五反田団第36回公演「すてるたび」
五反田団第36回公演「すてるたび」作・演出/前田司郎出演/安藤聖、黒田大輔、後藤飛鳥、前田司郎アトリエヘリコプター全席自由席 整理番号77番2008年11月25日火曜日 19時30分開演実は、前田司郎氏が岸田戯曲賞を受賞していたことは芝居を観たあとで知った。もちろん、受賞作品は購入していたのだが、未読であった。そんなわけで、ほとんど事前の情報のないままで観に行った。手持ちの情報は、今時、チケット料金が1,500円である、というくらいであった。千秋楽であった。客席は通路まで満杯。倉庫を改造したような空間。如何にも小劇場スピリット溢れる空間である。好きだ。道具はパイプイス四脚のみ。このパイプイスが物語の進行と共に千変万化してゆく。好きだ。持ち道具はタオル。このタオルも物語の進行と共に千変万化してゆく。これも好きだ。役者の衣裳もジーンズにシャツ。温泉の入浴シーンもそのまま。が、充分に演技で裸であることを想像させる。これもまた好きだ。つまり、ずばり、演劇的なのである。まんま、映像にもならなきゃ、文学にもならない。演劇でなければならないのだ。この心意気が私は好きだ。例えば、先のイスは洞窟になったりお化けになったりする。何て素敵なことだろう、と思う。これこそが演劇の力だと私は思うのだ。これほど観客の想像力を刺激するメディアが他にあるだろうか。が、今回の物語(初めてなので)を観る限り、ドラマ性の欠落を感じる。もちろん、これは意図的なのかも知れない。エピソードの連続でも充分面白い。その証拠に客席は笑いの連続だった。私自身も小劇場の公演で久しぶりに大笑いした。ホント面白かった。戻ると、ドラマ性の欠如または排除しているが故に時間が経過しても盛り上がってゆかないのだ。もちろん、繰り返すが、それは意図的なのかも知れない。が、もし、そこにドラマ性が加わったらそれは途轍もなく面白くなると、私は感じたのである。余談だが、私の中では、おそらく今後はこの作品が入場料1,500円の基準になるのだろう。多くの小劇場の方達はそのことを肝に銘じた方がイイのではないだろうか。よく云うが、私は、大道具や衣裳などを観に行っているわけではない。芝居を観に行っているのだ。先ず、面白い芝居ありき。そして、それをさらに面白くするために大道具や衣裳などに凝るべきだろう。道具は凄かったけど……。衣裳は派手だったけど……。何もなくても「面白い舞台」は創れる。もちろん、私も肝に銘じている。結論。五反田団は面白いッ!!