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さっちゃんのお気楽ブログ2

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2020年08月15日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
連日の猛暑日になっています。
梅雨が明けてもても、コロナの勢いは衰えることもなく、
今も感染者の数は日々増加し続けています。
的確な対応策もないまま、大きな不安を抱えて
無為な日々を過ごさざるを得ない方も多いことでしょう。

今回は「藍の風」より、豊作祈願の踊り「八朔踊り」の
想い出を綴ったさっちゃんの作品を紹介します。
「八朔回り踊り」は音頭出しを中心に、
まるく輪を描いて独特の身振り手振りで踊り歩く盆踊りで、
例年なら、9月頃に町の八坂神社で行われていて、
今も夏の夜の風物詩となっているようですが、
今年はコロナの影響で行なわれるのか気になってます。





「藍の風」より ~「八朔踊りの夜は更けて」

あれは終戦の翌年ぐらいのことであったのだろうか。
人々は長い戦争の間、途切れていた行事を、
一つ一つ思い出しはじめていた。

この小さい山峡の町でも、半月ほど前には
戦後はじめての盆踊りとて、衣装のそろわぬまま、
浴衣のない若者は、戦禍の届かなかった山里ゆえ
着ずにしまっていた暑苦しい色模様の
女の長襦袢や着物を着て、どさどさと、真黒い脛を出して、
ただめちゃくちゃに手足を振るだけの
野暮ったい踊りに酔い狂った。

私たちは、徳島市に住んでいて、
戦前の粋な色街の芸者衆の鳥追い姿や、
いなせな法被姿や、涼しそうな白地の浴衣の
軽やかな踊りを見て来た眼で、
「あんな踊りはあわおどりではない」などと、
はじめのうちは軽蔑し、あきれ顔で見物していたが、
その異様な踊りが、みるみる町の人々の顔に、
笑いを蘇らせてゆくのを見て、
これこそ民衆の踊りの本来の姿なのだと納得した。

このようにして、すべてに乏しい中にも、
ささやかな盆の仏まつりを済ませて、
朝夕の涼しさに、ホッとし始めた頃、
八朔というから旧暦の八月一日、
新暦では九月も半ばごろになっていたのだろう。

私たちは戦災に遭って以来厄介になっていた叔母の勧めで、
弟を連れて八朔踊りを見に出かけた。

阿波おどりしか知らなかった私にとって、
山里の情緒豊かな周り踊りは物珍しく、今もなお、
あの夜の酔いしれた群舞の熱気のなかに
立ちつくした感動を忘れることはできない。

町の通りから少し坂を上がった所の、
西山の裾に広がる祇園さん(八坂神社)の猫の額ほどの境内に、
ぞろぞろと集まってくる人の群れに交じっていると、
そのうちに辺りが薄暗くなりはじめて、踊りははじまった。

渋いというより、もっさりとしためくら縞の浴衣に
黒い兵児帯を巻きつけ、頭からすっぽり手拭いでほうかむりし、
その奥に眼だけギョロギョロさせた男たちが、
のろのろと腕を振り始め、やがてなんとなく輪ができていった。
輪の中央に一段高く台を据えて、古びて油が浸みた番傘を立て、
声自慢の老人が喉の皮をせいいっぱいに
引き延ばして音頭を唱えている。
その節に合わせて群衆はぷらりんぷらりんと、
いかにも曖昧に右腕左腕と交互に振り、足を踏み出し、
前に進むかと思うと退き、
ぐるりと回ってョーイヨイと間延びした調子で腕を振る。
どこが始めか終わりか分からない。
      
単純な繰り返しなので、見ていてすぐ覚えられそうだが、
それにしてもヨーイヨイとリズムにあわすのは難しそうである。
初めは慣れぬせいかばらばらで揃わなかったが、
そのうちに昔踊った身体が思い出したのか、手足の動きが揃ってきた。
一節ごとに「ヨーイヨイ」という踊り手の大合唱が入る。
ゾロッゾロッと数十人の藁草履を引きずる音がして
一足ごとに土煙を巻きたてる。
取り巻く見物人は鼻も口も明けてはおられない。
裸電球の下で、お互いの顔もおぼろに霞み
踊りの群れはシルエットとなって揺れ、
聞こえるものは、一段と声を張り上げ
時折悲壮にかすれ始めた音頭の声と、
草履を引きずる音ばかりの中に
不意に近づいた見知らぬ男の白い歯と
汗まみれの日焼けした腕や脛がにょきっと現れてどきりとする。
      
音頭の文句は聞きなれない節回しのせいかよく分からないが、
昔の悲恋の物語とか、仇討ちや親孝行者の物語などがあるらしい。

男ばかりかと思っていると、時刻がうつるにつれて調子づいてきて、
大きな乳房もこぼれんばかりの女たちが、
汗に濡れた袖を肩にたくしあげ、枯れちじこまった老婆や、
柔らかそうな十代の娘たちも輪の中に溶け込んでいた。
      
夜が更けるにつれて踊りの輪は大きく膨らみ、
なにかに憑かれたように呆けて、ただ、黙々と手足を動かし、
土煙の中に異様な熱気の渦をかき立てていた。
だが、それもあまり長続きせず、
いつとはなしに全体に目に見えぬゆるみがただよいはじめ、
倦怠感が感じられるようになると、
一人抜け二人抜け乱れが見え始めた。
だがそれもしばしの間で、少し輪を小さめに整えて、
交代した音頭の新手の声が響き渡ってきた。
見物人もあらかた帰ってしまった境内では、
薄暗い隅々で、様々な人と人の秘めやかな触れ合いの
ひとときに陶酔していた者もいたことであろう。
「生きていてよかった」という思いをしみじみ噛み締める
命拾いをして故郷に復員してきた男たちも多かったにちがいない。
   
その夜、床に入ってからも闇夜を響かせて音頭の声が耳につく。
いつしか寝入って明け方目覚めると、
声はすっかりかすれはてていたが、まだ音頭は続いていた。
踊り手の囃す「ヨーイヨーイ、ヨーイヨイ」の合唱も
風のぱったり途絶えた山峡の薄明かりのそらに
延々とひびいていた。

 
この夏は風物詩となっている「花火大会」ですが、
殆どの所で中止となっています。
想い出の花火大会の動画をアップしておきました。






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最終更新日  2020年08月15日 00時28分19秒
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