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カテゴリ:源義経黄金伝説(2009年版)
源義経黄金伝説■2009-第8回
■源義経黄金伝説■2009-第 回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 広野から見えるその山は、荒錆びた様子で噴煙をあげている。富士山である。 「おうおう、何か今の時代を象徴しておるような…」 一人の僧服の老人が、目の前の風景に嘆息をしている。心のうちから言葉が吹き出していた。その歌を書き留めている。詩想が頭の中を襲っている。 湧き上がる溢れんばかりの想い。老人は、もとは武士だったのか屈強な体つきである。 勢い立ち噴煙を上げているは富士の山。活火山である。 『風になびく 富士のけぶりの空に 消えて行方も知らぬ 我が思いかな』 「我が老いの身、平泉まで持つかどうか。いや、持たせねばのう」 老人は、過去を思いやり、ひとりごちた。 豪奢な建物。金色に輝く社寺。物珍しそうに見る若き日の自分の姿が思 い起こされて来た。あの仏教国の見事さよ。心が晴れ晴れするようであっ た。みちのくの黄金都市、平泉のことである。 「平泉じゃ、平泉に着きさえすれば。秀衡(ひでひら)殿に会える。それに、美しき仏教王国にも辿り着ける」。僧は、自らの計画をもう一度思い起こし、反芻し始めた。 平泉にある束稲山(たばしねやま)の桜の花の嵐を思い起こしている。 青い空の所々が薄紅色に染まったように見える。 その彩は、絢爛たる仏教絵巻そのものの平泉に似合っている。 それに比べると都市(まち)としては鎌倉は武骨である。 「麗しき平泉か、、そうは思わぬか、重蔵殿」言葉を後ろに投げている。 後ろの草茂みにいつの間にか、黒い影が人の形を採っている。 東大寺闇法師である。 「西行(さいぎょう)様はこの風景を何度もご覧に」 「そうよなあ、、吾が佐藤家はこの坂東の地にねずいておるからのう」 西行ー佐藤家は藤原北家、そして俵藤太をその祖先とする。平将門の乱を鎮めた秀郷(ひでさと)である。 「重蔵殿、まだ後ろが気にかかられるか。はっつ、気にされるな。結縁衆(けちえんしゅう)の方々じゃ。ふう、鬼一法眼(きいちほうがん)殿が、良いというのに後詰めにつけてくだされている」 一息。 「さてさて、重蔵殿、鎌倉に入る前、いささか、準備が必要じゃ、御手伝いいただけるか」 しっかりとした足取りで、西行は歩きはじめた。 続く090901改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.11 14:59:35
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