2008/08/14(木)08:31
「トヨタのお父さん・カイゼン魂どこまでも、現場トヨタマンの30年日記」田村康子著・講談社08年5月刊
トヨタのお父さん私:ガソリンの値上げのせいか、世界的に車の売れ行きが悪いね。
ますます、自動車メーカーの競争力が問われるね。
ところで、著者の父親は現在、76歳だが、定年まではトヨタマンだった。
現場トヨタマンの30年の日記というから、生々しいトヨタの「カイゼン」現場の内容を期待した。
しかし、父親は加工作業でなく、運搬部門の仕事をしていたためか、ほとんど、今までの常識の範囲を出ず、特に新しい事実もなかった。
本の半分は、トヨタをめぐる豊田市などの施設のことで、カイゼンと違うね。
題名と中身が基本的に違っているね。A氏:君のように製造現場にいた人間から見るとシロートの本かね。私:あえて言えば、2つのことが参考になった。
一つは、トヨタで「かんばん」を実施したときの現場での問題だね。
「かんばん」は現場の人間が直接かかわるので、初めて開始するときは、現場の人間の「なれ」が重要になる。
そのため、トヨタでは「かんばん」が定着するために、2年くらいかかったという。
自殺者も出たという噂も出たほどだね。 後に、トヨタ方式が盛んに宣伝されたとき、名古屋のあるコンサルト団体が「6ヶ月かんばん」と言って、どんな会社でも6ヶ月で「かんばん」システムを定着できるように指導できるという宣伝文句を出したとき、すぐこれはインチキな宣伝だとすぐわかったね。 この本では、それに関する日記について、5頁ほどしかふれていない。
日記では7日分だね。
1968年9月16日からの日記で、本社塗装部品にかんばん制が実施されたのがトップだね。A氏:詳しい日記かね。私:基本的に1行くらいのメモ的な日記だね。
例えば、9月18日の日記では「かんばん制実施で大変な騒ぎであった」とあるだけで、どのような「大変な騒ぎ」かについては日記に書いてない。
9月25日の日記はかなり長いが、それでも3行くらいだ。 「かんばん制度についてじぶんもなかなか理解しにくいものを一生懸命理解すべく努力する」とあり、「周囲の人に理解してもらうには、相当時間がかかるものと思う」とある。A氏:やはり、「かんばん」方式は苦労したんだね。私:「かんばん」については1968年には、5日分だね。
そして10年後の1978年5月24日にとぶ。
ここでは「かんばん」を色別表示にしたという日記がある。
次に紹介された日記は翌1979年3月14日だ。「かんばんの出し方が悪いため振り回される」とある。
著者の解説では「組み付け作業」をしている側は、部品在庫が多めにほしいから、部品の「かんばん」枚数を増やすことを要求するとある。A氏:「組み付け作業」というのは、部品が不良品発生などで1個だけでも足りないと、作業がストップだから、安全をみて余裕がある在庫を持ちたいね。私:しかし、「かんばん」制の趣旨は在庫を押さえ、問題をクローズアップして、不良をなくすことを目的にしているから、「かんばん」枚数増加要求は受け入れられないね。 「かんばん」制が実施後10年たっても、まだ、「かんばん」枚数でもめているのだから、相当、厳しい問題なんだね。A氏:ということは、「かんばん」制の成功を支える大きな要因は、不良ゼロなどの現場工程のカイゼン力だね。私:この本は、そのカイゼンについての父親の日記も紹介しているが、いろいろなトヨタ生産方式の本にあるように、現場の改善提案制度のことが書いてあるね。
改善提案数は、各リーダーのノルマになっているのは、どこの企業も同じだね。
改善は自主活動がだというが、その境目が難しい。
今後のトヨタがその力を継続的に維持できるかは、そのカイゼン風土の継続維持だというね。
だから、終身雇用を中心にしないと維持しにくい。A氏:一時、ムーディか、なにかが、トヨタはリストラを簡単にしないとして、企業評価を格下げしたね。私:評価者のトヨタ生産方式の無知だね。
ところで、人間のDNAは自然に放置しておいても継続される。
しかし、企業のDNAは、人の人為的な伝承がないと継続されない。
今後、他の企業で容易に真似のできないトヨタのDNA継続力維持に着目したいね。
それがトヨタの競争力の源泉だからね。