pretty物欲

・・・あれから、一年。
そろそろ行きたい。
あの地へ。

いつでも心の出発の準備はできている。

ただ、日常がそれを許さない。
というか、
仕事という日常を打ち破る、捨て去るだけの
覚悟がないという自分のふがいなさが、
そこにあるだけである。

そう、そうなんだ。

ともすると、いつも考えてしまうことがある。
それは、自分の成り立ちについて。
今の自分が、どのようにできているのか。

いや、そんなに哲学的でも、大仰なことでもなくて。
できるだけ客観的に、つまり自分の主観を排除して、
自分という一個の人間を分析して見たい。

周りの人から、ボクはどう見えているのか。
なぜそのように扱われているのか。
なぜ今の自分が、このような環境にあるのか。



　それを変えたいならば、

　ボクは、

　どのように、

　すべきなのか。



論理の道筋さえつかず、
ぐるぐる堂々巡りしてしまうそんなことが、
ふとしたときにボクの頭のなかを支配してしまう。
一種の精神的な病といってもいいだろう。
ボクは危機感を持っていた。

旅は、そういう日常から離れたい。
旅の最中は、そこで起きることだけ、
思い出の引き出しに入れていきたい。

とは思っていた。
思っていたのだけど。
考えまい、とすると
余計に考えてしまうもの。


それを旅の雑念として切り捨てるか、
旅の意義として深入りするか。
旅の風景のなかにある自分に
それはまかせようと思いながら、
ボクは自転車を整備した。

ねじ類を増し締めし、
ねじゆるみ止め剤を塗り、
グリース類を塗り。
自転車は仕上がっていく。


ああ。
心にも塗れるグリースがほしいなぁ。