日常と旅情の狭間で in 仙台・宮城

[美術館・博物館] カテゴリの記事

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  白鳥撮影会 × みやぎ県民文化祭 × サンファンバウティスタ号・考

  休日の朝、明るくなってゆっくり起きると、雁さんと白鳥さんの声が聞こえるので撮影スタート。仲間が飛んできた。汽車が通っても、意外に動じない。コラボ撮影成功。そろーり、そろーりと近づいて行き、いや、別に驚かすつもりなかったんだけど、飛んでった。午後から石巻の みやぎ県民文化祭＠まるほんマキアートテラス へ。好い天気～＠開北橋。きょうオープンしたばかりの石巻市博物館を無料で見学し、この地の歴史に思いを馳せるにつけ、やはりこの件は残念、を通りこしてルール違反だと、改めて思う↓しかも、文化の日、の前にこんな発表するかな普通。https://kahoku.news/articles/20211102khn000001.html震災後の修繕のときには、わずかながら寄附させてもらったのに……​https://plaza.rakuten.co.jp/rena4011/diary/201410110000/​あんまり難しいことを考えるつもりはなかったけれど、一事が万事、ぼんやりしていると知らないうちに、大事なものが取り返しのつかないことになりそうで恐ろしい。ほんとうは、もっと先人の偉業に敬意を払い、人民の声に耳を傾けてもらえる方に、リーダーの座についてほしかった。ここから何ができるのか。ひとまず、これまで縁をいただいた方たちとの繋がりを大事にしつつ、リアルで話すしかないのかな……明日を信じて。

  2021.11.03

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  国連防災世界会議おもてなし@国際センター・博物館

  広瀬河畔に芽吹きはじめた柳たちが枝を揺らす。自転車で早春の風をきって澱橋を渡り、美術館前を過ぎ、建設中の東西線の駅舎に設けられた保安検査場を抜けると国際センター。国連防災世界会議関連の参加者のために貸し切られた仙台市博物館で、こけしの絵付けやら書道や着物体験に集まるいろいろな国からのお客さまを案内している。昼休みには「パラサイト・イブ」や「砂漠」の登場人物になったような、どこか甘酸っぱい気分で川内キャンパスの食堂へ。案内してくれた学生さんは、中学校の卒業式の日の午後に浜通りで被災、新学期のなかなか始まらなかった高校に甲状腺検査を受けながら通い、津波工学を志して昨年入学したという。15年間暮したカリフォルニアからふるさと東北を憂い2年前に帰国したという彼女に、かつての留学先の日本に再び滞在しているハワイ出身の彼――仙台に来る前はどこに住んでいたのかと尋ねられ、ナガノ、といえば以前はオリンピックだったけれど、今はとりあえず、ユダナカ、スノーモンキー、といっておけばコミュニケーションはとれるらしい。Local Staffの名札をさげながら、どうやらあの三月をこの地で経験したひとのほうが珍しい傭兵部隊だけれど、なにか引っかかるところがあってこの地に拠点を移した、まあ似たものどうしといったところか……ともかく、四年間というのは、そういう長さの時間だ。大型サイクロンの直撃を受けた南太平洋の島国の代表が、折しも当地を訪れていた。海のむこうの国の天変地異を憂い、ひとびとの明日に想いを馳せるのも、いま暮している土地に根ざした縁があればこそ。それならば、もう二度と袖をふれあうこともないひとたちかもしれないけれど、この日を刻んで、これからも、これまでを伝え明日を見守りながら、きっとこの地で生きてゆく。

  2015.03.15

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  「サン・ファン館」スペイン祭

  ほのかに色づきはじめたケヤキのもとでYOSAKOI祭りのお囃子を聞いていると、キンモクセイの香りがそこはかとなくただよう。十月最初の休日は、地元の知人の案内で石巻「サン・ファン館」を訪ねた。この船と館のこと、すなわち1613年の支倉常長ら遣欧使節出帆と、その二年前の慶長三陸津波の復興事業とのいわれ、さらに四百年の時をこえた奇縁のことを知り、伊坂幸太郎氏の「オーデュボンの祈り」のモチーフともなったこの「遠い帆」の史実に想いを馳せたのは、いまだ取りこわし待ちの建物が目立ち流されたパルプの散乱した街を訪れた2012年のことだっただろうか。「いつかまた、あの地へ旅に出よう。復旧した仙石線を降り、鮎川から島めぐり、そして修繕されたサン・ファン・バウチスタ号の勇姿を仰いで、日和山へ登ろう。あの日、高台から晴れた空を仰いで捧げたわたしたちの「祈り」は、決して見果てぬ夢でも、詐欺師の戯言でもない……明日の確かな現実となることを信じて。」とつづっているようだ。そして二年後の秋、この日のスペイン祭……花山鉄砲隊の演舞やら日西友好ピアニスト・川上ミネさんの生演奏に、千人分の巨大パエリア。街なかはそういわれなければ気づかないくらいにきれいになり、祭りに集まるひとたちの様子もどうということはない。そのぶん見えにくくなっていることもあるにちがいないけれど、ともかく、海とともに生きるひとびとの、ときに海に牙を剝かれながらも海の向こうの国に想いを馳せ交わろうとする進取の気性は、四百年前も今も変わっていないのかもしれない。つぎの台風の動きを気にかけつつも、縁側で日なたぼっこが似あう時季になってきたなとカレンダーをながめ、きょうも三陸道に乗る。

  2014.10.11

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  アートのチカラ～OASISと「緑の丘」～

  休日の午後、定禅寺通りを散策していた。とくに目的があったわけではない。正確にいえば、自転車に乗っていた。停める場所を探しているうちに、メディアテークにたどりついた。 ロビーでは「菅野祐悟×ミレイヒロキ」のトークショーが始まっていた。これまでも何度か立ち寄ったカフェで遅めの昼食を済ませ、6階のギャラリーへ。5日間限定の「OASIS」芸術祭......全国から、世界から寄せられた絵画たちを眺め、見覚えのある妻籠宿のスケッチの前で立ち止まっていると、話しかける人がある。隣の富士を描いた水墨画の出展者さんとのこと、すこし会話をして、ご本人の作品という茄子の描かれた袋入りの箸を手渡される。袖ふれあうも、なにかの縁。 ロビーへ降りて足の向くまま、「みんなで日本全国にキャンバスの花を咲かせよう」とのワークショップに合流。 花の形に切り取られたキャンバスを受け取り、白い花びらに色をつけてゆく。 向かい席でもうすぐ小学校に上がるというお嬢ちゃんは虹色に塗っている。と、隣にプロの絵描きですというご婦人も登場。いつか旅人として訪れたこの場所で、ツメクサにまつわる歌を聴いたなと、クローバーを描こうとしたものの、原色ばかりで思いのほかハワイアンな色合いに仕上がっていた。 メッセージをひとこと書いてくださいねといわれ 「土をたがやし　種をまき　やがて芽が出て...　そして花が咲く」　 と添えて、迷わず北信濃のあたりにはりつける。こうして明日までに、高さ5mの日本地図が、みんなの花でいっぱいになるのだとか......  BGMに「花は咲く」がゆるやかに流れている。あえて意識していなかったものの、今日のトークショーのタイトルも「震災から3年が経過したこれからの日本に、音楽やアートができる事」だった。 どんな音楽を聴いてもアートを鑑賞しても、言葉にならない思いが頭から離れなかった、2011年。 いまなお、音楽やアートの世界に入り込んでいる間だけはあのときのことを忘れられるというひともいれば、むしろ忘れかけていたものを音楽やアートをきっかけに思いおこすひともいる。そんな微妙な温度差が混じりあっているのが、この街かもしれない。 わたし自身の、あれから一年とすこし過ぎたころのこの街の記憶は、津軽三味線と「とっておきの音楽祭」とともに。3.11があってもなくても、いま同じように此処に暮していたかもしれないし、あのときのことをひとつのきっかけとして、でも切り札にはしないで、この街で何気なく生きているいまの日常は、あのころの暗闇から抜け出すために選んだひとつの答え。......でも、ふとした瞬間に、ときに此処までの道のりをみつめなおす。それならば、いろいろなひとにとって、それぞれのあのときから今日までをふりかえるきっかけとなることも、音楽やアートのひとつの役割かもしれない。 市民図書館で利用登録をして、美術誌「百兵衛」と「減災ふろしき「結」」を手にとる。「この街に愛されて　この街を愛して......」（「緑の丘」 by 小田和正）富沢の体育館で2日前に聴いたメロディを口ずさみつつ、芽吹きを待つケヤキたちと彫刻を見あげる。でも心には、8年間育ててもらったふるさと、信州の山並みを描いて......いまが青春。

  2014.04.05

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  田中本家博物館「富嶽三十六景」展

  富士山の世界文化遺産登録にあやかった、葛飾北斎「富嶽三十六景」の企画展にさそわれて、松の古木に雪つりの施された田中本家博物館へ足をはこんだ。ヘブンリーブルーや大もみじの季節と同じように、入口で靴を脱ぎ豪商の家具調度の並ぶ部屋を抜ける。三十六景のなかで、誰しも目にしたことのある代表作といえば「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」なのだろうが、移り行く空のダイナミズムを語るならむしろ「山下白雨」、そして個人的に見覚えのある風景に安堵するのはやはり「信州諏訪湖」。実はこの「三十六景」、当初の三十六作に輪郭を藍のかわりに墨で刷った「裏富士」なる十枚が加わり、四十六作から成っていることはあまり知られていないかもしれない。冬木立が白壁に影を描く「蔵の小路」を抜け、紫式部の残り香がいろどりを添える「秋の庭」へ。雪晴れの陽光を浴びながら、蔵開きでごった返していた季節には気づかなかった灯篭の文様に目を留め、風景と一対一で向き合える瞬間を見さだめる。思えば一年前、小布施の北斎館と岩松院を訪ねたのも、このくらいの時季だっただろうか......春夏秋と年末年始のせわしなさが去り、つぎの春のあわただしさが訪れる前の、束の間のひといき。繭蔵のすだれごしの西日に少し伸びてきた日足を感じ、ミルクティーをのみほす。 

  2014.01.18

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  ブロンズ像と紅葉狩り～宮城県美術館・佐藤忠良記念館～

  仙台国際センターから汗ばみつつ早足で坂道を昇ること5分、宮城県美術館のcafé mozartで魚介類のパスタを注文する。昨夜は3か月ぶり二度目の、苦竹のゲストハウスに宿を求めた。9月から此処で働いているのですよという北海道出身のお姉さんと、地元で教師をしているというドイツ人のお姉さんを囲みつつ、南アフリカのリンゴシードルSavannaをご馳走になる。手土産に持参した八幡屋礒五郎の唐辛子入りキットカットが、もの珍しく好評のようだ。荒浜の農地再生活動に定期的に訪れているという紳士と、此処は山小屋の雰囲気ですねという盛岡からの男子学生さんたちに、2011年夏のオープン当初はお客さんの8割がボランティアだったのですよと、オーナーさんがビール片手に語っている。阪神の（震災の）ときは現役だったので現地に行けなかったのが心残りで、という先の銀髪紳士......農地のがれきは最後はひとつひとつ人の手で片づけるしかない、逃げ出さずに再生しようとする人は芯の強い人とですねと。 県美術館の企画展は洲之内徹とゆかりの画家たち。一見脈絡のなさそうな並びの抽象画に囲まれた、見覚えのある松島湾の風景画に何故か安堵する。次期は此処でアルフォンス・ミュシャを拝めるだろうか。佐藤忠良記念館の硝子張りの展示室で、彫刻と窓の外の紅葉が互いを引き立たせている。陽気に誘われて「アリスの庭」を過ぎ「北の庭」を散策すれば、燃えたつようなグラデーションのもみじ葉が風に揺れている。隣にたたずむのは「夏」と題されたブロンズ像、そしてバックには乾いた晴天に映える冬木立......師走初日の小春日の庭に同居している動と静、そして、いくつもの季節。来た道を戻るつもりが、いつのまにか東北大学のキャンパスへ入り込んでしまった。ハプニングも迷いも旅のうち。でも、紅葉のマントをまとった支倉常長像を拝めたので、わるい迷い道ではなかった。喜久水庵のお茶を手にする、日常のような旅、旅のような日常、そして移ろいゆく季節。こんどお邪魔するときはもう旅人ではないかもしれませんねと、でもまたふらりと立ち寄りますと、おかみさんとの約束と牛タン弁当をあたためている。 

  2013.12.01

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  「魔法の美術館」と「豪商の花嫁」展

  秋の蔵開きにあやかった市場がにぎわっている田中本家博物館の庭園の木洩れ日をながめながら、古文書を再現したという「山鳥のお雑煮」をすすっている。「秋の庭」の紅葉が始まりつつあるかと思えば、夏のヘブンリー＝ブルーもいまだ健在だ（9月29日）。知人たちに誘われて出かけたホクト文化ホールの第九演奏会（9月23日）。アンコールに流れる「信濃の国」に思わず手拍子をして口ずさむくらいには、山国に馴染んでいるようだ。午後の陽はまだ高い……閉館時間を気にしつつ、信濃美術館の企画展「魔法の美術館　ようこそ、光のワンダーランドへ」を訪ねる。テクノロジーを駆使したトリックアートが並び、子ども連れやグループが遊園地のように楽しんでいる。そんななかで静寂に包まれるのが順路の最後の一室をまるごと使った、しかしテクノロジーとしては豆電球と列車模型だけの、ごくシンプルな作品（by パーフェクトロン）。家畜の群れから田舎町、高層ビルに工場地帯……豆電球が動きながら壁に映し出す営みはひとつの地域のようでもあり、歴史的なグラデーションにもみえる。街とは、文明とは、自然と寄り添って生きるとは……そんなことに想いを馳せるのは、石巻の日和山に立って海をながめていたとき以来かもしれない。そしてベンチに腰をおろし、夕暮れの近づいた空にハート形を描く雲たちを追う。何故か、楽天イーグルス優勝の祝賀ムード一色の仙台アーケード街で、阿部蒲鉾店の前に行列を作っている「ひょうたん揚げ」を頬張っていた（9月28日）。いつか海産物に飢えてかぶりついた「あさひ鮨」と、大人版「萩の月」と勝手に命名した勝山の卵酒はもはやリピーター。そして何故か市内のスーパーで「ナガノパープル」を発見……もはや、なにが旅で、なにが日常なのかよくわからない。二時間半で移動できてしまうので、そして日ざしのやわらかさと、ひとのあたたかさがほとんど変わらないので、つい距離を忘れる。いつか、二拠点とまでいかずとも、ゲストハウスを利用して1.5拠点くらいの暮しもいいかもしれない……ともかく、旅も日常も、距離の長さではないのだ。前回の旅で「支倉常長弁当」のことを書き忘れた。慶長三陸津波の復興事業として1613年に出帆したとされるサン＝ファン＝バウチスタ号をまつる「慶長使節船ミュージアム」は11月3日リオープン、常長像などのユネスコ記憶遺産登録を記念した仙台市博物館の展覧会は11月17日まで。あわただしい出張の季節、でもそれならなおのこと、一つひとつの移動を、どのくらい「旅」にすることができるだろうかと、時刻表を開く。 

  2013.09.30

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  そうだ、小布施行こう（２）～「ENTOTSU」と「日本のあかり博物館」

  日和にさそわれて北方向へ自転車をこぐ。繁りはじめたリンゴの枝やブドウの蔓が季節を告げる。果樹の根もとにはツメクサの花･･････一年前の仙台「とっておきの音楽祭」で復興応援歌「青い大地に夢は始まる」に出会って以来、この花に目を留めることがふえている。小布施堂のカフェ「ENTOTSU」の半二階席で、壁をくりぬいたような硝子窓から松の木をながめる。ドビュッシー「アラベスク」を聴きながらスープランチを食べ終え、「日本のあかり博物館」へ向かう。古代からの照明の歴史を展示したこの博物館は、菜種油の産地であった当地に1982年に開館したとのこと。「浮世絵にみるあかり「花・鳥・風・月」」なる企画展が開催されている。ガス灯は明治初期に横浜ではじめて灯り、石油ランプは昭和初期まで用いられていたとのこと。遮光カーテンに仕切られた暗闇で、それぞれの時代の明るさを体験するスペースがあるが、現代の明るさに馴れた目には「あんどん」の80倍の明るさという裸電球も暗く感じる。灯りのない夜など、もはや考えられないけれど、そんな時代は人類の歴史からすれば薄皮一枚くらいの年月にすぎない･･････と、二年前の「原子力なんてなくても、ろうそくの灯りでも、大切な人がいれば生きていけるんです」という、誰かの叫びを思いおこす。多くのひとは今から、お日さまとともに寝起きする晴耕雨読の生活に戻ることはできないけれど、それでも「あのこと」のあと、ありきたりの幸せに目を向けることがふえたのは確かだ。芽を出しはじめたプランターへの土産に水タンクを積み、陽のまだ高い坂道を下る。にほんブログ村

  2013.05.18

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  山本二三展＠北野カルチュラルセンター

  長野駅前の喫茶店「栗の木テラス」でアフタヌーンティーを注ぐ。夕刻のヘッドライトが植え込みを照らすと、曇りガラスに葉っぱの形のアニメーションが映し出される。一週間前、北野美術館分館のカルチュラルセンターに「日本のアニメーション美術の創造者　山本二三展」を訪ねた。ラピュタや「火垂るの墓」の原画が並び、最上階はプラネタリウムのような演出がされている。「時をかける少女」に「ゴーヤ棚」という作品がある。夏の日本家屋の縁側に、生い茂ったゴーヤの天井から木漏れ日が注ぐ。そう、昔は緑のカーテンではなく天井だった。それなら、カーテンと組み合わせれば、緑の隠れ家ができるかもしれない･･････なんてことは、子どものほうが自由に空想を広げそうだ。「森は海の恋人」という作品が一枚。牡蠣の海を守るため、海に注ぐ川の上流の山に木を植えはじめた漁民の活動が、宮城県唐桑町（気仙沼市）のNPOの名前とともに広く知られるようになったのは最近のことではないが、この原画は2011年の制作だ。篠ノ井線ホームにツキノワグマが降りてきたらしい。モンブランをつくる栗はあっても、山は食糧不足なのだろうか。自然と人間との･･････とか小難しいことを考えるつもりはないけれど、山本氏の作品の根底に流れているのがそうした思想であることは確かのようだ。「中世の村」の風景にひきこまれて今さらながらに買った「もののけ姫」の世界に想いを馳せつつ、「MODEA」のCDをひらく。にほんブログ村

  2012.10.07

• 桜（２）　自転車と「京洛四季」

  満開の並木道や足もとの水仙の群れを撮影しつつ公園内を散策。神輿をかつぐ人々の、にぎやかな声がひびく。小雨模様となってきたので、信濃美術館へ入ることにした。旅行者らしき婦人に道を尋ねられ、近隣在住者にみられていることに気づく。実のところ今日は、見慣れた風景から新しいものを見つけるつもりで街に出ていた。池田満寿夫美術館の記念Ｔシャツにさくら色のスカーフをあわせ、旅人を気取る。馴れ親しんだ夫婦がときに恋人時代に戻りたくなるように、いまいちど旅人の目で、この街を再発見してみたい思いがあった。しかし考えてみれば、ここにきてレンタサイクルでもない自転車を押しているほど、わかりやすい地元オーラもないだろう。日常と旅情の狭間で揺れつつ、花時計を見下ろす入口へ、階段を昇る。数年前のジブリ展と、昨年の大原美術館展と、少なくとももう数回は足を運んでおり、忘れかけた周囲の風景や館内の構造の記憶が呼び起こされる。堀文子の企画展が開催されている。顕微鏡で観た世界をアートとして描く発想が斬新で、ミジンコを画面の中央に据えた作品（「極微の宇宙に生きる者たち2」）のクリアファイルを、「たのしい仲間」とあわせて買う。東山魁夷館で「京洛四季」の「花明かり」を観る。作品はもうしばらく展示されているが、桜の咲いているうちに訪れるのが正しい鑑賞法に思えたのだ。館内の喫茶店でひと休みして善光寺裏へ。色の濃いしだれ桜を見下ろすように、白い太陽が雨雲に透けている。あちらは月、こちらは陽であるが、構図はまさに「花明かり」そのもの。魁夷の世界へ時空をこえた旅情をそそられつつ、日常へ戻るべく、今日も自転車をこぐ。

  2012.04.22

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