アヒルと猫とベイビー
留学時代に私の生活をとても楽しくしてくれた白猫たちに、日本製カツオだし仕立てキャットフード持参で今回も会いに行きました。が、しかし。この一年の間に飼い主宅では丸々として元気なベイビー(♂)が生まれたため、アイドルの座は猫の子から人の子に移行。そして、猫と遊ぶつもりだった私は、なぜか育児の実地訓練を受けることに。若ママがおむつ替えやら着換えやらを私に教えこむのです。普段は論文を読んでいる身には馴染みのないロシア語ばかりで頭が混乱。幼児語だってわかりません。いやちょっと待てよ。まだ5カ月だからこの子だってロシア語わからないじゃん?と思いあたった途端、ベイビーには「どうしたの~?」と日本語で話しかけてしまうワタシ。そんな言葉の不自由な赤ん坊と日本人を残して台所に立っていた若ママは、戻ってくると「今からお風呂に入れます」手には茶漉し。それはなに?お茶を淹れるわけではないの?「これは赤ちゃんの肌にいい薬草。お湯に入れるの」お湯はみるみる黄色に。そこに、スポンジでできた浮き輪を頭に巻いた坊やを投入します。すると彼も慣れたもので、お腹を上にぷかりと浮かんでバタ足バタ足。ロシア語では「入浴する」と「水泳する」が同じ単語ですが、これならさっきのママの発言を「今から泳がせます」と訳してもよかったかもしれない。ベイビー、満面の笑みです。薬湯に浮かぶアヒル。バタ足の波にあおられて、ぶれています。ひとしきり泳がせると、ママは坊やの体を洗います。浴槽の外から彼を抱えるのが私の役目です。すると彼女はふと手を止めてカメラを取り、「記念に写真撮るから、笑って」手を滑らせたら、この子溺れて生命の危機、という緊張感で一杯だった私にそんな余裕はなく、「いま私は重大な任務に従事しているので笑えません!」と言い返して、逆に笑われました。しかし今思うと、彼は生後5カ月にしてバタバタ泳げる人なのだから溺れなかったかもしれません。というわけで、今回は白猫さんたちとはあまり遊べませんでしたが、人の子も猫の子も元気だとわかったのでよかったです。日本製キャットフードを食すディオゲン(手前)とプーシカ