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テーマ:ショートショート。(573)
カテゴリ:想起した詩
「数日後に手術を控えてると言ったら、あなたはまるで魔術師のように手のひらから花一輪。『この前のルパン三世でやってて、いつかこういうシーンがくるって練習したんだ』って。大丈夫だよ、なんて言葉よりよっぽど嬉しかった。私を励ますためにしてくれたのが私の目にはよく見えたから。あなたの優しさが感じられたから」
いや、あれは本当に<ルパン三世―カリオストロの城>を見ていて、出来たらネタになるかなーと思ってだな。 そう言い掛けてやめた。 咳払い一つ。 今の声は彼女の言葉であって、そうではない。 もはやただの記録。彼女の残滓。 言い繕っても、言い訳しても、照れ隠ししても。 彼女にはもはや伝わらないし、伝えられすらもしない。 ふと目に入った床の染みが気になって、 指が折れそうになる程何度も擦ってみる。 ずっと気にしたことのなかったものが、 なぜか急に狂おしいほどに、苛立ちの対象になる。 パキッとボクの指の骨が砕けたかと思った。 そんな音がした。 画面には先程とどこか様相の異なった彼女がいた。 ボクはその変異が気になって、 目まぐるしく視線を動かしてみる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.02.09 17:00:57
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