東博の浮世絵展示室(6/9~)1:栄之の重文『青樓藝者撰』作品
上野の
東京国立博物館の本館2階10室の今回の浮世絵展示(
展示作品リスト)は、7月5日(日)までです。
館の説明によると、
「浮世絵には江戸の庶民の姿が生き生きと描かれています。かわらけ投げや洗濯をする庶民から芸者や、吉原の高位の遊女までさまざまな境遇の女性を描いた美人画のほか、江戸の近郊や各地の名所を描いた風景画作品を中心に構成します」
とあります。
今回の投稿は、展示作品の中から、
鳥文斎栄之の重文『青樓藝者撰』作品をピックアップしました。
■「鳥文斎栄之」
鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし)(1756~1829)は、
歌麿(1753?~1806)と同じ時代に活躍した美人画の名手であり、当時においては歌麿に拮抗するほどの人気を博していた。
・栄之は武家出身(直参旗本)であり、奥絵師四家の一つ
木挽町狩野家(こびきちょうかのうけ)の
狩野典信(みちのぶ)に師事した
・彼の初期の作品は、
鳥居清長(1752~1815)の影響を受けて、清長風の美人画などを描いている
・栄之は、歌麿が得意とした
大首絵を描かず、立ち姿や座像の全身像を主に描く
・後年には、錦絵の制作を止めて、肉筆の美人風俗画の作画に専念する
【参考:慶應義塾大学図書館「
高橋誠一郎浮世絵コレクションについて」:浮世絵コレクション/『
鳥文斎栄之』】
【参考:「
MOA美術館」:鳥文斎栄之/『
円窓九美人図』】
【参考:「
神奈川県立歴史博物館」:鳥文斎栄之/『
青楼美人六花仙 丁子屋雛鶴』】
【参考:「
水田美術館」:鳥文斎栄之/『
難波屋店先』】
【参考:「
アダチ伝統木版画技術保存財団」:
浮世絵師/『
鳥文斎栄之』】
【参考:「
思文閣」:美術人名/『
鳥文斎栄之』】
◆「鳥文斎栄之」:重文『
青樓藝者撰・いつとみ』/大判/錦絵・三枚続きの1枚
この作品は、
重要文化財の作品で、三枚続きものであり展示品は、その内の一枚である
・青樓(吉原)の芸者を描いた作品で、三枚続きの右が「いつとみ」 、中が「いつ花」、左が「おたみ・おふく」の4名の芸者が描かれている
・バックは、
雲母摺り(きらずり) (白雲母)が施されている
・栄之の代表作のひとつで、画面が明るくすらったした姿で描かれている
・芸者「いつとみ」の足元には三味線が置かれ、左手には撥(ばち)を持つ
・吉原においては、芸者と遊女は異なる職種で、芸者の着物は控えめな色合いで、地味な柄模様をしている
【参考:「
e国宝」:鳥文斎栄之/重要文化財『
青楼芸者撰』】
【参考:「
アダチ版画」:鳥文斎栄之/『
青楼芸者撰 いつとみ』】
*「鳥文斎栄之」:重文『青樓藝者撰・いつとみ』/(部分)