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2005年05月04日
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カテゴリ:楽器関係
インド音楽 「演奏編」

インド音楽を演奏する時の形態を説明します。
旋律編
リズム編で説明しています。

インド音楽においては、ハーモニーという概念がありません。
通常音楽というのは旋律・リズム・ハーモニーから構成されますが、インド音楽は旋律とリズムのみで構成されています。

原則として北インド古典音楽を演奏する時には、大きく分けて2つに分かれます。
「Alap(アラ-プ)」旋律だけを演奏する部分
「Gat(ガット)」リズムが入る部分から構成されます。
タンプーラ等の伴奏(基音持続楽器)はどちらも演奏します。
アラープは旋律楽器(声楽を含む)の演奏です。
旋律楽器は1人の時もあれば複数人の場合もあります。

「Alap(アラ-プ)」は更に細かく3つの部分に分かれます。
「Alap(アラープ)」 リズムが全く無い状態で即興にて旋律を奏でます。
「Jod(ジョド)」 Jorと表記される時もあります。一定のリズムがある状態で即興にて旋律を奏でます。リズムはだんだん加速していきます。
「Jhala(ジャラ)」 ジャラはガットにもあり、区別する意味でアラープジャラと呼ばれます。ジョドを加速発展してジャラになります。

奏者アイデアを取り入れたりしますが、アラープだけの曲やジャラを省略するなど色々ありますが、アラープを演奏せずにジョドから始める事はありません。
広い意味でのアラープは、特に演奏者の世界が顕著に表れます。
自己の世界を音に表現していきます。
旋律に物語性を持たせ、展開させていきます。
アラープ・ジョド・ジャラは、それぞれ低い音域から始まり段々と高い音階へ移行していきます。
旋律だけを独奏するアラープが終わると、タブラも参加するガットへと移行します。
アラープの演奏時間を「1」とすれば、ガットの演奏時間は「2~3」ぐらいでしょうか。

旋律楽器と打楽器のソロの駆け引き(戦い)です。
旋律楽器がソロ演奏中は打楽器は伴奏に徹します。
逆に打楽器がソロを演奏している間は旋律楽器が伴奏に徹します。
ターラは延々とループするのでソロ演奏している楽器は伴奏を聞いて、今何処のマトラかを把握します。

演奏するターラは自由ですが、通常二種類使います。

テンポについては、ヴィランビット(slow)又はマドゥヤラヤ(middle)を演奏し、次にドゥルット(fast)を演奏します。必ず遅いほうから演奏します。

リズムはテカがあるので、どのタールを演奏しているかは理解できます。

ガットは、旋律楽器が伴奏を始めて打楽器のソロから入ります。
が、旋律の伴奏パターンは演奏者が作成なので、テカを聞き判断することはできません。
更に旋律パターンの始まりがターラの先頭、マトラの1番目から始まる訳ではありません。
途中から始まり、強調されるべき所で始めの1、つまりサムを迎えます。

ターラで決まっているマトラ数や旋律も延々とループします。
特に何処のマトラから始めるかと言う定義はありませんが、ヴィランビットのティーンタールに関しては必ず12マトラから旋律はスタートします。

「ティハイ(完結フレーズ)」
これもインド古典音楽の目玉です(注:歌にはティハイの概念はありません。これは詞で表現する事が不可能な楽器のみの技です)。
ガットはソロを交互に演奏していきます。
そして旋律楽器のソロはTan(ターン)、短いターンはTora(トラはヒンディ語で「ちょっと」という意味)と言います。
ターン(トラ)は完全即興です。
演奏中に自己世界をリアルタイムに音にして表現していきます。
もちろん打楽器のソロも即興ですが、ただソロを奏でて(叩いて)いるだけでは、いつ終わるのか、相手側にも観客にも本人にもわかりません。
そこでソロを構成していく要素として最後にティハイによってそのソロが完結する訳です。
ティハイとはドラムで言うフィルインに該当します。
同じフレーズを3回繰り返して、最後にサム(つまり1matra)で終わる取り決めがあります。
つまり1matra目から逆算してその位置からティハイを決め、同じフレーズを3回繰り返し終了します。
これがビシッと決まると、あまりの気持ち良さと醍醐味を感じます。
ティハイが決まるとそのソロが完結です。
旋律楽器のターンでは、ソロフレーズ+ティハイを何度か弾く事が多く、打楽器では割と派手なティハイを決めたりします。

そしてティハイ中のティハイ、Chakardar(チャッカルダール)があります。
これはティハイを3回繰り返して1拍子目に帰ります。
ティハイが1フレーズを3回繰り返し3×3フレーズで合計9回繰り返します。
決まれば相当かっこよくなります。
別パターンでは、ムクラと言う方法でティハイをサムでなく固定メロディ(Sthai)の頭に持って行き、続けてSthaiの頭から演奏を続ける技術もあります。

現地インド古典音楽鑑賞者は、ティハイ等が決まったり感嘆する演奏があると、「んんー」と囁きつつ、頭を左右に振ります。(拍手喝采のインド版若しくはスタンディングオベーションのインド版)
ティハイもバリエーションがあり、流派や演奏者のリズムセンスが問われます。
ティハイをわざと演奏しない
ティハイをわざとサムで終了せず旋律の開始部分で終了(前述したムクラ)
同じリズムであっても旋律にバリエーションを持たせる
逆に同じ旋律であってもリズムにバリエーションを持たせる
決めると見せかけて決めずにじらす

「ジャラ」
インド古典音楽のガットでトリの部分を占めるパートになります。
一般的にTeentaalで演奏しますが、JhaptaalやEktaalで演奏する場合もあります。

構成としては、Drutから移行し、だんだん加速して演奏者の限界まで加速すると大々的にティハイを行って終了します。
1番盛り上がるパートと言えます。
自由なパートを演奏者それぞれが色々な技を披露します。
最後の方は超人的な速度ですが、はっきり言って演奏側は非常に疲れます。

インド古典音楽というのは、この「加速」が1つのポイントです。
どのタールを演奏していても定期的に少しずつ加速します。
テンションが徐々に上がり、走りすぎて弾けない事もたまに見受けます。

旋律の流派の事を「ガラナ」と言います。
リズムの流派の事を「バージ」と言います
(最近はバージもガラナと言うのが一般的です)
ガラナの持つ本来の意味はHouseです。
そのまま訳すと「家」ですが「家元」と理解した方が良さそうです。

ガラナの概念はボーカルを基準に成り立ちます。
古典音楽ではカヤールとドゥルパド。
近年は両者に融合されている感が強いタラナ。
他にも聖地ヴァラナシ発のフォーク流派であるトゥムリ、タッパ、ダマール、ホーリー、カジャリ、チャイティ、などが存在します。
南インドのカルナータカ音楽にもバーニと呼ばれる流派があります。
各楽器はこの歌のガラナをベースにそれぞれのガラナを持っています。

「Khaya」
現在最も一般的北インド古典音楽の中で最も重要な声楽の様式です。
途中でタール変換があります。
Durpadの重々しい様式に比べ、より想像力に富み華やかなものになっています。
Khayal の意味は「空想的な思いつき」。 
ペルシャ語から派生したものであろうと言われています。

「Durpad」 
重々しい雄大な旋律展開が基本でChautaal/Tivara/Jhaptaal等を主に演奏します。
特にタールを途中で変えたりする事はありません。
瞑想等精神世界をより重視したスタイルなので、このガラナの人はヨガを追求するヨギである人もまた多くいます。

「Tarana」 
一般的ですが説明が非常に難しく、インド音階そのものを直接言葉で謳い上げる形式です。
SaReGaSaReGaなどと謳うスタイルです。
これをBolと言いますが、徹底的に音の動きを表現した唱法で、早口なのが基本です。
現在上記ガラナに併合されている感があります。
このTaranaを歌いこなせるかどうかは北インド声楽家の重要な課題となります。

「Thumri」 
非常にロマンティックなのが特徴。
詩と旋律が重要。
Varanasi発のフォークソング用ガラナです。

「Tappa」 
イスラム教徒の歌とされており、パンジャーブ語作品が多いことからは、パンジャーブ地方発祥のように思われます。
速いサイクルのタールが特徴です。

「Hori」 
Varanasi発のガラナ。ホーリ祭の時に歌われる様式。

「Chaiti」 
Varanasi発のフォークソング用ガラナ。

「Kajari」 
Varanasi発のフォークソング用ガラナ。





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最終更新日  2005年05月04日 10時12分05秒
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