カテゴリ:絵巻物
先日「中世武家服飾変遷史」の本のことを書きましたが、図版が少ないって気がしたので、自分で集めていた図を並べてみよう。
時代的には、ほぼ13世紀後半から14世紀初くらいです。「直垂」だけではないのですが、一応、前に「春日権現験記絵」(この絵巻の原本の時代は1309年くらいとされています)でやった「直垂(水干)男子」の続きみたいな感じで。 この本にも取り上げられていた「平治物語絵巻」(一部残存の毛利家伝来のもの)から、いくつか。 庭先に侍る従者たち。水干3人(みな垂領に着ている)、直垂4人。 立烏帽子の華やかな水干の人物はえらいさん? 全員が水干の主従。。 庭先に侍る武士たち。 一人は上下揃いの水干のようですが、あとは直垂。右端の人物は、下に胴鎧などを着こんでいる様子。襟元から少し見える 直垂と水干が混ざっていますが、一人は武装を隠そうとしていない。 廊下に侍っている3人は、水干。地面に座っているのは直垂と、なんだか衣装に序列があるようですが、地べたすわりの武士の中にも水干姿はいるので、多分、個人的な身分差か、役割の違いなんでしょうね。そういったところも面白い。 ↑何か、上で話が進んでいるようだけれど、地べたにいるお供たちは、かなり自由におしゃべりしているような感じもします。 この場面は、清盛の屋敷で、常盤御前が、子供たちの助命を訴えるために、来訪している場面ですので、下にいる武士たちは、「おいおい、殿は、あの美人の訴えを聞くかどうか、賭けようぜ」なんて言ってそうですが・・。 ↑その門前でも、馬を引いてきた従者たちが、馬の番をしながら、屋敷の門番の護衛に、なにやらしきりに話しかけている様子。 「あんたの給金はどのくらいだ。なあ、今を時めくお宅だからさぞ、いいんだろう?」 「うるさいわ・・・」 手綱を持つ一人は、居眠りして烏帽子がズレている。 以上が「平治物語絵巻」から。 「天狗草子」は、13世紀ごく末の製作のようで、当時堕落していた大寺院や、宗教家たちを「天狗」にたとえて批判したもの。 ↑園城寺の祭礼で、田楽が行われた時の様子。基壇の下に華やかな水干で着飾った田楽法師が7人控えている。後ろに見物人が座りこんでいる。尼僧と法師、直垂の俗人が2人。 ↑祭警護の担当か? 直垂の武士と、僧が二人。僧は、警棒を持って、衣服の下に胴丸を着こんでいる。 画面の下のほうでは、行列に近づきすぎた見物人を、警備の僧が、警棒で追い払うそぶりを見せている。何やら、大声で怒鳴っているような表情。 このような、警備員(?)は、この絵巻のあちこちにいて、周辺で、会場に進出してくる見物人を、警棒を振り上げて走って追い回している姿も描かれているので、やはり、祭りでは、目だったのかもしれませんね。 と言うより、一般人が、あんまり遠慮しなかったのかもしれませんが・・。 ↑籠手を着け、太刀を佩いて、長刀を持つ完全武装の僧侶と、直垂の下に鎧を着こんで、やや着ぶくれ気味の武士も、多分警備担当 「あの、緑の侍烏帽子と、赤い立烏帽子の二人が、なんだかもめてるぞ。」 「うわ、・・・・緑の奴、ビンタしたぞ!」 「止めに入るか?」 「もう少し様子を見よう・・・・赤い被衣の女が、こそっと逃げていくな・・・」 ・・・なんて妄想が・・・。 稚児舞が行われている舞台裏も、色々。覗き見する者もいる この「天狗草子」は面白いですね。絵は、こなれていて、上手な絵師が描いていますよね。 天狗になった僧が、なんにも自覚のないまま、「天狗顔」で、遊興をしている場面や、天狗の化けた阿弥陀様に騙されて木のてっぺんに置き去りにされた僧を救う場面もユーモラス。 また、一遍上人の教団の「まがまがしさ表現」として有名な、彼を取り巻く信徒たちの「だらしのない生活ぶり」や、一遍の尿をありがたがる衝撃の風景などが描かれます。自然居士が、髪を伸ばし芸を披露する場面なども描かれていて、、なかなか、興味深い図柄がいっぱい♪ そして、直垂に関して言えば、直垂の前合せというのは、普通の着物のように衽がなく、ただ重ねているだけなので、ともすれば、前がはだけるので、襟につけた胸紐でくくっているんですが、その紐がけっこう伸びきったりしているのが、描かれていて面白いですねえ。 これは「一遍上人絵伝」です。 描かれているのは、馬に乗って伴を連れた執権北条時宗。 鎌倉武士は、主人も従者も、皆、直垂姿です。 こちらもよろしく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.07 22:28:55
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