本の紹介 『オー・マイ・ガァッ!』 浅田次郎 集英社
浅田次郎の小説をご紹介。浅田次郎、素晴らしい小説家です。何がすごいって、小説に出てくるいろんな登場人物の物語が、ストーリーを追っていくうちにビシッつと繋がる爽快感です。さらに登場人物をの台詞を通して出てくる様々な素敵な言葉。めったに泣かない僕ですが、浅田次郎の小説で不覚にも落涙することもしばしば。三浦海岸のマックで読んでたのは『オー・マイ・ガァッ!』です。舞台はアメリカラスベガス。それぞれ巨大な不幸をずっしり背負った2人の日本人と1人のアメリカ人が主人公。共同経営者に借金を押し付けられさらに彼女まで奪われた「大前剛」。かつて日本で「できる女」としてハイテク関連会社で働いていた「梶野理沙」。ベトナムの英雄でありながら今では失業者になった「ジョン・キングスレイ」。3人がダイナマイト・ミリオン・バックス(DMB)で5,400万ドルをぶち当ててしまう。しかしその権利者が3人のうち誰だかわからない始末。要はDMBで勝負している最中に酒をとりに席を立った大前。パチンコののりで「台をキープしてますよ」とたばこを置いていく。でもアメリカにはそんなルールはありません。すでに席を立ったと思ったジョンがお金を入れて、、台のレバーを美沙が引く。。そんでもって大当たり!という始末。そこにアラブの石油王は出てくるわ、ホテルをしきっているマフィア(このマフィアがゴッドファーザーまんまのパロディでめちゃくちゃ面白い)は出てくるわとめちゃめちゃ。でも最後にはすかっと一本のストーリーラインに収まっていく。素晴らしい。。本書に出てくる素敵な言葉をいくつかご紹介!・われわれは幸福を求めて努力しつつ、幸福を実感する権利を放棄し続けているのである。いわば空腹を満たそうと料理を作りながら、ついにその料理を味わうことなく老いていく。料理を託された子供もなぜか同じことを繰り返す。こうした国民性を、勤勉勤労と自画自賛するのはいかがなものであろうか。→これ、なんか身につまされませんか??僕はギクってなりました。。。・孔子は言う。「存亡禍福は皆己に在るのみ。天災地妖もまた殺ぐこと能わざる也」と。幸福も不幸も、すべて自分が招くのである。どのような運命でさえその事実を揺るがすことができない。・「Vegas」はスペイン語の「牧草地」、「Las」は定冠詞である。・経験によって摩耗するものは、蓄積されるものより実は多いのだという事を知らない。・アクセク働き、コソコソ遊んで一生を終えるという惨めな日本人社会を造った真犯人は誰なのであろう。思うに、これは「明治」という時代である。列強の植民地になることなく、彼らに伍して国家を自立させるためには、ともかくセッセと働かねばならなかった。国民は誰ひとりとして遊んでいる暇はなく、一丸となって富国強兵の実を挙げねばならなかった。そしてほぼ五十年で、その目的は達成された。幸い我が国は江戸時代以来、世界に冠たる教育大国で、国民の知的水準はもともと西洋諸国よりも高かった。そのうえ狭い平野の城下町を中心にして人口の集中する都市国家であったから、諸外国がみなマサカと思ったこの奇跡が実現したのである。→すごい。この説明。歴史の授業でこういうのを教えるべきだ!!!・われわれは愚かしくもいまだに、国家の基盤造りがスローガンであった時代の時間割をそのまま踏襲し、あまつさえ子らにもその社会の姿を申し送ろうとしている。しかもその国家意識すら、すべての国民にとって無に等しいほど稀薄になっているというのだから、アメリカ人がしなしな嘲るように、日本人の「勤労精神」はもはや「労働病」というほかあるまい。・この世に偶然で説明のつかぬものは一つもないが、偶然の結果を導き出すのは神ではない。すなわち人間が努力する限り、偶然は必然の異名に過ぎぬのだ。そのことを忘れて神に人生を委ねれば、人間はみな獣になる。→もはや座右の銘にすべきレベル。。。・『マッカーサーのかけた魔法を現実と信じて、イリュージョンの世界で生まれ育ったあなたたち日本人のことよ。しかももともと頭も悪くないし、お勉強もするから認識力はあるのに、既成事実を打ち破るエネルギーを発揮しようとしない。わかっていても変えようとしないのは横着者。あなたにかぎらず日本人はみな同じ。』・『ギャンブルは人生よ。人間は誰でも5・26%ぐらいのハンディキャプは背負わされている。流れに身を委ねていたならば、確実に負ける。それを実力ではね返して生きるのが人生。それ以上にはじき返して生きれば成功者』・われわれにとって幸福とは何であるのか。また、人間としての快楽を追求することが果たして罪であるのか。全てとは言わぬまでも多くの日本人は、この問題をなおざりにして一度きりしかない人生を棒に振る。・『あんたの生まれるほんのちょっと前、日本は世界を開いてに戦をした。戦争は愚かしい行為だけれど、その気概は素晴らしい。日本を復興させようとしたマックの情熱は日本に対する敬意の表れなのよ。彼は日本人のスピリッツを心の底から尊敬していた』・つまり中国に文化的出自を持つ日本は、アメリカを受け容れやすかったのである。千数百年にもわたる中国へのあこがれが、そのまますっぽりとアメリカに嵌ってしまった。・日本は長い間中国という美しく気位の高い女声に恋をしていた。そしてついに悪質なストーカー行為を犯して警察に捕まった。ところが逮捕と更生にたずさわった警察官が、かつての恋人とよく似ていたのである。・チンポあるいは☓☓☓は人間の人間たる主体の存するところ、あらゆる人体の器官が進化の名のもとに半自然の退行をなした中にあって唯一神の創り給うたままの機能と形状を性質とを維持している、いわばわれらが誇り、われらがふるさとなのである。・いつの日か病を得ていきの上がるとき、「ジス・イズ・グッド・ジョブ」の一言を、自分自身に向かっていいたいと大前は思った。グッド・ジョブをなすだけの勇気と闘志とを、自分は忘れていたのだ。・アメリカの公平さとは、ささやかな幸福を分かち与えることではない。チャンスを公平に分配することである。与えられるものは幸福ではなく、幸福になるチャンスなのだ。だから人々はチャレンジする。