革製品が優れているなんて、まるっきり分かっていなかった。年月が過ぎた今でもクルマを見ると、エクステリアはともかく、インテリアが気になってしまう。改めて思うのは、イタリアのクルマの内装のセンスの良さである。フェラーリはもちろんのこと、マセラティにしてもアルファにしても、内装のセンスには脱帽させられてしまう。殊にタン革を使わせたら、イタ車の右に出るものはないだろう。ベージュや白の革を使わせたら、やはりイギリス車かなぁ。それに対してドイツ車は機能美優先というか、黒が似合うような気がする。ポルシェだけでなく、メルセデスにしてもBMWにしても、黒い張り革はいやがおうにも車内の空気を引き締め、ドライバーをアウトバーンを疾走する気分にいざなってくれるだろう。最近、ポルシェもそうだけれど、日本のクルマの内装の色も、明るい色の張り革が多用されるようになってきたように思える。これは、クルマの内装のトレンドがイタ車化したというより、インテリアの世界標準がそういう流れになってきているためだろう。事実、最近のポルシェも、黒だけでなく、茶色や焦げ茶色など様々な内装色が設定され、好評を博していると聞く。茶色の張り革も悪くはないけれど、センスという点ではイタ車に大きく水を開けられているように思う。でも、黒一色の無機質な空間より、明るい茶色の空間は、より豪華な雰囲気を醸し出し、所有する者に満足を与えてくれているのだろう。ポル子の内装は黒一色で、あっけないほど簡素である。あまりにシンプルすぎてちょっと物足りないような感じすらするけれど、これがドイツの工業製品に宿る美しさなのだと勝手に解釈して満足するようにしている。