「チョコレートの真実」キャロル・オフ著、北村陽子訳・07年9月・英治出版刊・5の4
私:コートジボワール政権の裏の事情に通じているフランス人のジャーナリスト、ギー・アンドレ・キーフェル(略してGAK)は2004年4月16日金曜日、行方不明になる。 彼はコートジボワールのバクボ政権が国内外の疑わしい政治目的を支援するため、カカオの利益を流用していることを疑って調査していた。 フランス国籍を持つGAK行方不明は当時のシラク・フランス大統領とフランス外務省にとっても厄介な問題だった。 国際的にも知られてジャーナリストが、コートジボワール政府の最上層部の命令で拉致された可能性があるからだ。 2日後の日曜日、白人死体発見という警察の無線連絡を傍受したが、夜7時に死体は消えていた。A氏:まさに007だね。 フランス政府は動いたのかね。私:最初は、コートジボワール政府同様、黙殺だったが、GAKの仲間たちのネットワークの活動で、フランス法務省はラメルという判事をGAKの調査に任命した。 彼の徹底した調査で、コートジボワール政府高官がからんでいる疑念が出てきた。 コートジボワール政府は対応を迫られた。 そこで「スケープゴート」を作る。 トカゲの尻尾切りだね。A氏:常套手段だね。私:ラメルは粘ったが、肝心のフランス外務省が妨害したという。 結局、謎で終わるね。 ところで、コートジボワールのカカオの利益金はいろいろな基金としてプールされるがその支出は不明朗で、ときにはマネーロンダリングの対象になったりする。 興味があったのは、アメリカのニューヨーク州のフルトンという小さな町のチョコレート工場の運命だね。 この工場はネスレ社の運営だったが、2003年、工場をブラジルに移転させるということで閉鎖されて失業者も出た。 この工場をコートジボワールの規制管理基金・FRCが購入して稼動させるということになった。A氏:植民地だったアフリカの国がアメリカに工場の買収をするとは、過去と逆方向だね。 最近のイギリスのジャガーがインドのタタ自動車に買収されたのと似ているね。私:フルトンの町は大歓迎だね。 アメリカの自治体も補助金を出す。 ところが、金はコートジボワールから送金されるが、別なアメリカの口座に直行し、工場には来ない。 カカオ豆も産地直送で安いと思ったら、質の悪いカカオ豆で、かつ、価格も高いという。 結局、工場は破産する。A氏:結局、このチョコレート会社は合法性を持たす表看板で資金を他の目的に流用する隠れ蓑だったということだね。私:コートジボワールの上層部の腐敗、国際社会の干渉、多国籍企業の関連は不明確だ。 コートジボワールのカカオをめぐり多くの人間が自分の利益を追いかける。 一方、国際法と国際機関は企業を保護する。 金の卵を産む鳥である農民は、欲にかられた人間によって骨までしゃぶりとられている。A氏:メキシコ、ゴールドコースト、コートジボワールとカカオの中心的な産地は歴史的に移ってきたが、今度はインドネシアかね。私:ところが、一部、また、マヤにもどるんだね。 ユカタン半島の南部に英領ホンジュラスがあるが、これが1981年に独立して、国名をベリーズとする。 古くから、この地域のマヤ人は最高品質のカカオ豆を産出してきた。 しかし、スペイン人もイギリス人もこの地のカカオ豆には興味はなかった。 ところが、偶然、アメリカ人ハーググローブがこのカカオ豆に目をつける。 彼はアメリカ・ニューブランズウイック州の出身で、この地域がマケイン一族によって貧困から繁栄に変わるのを見たという。 マケインは、農薬依存型のジャガイモ栽培を行い、ジャガイモを畑の近くでフライドポテト用のカット済み冷凍ポテトにした。 マケインのビジネス手法のおかげで人々が土地を離れずに繁栄を享受できるようになったという。A氏:日本の地方分権論もこのような地方の知恵者がいないと、お念仏で終わるね。 ところで、マケインというと今のアメリカ大統領選挙で共和党候補になっているね。私:そのマケインと違うようだね。 明日はそのハーググローブの前に、カカオ豆の舞台が、最初のマヤ人にもどることになることにふれよう。