「すすきのの歯医者さん」6
数少ない患者さんからのお誘いのお話し。歯科で勤務する受付や歯科衛生士、歯科助手は意外と出会いが少ない。出入りする業者さんと患者さんから選べと言われても、それはなかなか無理な話しだ。んじゃ医者は??これが勤務すると、医者と付き合う人は本当~にいなかった。私も学生時代はもしかすると歯科医と結婚出来るかも、と希望に胸を膨らませていたが、在学中に開催された歯科医とのコンパで夢は敗れた。親がお金持ちなだけで、中身はカラカラ。逆に生活レベルの違いに嫌気がさす始末だった。良い人もいたけど、恋愛には発展せず、友達止まり。私は歯科医とだけは結婚するものか、と思うようになった。本題に戻って、患者さんの話し。何しろ一発目に相手の口の中を見るんだし、相手は見られるんだからこんな嫌な事はそうそうないでしょう。診療が終わる最終日にいきなり告白された、と言うのはたまに聞いた事があったが、ひとつも実った話しはナシ。私は社会に出てまもなくのまだ若かりし頃、最終日にメロンを貰った事がある。なぜメロンなのかは未だ謎だが、「付き合ってる人、いますか?」と言われ、受け取ったメロンを抱えながら瞬時に「います。」と嘘をついてしまった。いないと答えるとやり取りが面倒だったので、咄嗟についた嘘だったが、当然メロンは受け取った。すすきのでは事情が違い、飲食店を経営しているおじさんからの誘いが多かった。「お代はいらないから、うちの店に食べにおいで。」と毎回しつこく誘われ「今度行きますね~。」とあしらっていたが、ある日「いつ来る?今日は?なら木曜はどうだ?」と押され、ついに幼馴染で親友の女友達を連れて行った。そこそこ高級な和食屋で、行くと貸し切りになっており、従業員のおばさん1名がいて、入店と同時に「あら、新しいターゲットが来たのね。」という様ななんとも複雑な表情を見せた。心底友人と行ってよかったと思いつつ、次々と出される高級食材にびびりまくる。帰りに請求されたら、手持ちのお金じゃ絶対間に合わないだろう。2時間も経った頃、遠回しに愛人にならないか的な話しになったが、ひょんな事から、娘さんと同じ歳である事が判明。部活だったか、バイト先だったかで、かなりのニアミスをしている様だった。「お嬢さんとどこかで繋がってるかも知れませんね~。(ニッコリ)」に、「悪い事は出来ねぇな。」とあっさりと帰してもらえた。以後、どんなに誘われても患者さんの店には行かないと学習したのだった。また、クラブ経営のママさんから、ドクターが席を外した隙に「あなた、いいわ~。うちの店で働かない?給料いいわよ~。」と誘われた事もあった。三十路に近かった私がこんな風に言ってもらえ、実際の金額を聞いて思わずちょっとだけ揺らいだのは言うまでもない。そんな感じで、若い男性がたくさん来る職場ではあったけど、私の場合の実情はこんなものなのでした。