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カテゴリ:源義経黄金伝説(2009年版)
源義経黄金伝説■2009-第7回
■源義経黄金伝説■2009-第 回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 4 「どうか、政子様。我が子静の腹を痛めし子供。生かしてくださいませ」 この舞いの数日前、鎌倉・頼朝屋敷で、許しを得て、床に吸い付くほどに、禅師は頭を下げている。 「それはなりませぬ。禅師殿。私が頼朝の妻たること を頼んでこられたと思いますが、私も頼朝殿と同じ考えにございます。思い起こせば平清盛殿の甘さ、頼朝殿や義経殿を生かしておいたが故の平家の滅亡。この源氏も同じ轍を踏みたくはありません」 冷たく、政子は言い放った。 禅師は、もはやあの計画しかあるまいと思い詰めた。頭を上げる。 その目には、政子のふくふくしい顔がある。が、その目は冷徹な政治家の目であった。 さてはて、どのような反応をするものか、禅師は心の中でほくそ笑んだ。 「が、政子殿。政子殿も頼朝殿も、現在祈願せしことございましょう」 「われらが祈願せしこと………」 思った通り、政子の顔色が変わる。 それを見て禅師は続けた。 ずるがしいこい表情をちらりと見せる。 「大姫様を天皇の後宮にお遣わしになること、本当でございましょうか」 小さく呟く。禅師の言葉に、政子は驚ろいている。 「どうして、それをあなたが」 大姫のことになると、政子も甘いのである。 政治家ではなく、母親の顔になっている。 「そのこと、都では噂でございます。清盛殿も同じように娘を皇家に捧げられた。平家の繁栄の礎はその婚姻から始まっていること、京都の童でも知っております。遠くは藤原氏が天皇の外戚となり、権力を握ったこと、知らぬものはござりますまい。それゆえに頼朝殿も大姫様を宮中にあげしことを願うは、これは親の常」 禅師は政子の表情が、少しばかり落ち着いて来るのに気付く。 政子は、ここは一つ、この女の話を聞いてみてもよい。 悪い話ならば断り、最悪の場合この女を亡き者にすればそれで済む。 「して禅師殿、大姫の話と、義経殿の和子を助けるのと、いかような拘わりがあると申すのか」 「私、少しばかり、京、宮中には詳しゅうございます。いかにすれば、大姫様のこと、速やかにはこぶか。その者共紹介できぬ訳ではございません。すこしばかりお耳を……お貸し下さいませ」 この勝負勝ったと禅師は思う。 話を聞くうちに、政子の冷たい表情が少しばかり打ち解けて来たことが、禅師にもよくわかった。 「おお、そのような方をご存じか。さすがは禅師殿じゃ」 京の暗黒界で、清盛の頃から活躍してきた禅師である。 田舎育ちの政子とは、キャリアが違うのである。 続く090901改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.11 15:23:54
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