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カテゴリ:源義経黄金伝説(2009年版)
源義経黄金伝説■2009-第14回
■源義経黄金伝説■2009-第 回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 「西行殿、これから行かれようとしている平泉のことだが……」 西行は、平泉のことを意を決してしゃべる。 「ようぞ聞いてくだされた。秀衡殿は、平泉に将兵を集めて住まわせることなどはしておりませぬ。よろしゅうございますか。藤原氏の居館は、城ではございません。平泉の町には、軍事施設はないのでございます」 「では兵はどうするのじゃ」 「いざ戦いがあれば、平泉に駆けつけると聞き及びます。秀衡殿、頼朝殿に刃向かうつもりなどないのでございます」 頼朝は、この西行と藤原氏の関係をむろん疑っている。聞ける情報はすべて聞き出そうと考えていた。広元も先刻、西行と会う前に、耳元で同じ旨を告げていた。この西行、果たして何を企む。 頼朝は、頭をひねりながら、西行の話を聞く。平泉は城ではないというのか。まるで平泉全体が大きな寺ではないか、と頼朝は思った。 「初代清衡殿は中尊寺、二代基衡殿は毛越寺、三代秀衡殿は無量光院をお造りになったと聞いております」 「それでは、すべて寺院ばかりではないか」 「さようでございます。平泉は仏都でございます。中尊寺建立の供養には、こう書かれているのでございます。これは初代清衡公のお言葉。長い東北の戦乱で、多くの犠牲者がた。とくに俘囚の中で死んだものが多い。失われた多くの命の霊を弔って、浄土へ導きたい。また、この伽藍は、この辺境の蕃地にあって、この地と住民を仏教文化によって浄化することである。こう書かれているのでございます」 頼朝はふふうという冷気を浴びせるようなな視線を、西行に浴びせている。 「西行殿は平泉がお気に入っておられるか」 頼朝のその質問に、西行の頭の中に、あるイメージが浮かんでいた。平泉・束稲山の桜である。 「私は花と月を愛しますがゆえに」 頼朝屋敷は夕刻を迎えている。 「が、なぜ、西行殿、秀衡殿を庇いなされる。ただ東大寺がために勧進とはおもわれぬ。聞くところによれば、西行殿と、秀衡どのとは浅からぬ縁あると聞くが……」 頼朝は矛先を、藤原氏と西行とのかかわりに向けてきた。 この質問に、西行はいささか足元をすくわれる感じがした。この頼朝という男、さすが。 「いや、それは単なる風聞でございましょう。私は唯の歌詠み。東大寺のために、沙金をいただきに秀衡様のところへ参るだけでございます」 「それならば、そういうことにしておきましょう。で、西行殿」 頼朝はかすかに冷笑した。その笑いの底に潜む恐ろしいものを感じ、わずかに言葉がかすれている。 「何か」 「西行殿は、昔は北面の武士。あの平清盛と同僚だったとも聞き及びます。なにとぞ、この頼朝に弓の奥義などお聞かせいただきたい」 「よろしゅうございます」 話の矛先が急に変わったことに、西行は安堵した。 頼朝は、これ以上、西行を追い込むことを避けたのだ。あまりに西行を追及すれば、この場所で西行を殺さねばなるまい。殺さずとも、閉じ込めねばなるまい。今、それは政治的にはマイナスであろう。無論、広元もその案には賛成すまい。 ここは少しばかり話を流しておくことだと頼朝は思う。一方、西行は虎穴に入らずにはと考えたが、頼朝という男は虎以上に恐ろしかった。このことすぐさま、法皇様に書状をもって報告せねばなるまい。 この男の扱い方は、義経殿のようにはまいらぬ、そう考えていた。頼朝は、西行がある程度、義経の行方を知っていると考えている。 続く090901改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.12 15:28:14
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