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2024年03月17日
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カテゴリ:音楽
“ドメニコ・スカルラッティにとって、フーガというものは基本的に時代遅れの古風な形式であった。J.S. バッハがフーガを調性語法を拡張する主要な手段としたのに対し、スカルラッティはそこに何の可能性も見いださなかったのである。”(ラルフ・カークパトリック著、「ドメニコ・スカルラッティ」、pp.173、音楽之友社、2018)

上記はカークパトリックの著作中の一節で、ドメニコが残した膨大な数の鍵盤作品の中にフーガと呼べるものが数えるほどしか残されていないことを総括したものです。同い齢のセバスティアン・バッハがフーガに注力し、数多くの名作をものしたことを引き合いに、その対照的な作風を際立たせているように見えます。



一方、このところバッハの鍵盤作品もよく弾くようになった亭主、この文章のもう一つのキモとなる「バッハがフーガを調性語法を拡張する主要な手段とした」という一節をよく理解していなかったことを最近になって気づきました。

カークパトリックが「フーガというものは基本的に時代遅れの古風な形式」というとき、おそらく彼の念頭にあるのは対位法(=ポリフォニックな音楽)、中でもバロック期より前の厳格対位法と呼ばれるそれです。ここで亭主が見落としていたポイントが対位法と教会旋法との関係です。

よく知られているように、対位法(contrapunctus、英語でcounterpoint)の歴史は教会旋法で書かれた単旋律グレゴリオ聖歌の各音符にペアとなる音符を配することで生成する旋律を同時に歌うことから始まりました。(音符を「点」とみなせば「点」対「点」なのでcounter-pointと呼ばれます。)しかも、この場合に許容されるのは「協和音程」とされる4度、5度、8度(オクターブ)という完全音程が基本。

その後ノートルダム楽派(12世紀ごろ:ペロタン、レオナンの時代)ぐらいにからは、声部の数が増えるとともに、声部の動きも点対点のくびきを脱して自由になってきます(自由対位法)。

さらに、ルネッサンス期にはイギリスのジョン・ダンスタブルによる長3度音程の導入を経て、フランドル楽派などにより高度に複雑な対位法が用いられることとなり、協和音程も3度・5度・6度・8度となりました。面白いことに、このころ完全4度は不協和音程の仲間となり、中世までは不協和音程だった3度・6度が協和音程となっています。

さて、バロック期に入ると徐々に複数の声部の間で旋律と伴奏という役割分担が見られるようになり(いわゆるホモホニックな音楽)、同時に教会旋法の中の「ドの旋法」と「ラの旋法」の2つだけを「長調」と「短調」として用いる調性音楽が流行し始めます。

バッハが活動していたバロック期の終わりにかけては、「調性音楽とホモホニックな音楽」という組み合わせが音楽における事実上の標準となる一方で、対位法は教会旋法とセットになって「過去の遺物」として脇に追いやられてしまいました。

そして、ドメニコ・スカルラッティもまさにその路線上で新たな響きを開拓していったと言えるでしょう。教会旋法のくびきから脱した旋律が、調性音楽における転調を駆使して自由自在に駆け巡る様は、まさに音楽の万華鏡のように感じられます。

ところが、セバスティアン・バッハは対位法と教会旋法を同一視せず、「調性音楽とポリフォニックな音楽」というもう一つの組み合わせに大きな可能性(=カークパトリックも言う調性語法を拡張する主要な手段としての可能性)を見出したというわけです。

このようなポリフォニックな音楽への肩入れは、あたかも時代の流れに竿を刺すかのように見え、実際バッハは同時代人からも時代遅れと批判されています。が、今から見れば、そのような批判は流行に目が眩んで彼の企ての意味をよく理解できなかったからだと言えるかも。

さて、調性音楽とポリフォニックな音楽の組み合わせがどの程度の「成功」を収めたのかは、人によって見方も様々だと思われます。が、おそらく後者は調性音楽とは別の音楽語法と組み合わさることで、これからも大いに発展する可能性があるように見えます。









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最終更新日  2024年03月24日 20時11分30秒
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