[環境]の記事一覧 | 西條剛央のブログ：構造構成主義

緊急地震速報の活用法

NHKが誤って緊急地震速報を流したらしいが，これってかなりやってはいけないミスの類だと思う。未明ゆえ見ている人もあまりいなかったから良かったようなものの，地震ではびっくりして逃げ出したときに転んで足の骨を折るお年寄りもいるのだ（そしてそのまま寝たきりになる人だっている）。しかし，本質的な問題はそれ以上にあって，みなさんもご周知の通り，小中高校生の頃，ときどきピーピーピーと異変を知らせる音声が鳴っていたため「またどうせ誤作動だろう」と誰も意に介さなくなっていたが，それと同じことになりかねない。「緊急地震速報」は地震を秒単位で事前に知らせることで，対処可能性を開くものなのだから，これはどう考えてもまずいだろう。ちなみに「地震が起きたら火を消す」という「常識」は今となっては間違いらしい。火を消しにいって怪我をした人も多いらしく，また今時のガスコンロは異常を探知すると自動的に消えるシステムを備えているためだ。ご存じの通り，「緊急地震速報」は「時間的なズレ」を利用するため直下型の場合には機能しない。震源地から遠いほど，避難のために与えられる時間は多くなるが，しかし震源地に近いほど震度は大きくなるわけだから，本当に逃げなければならない人に与えられる時間は数秒からせいぜい十数秒といったところだろう。だからもし「緊急地震速報」をみたなら（子どもがいたなら有無をいわさずひっぱっていって）すぐに近くのテーブルか机の下に頭だけでもつっこむというのが正しい対処法らしい。間違っても，金目のモノを確保したりとか余計なことをしてはいけない（生きてさえいればまたお金は稼げる。死んだらお金もヘチマもない）。要するに，「緊急地震速報」は最初の大きな揺れによる即死や，致命傷を受ける可能性を減らすシステムだと考えておくべきだと思う。もとよりそれ以上に大事なことは，古い建物であればつぶれる可能性が高い１階には寝ないとか，タンス等倒れないように補強しておくということだ。ちなみに，僕は思い返せば初めて研究らしきものをしたのは「大地震で生き延びる方法」だったと思う。小学３，４年生ぐらいのときか，たまたまそういう本をカケス祭りという地元の祭りのバザーでみつけて，特に役立つと思われた，水に濡れても使えるマッチを作ったり，避難セットを用意したり，泥水から飲み水を作る方法などをノートにまとめたりしていた。今にしても思えば，僕の最初の研究動機は「いかに生き延びるか」だったのだ。幼稚園に入る前に宮城県沖地震を体験していて，その頃はまだ地震が怖かったので，大地震が起きても生き延びる方法を本気で考えてたのだろう。改めて考えると今でも，ホテルに泊まったときには意識するともなく「ここで火事が起きたら，最悪の場合，あのパイプを伝って下に降りれるな」とか脱出経路をシュミレーションしたりしている。まあ「何をしても死ぬときは死ぬ」というのは一面の真理だが，科学の機能は，過去の経験から構造を得て，未来を予測し，介入し，制御することにあるわけだから，死にたくなければ（大切な人を死なせたくなければ），その構造を利用できるようにしておくことは大事なことだろうと思う。

最高実績の殺人兵器とは何か？

「昨年の地雷死傷者、5751人に」という記事をみて，では，全世界で年間の交通死亡事故者はいったい何人になっているのだろうか？と思って検索してみるとすごい記事を発見した。 http://news.livedoor.com/article/detail/3331916/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中国の交通事故死亡者数は、1951年にはわずか852人だった。しかし、2002年には10万9000人余りに達している。かなりの激増だ。2000年以前、交通事故による死亡者数の増加は10年で2倍のペースだったという。しかし2000年以降、全国の交通事故死亡者数は毎年10万人前後を記録している。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中国では毎年10万人交通事故で亡くなっている。それが世界の8%ってことは，世界では1250000人。つまり毎年１２５万人死んでいる。１０年間で１０００万人ぐらいは死んでるってことか。車はその実績だけみると，どの近代兵器よりも業績をあげている（原爆なんて目じゃない）。走っている車をみたら，「あ，殺人兵器だ」と思っても間違いではない。そして車を運転するときは，「ガンダム以上の殺人兵器を操っている」と思って間違いない。赤い車はシャア専用。ザクとは違うのだよザクとは。ちなみにこんなのもみつけた。この目標もある意味ですごい･･･ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 平成18年度内閣府交通安全業務計画「･･･平成22年までに、交通事故死傷者数を100万人以下とすることを目指し、世界一安全な道路交通の実現を図るため、各種の交通安全対策を関係省庁、地方公共団体及び関係民間団体と緊密に連携しつつ、強力に推進するものとする」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん，殺戮兵器にはくれぐれも気をつけましょう。

池田先生TV出演シーンはこんな感じでした（一部）

池田先生「太田光の総理大臣になったら」に出演してました。テーマは「環境税の導入」完全に主役級のキャラになっていて、周りもそういう扱いをしていたのがおもしろかった。一部抜粋 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 池田先生「ふかわ議員の話をきいてカチンときたのは、古代の人はふかわ議員みたいにフィンランドにいかねーよな。飛行機乗ったら、すごいエネルギーかかるよね。そういう人が環境税とるなんて間違ってるよなと思うのね、そこが一番最初に間違っている」ふかわりょうが「この人呼んだの誰ですか？　誰ですかこの人呼んだの？」（会場爆笑）たなか「この人はおもしろいんだよ！この人おもしろいんだよ、言うことが！」（会場爆笑）ふかわ「僕は、電車に乗るなとか、電気使うなとか言いたいんじゃないよ」池田「そんなこと言ってないよ。おれは電車にも乗るし、電車も使い放題使うけど、おれが勝手にやっていることをやるんじゃないって言われるのが腹が立つ」ふかわりょう「やるななんてって言ってないじゃないっですか、あんたよっぱらってるんですか！」（会場笑）たなか「この人はいつもそうなんだよ」（会場笑）シエラ「いつもそう」池田「そう、いつもそうなんだよ。それから温暖化なんてたいしたことないの。おれは生物やっているから良く知っているんだけど、生物が大絶滅したのは全部寒冷化したとき。温暖化して生物が大量絶滅したことはないのよ。だから温暖化なんてたいしたことないよ」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 池田　ほんとのこというと、どのぐらいのエネルギーの使う範囲を決めてくれれば、それの範囲で自由にきめさせて欲しい。必要なときは個人によって違うんだから」司会「池田先生にとっての理想の生き方はどういうものですか？」池田「何にもしないで朝から酒でも飲んでぐだぐだして、海外旅行にも行かないで、こういうところにもこないで、家でごろごろしているのが一番いい。それがもっともエコロジーなんだ（笑）。環境税をとって環境によくする方法は一つだけ。それは絶対使わないで埋めておくこと」武田「絶対すばらしいアイディアだと思いますけどね」太田「池田さんって、環境の専門家なんですか？」池田「そうだよ」（会場爆笑＆ドヨドヨ「ほんとかよ」）太田「池田さんがどうしてこうなっちゃっうのか考えてみた方がいいよ。考えて考えて、ああなっちゃったんだから。（会場笑）こういう人大事だと思うの。人間はエゴなんだからしょうがないじゃんっていうところに行き過ぎがあるかもしれないけど、そういう人の立場になって考えてみないとダメだと思うんですよ」野口「ほっとくとああいう風になっちゃうわけだから、ある程度コントロールしようってことなんだよね」（会場笑）太田「それが怖いのはね、「エゴをなくして生きましょう」ってふかわがいうときに、もっともだと思ちゃうのが俺はすごくこわいんです。」野口「それはそうなんだよな」太田「あんな風にバカなおやじになっていることが、俺は、信用できるわけ」（会場笑）国会議員「総理、そこまで言っていいのかな（笑）」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ そんなこんなで、後半に入り、武田さんは、「北極の氷が溶けても、アルキメデスの原理があるから、一切海水面は上がらないのに、環境に詳しいという人が１５年間も騙し続けてきたんだから、庶民の方が正しい」という発言があったら、賛成派の旗色が悪くなってきて、「それはあくまで予測だから現実をみなきゃいけない」とかいいだす始末。温暖化上昇の予測に基づいて今まで議論してきたんじゃないの、と思った。その後の、太田の「間違っていることは、訂正しなきゃいけない」という意見はまっとうだったと思う。前回は賛成派で池田先生にたてついていた人が、反対派にまわっていて池田先生が前回言ったことをそのまま言っていたりとか、全体的に池田先生の考えが広まっているような感じがした。話した内容をゼミで聞いていて、だいぶカットされているなと思ったけど、あの場にいるひとは、それも聞いているだろうから、視聴者よりも説得されている部分があるかもしれない。ってことで、環境税導入は否決されました。そもそも、海水面上昇の予測は２１００年時点でMAXで５９ｃｍぐらいなんだよね。最大でだよ。６０ｃｍぐらい上昇したからってどうってことないのは小学生なら分かると思うけどな。「いや、じゃあ実際に水没しつつある都市があるのはどう説明するんだ！」とお叱りを受けるかもしれないけども、それはそこが地盤沈下してるんだよ。そんなに急に海水面はあがらないからね。それとこれとを一緒くたにして、何でもかんでも温暖化のせいにすると、自分の首を絞めることになるってことに気づかないと。僕はまた税金上げられるの嫌だなあ。

「姉歯」ホテルに宿泊

「姉歯」問題が起きた頃ニュースをみていたら，営業停止に追い込まれたホテルが出ていた。なんかみたことあるホテルだな…って夏の集中講義で１週間以上泊まっていたとこだ！http://plaza.rakuten.co.jp/saijotakeo0725/diary/200508020000/不謹慎と怒られるかもしれないが，正直なんか笑えた。池袋駅の近くで，綺麗で新しくて，妙にリーズナブルだなーと思って何も知らないで安穏と泊まり続けていた自分がおかしかったのだ。でも，半額にしてくれれば今でも泊まってもいいかもと思う。全部が全部営業休止なんてしなくても，「閉店セール」ならぬ「姉歯セール」といったようにすれば，それ相応に値引きすれば好んで泊まる人はいるはず。要するに泊まってるとき大地震起きなきゃいいんだし，死ぬ可能性があるということを認識することで，無自覚に享受している生の意義を再確認できるかもしれない。とはいえ，世間が許さないだろうけど。耐震設計が甘いところには泊めるわけにはいかないというのは，客商売だからわからないでもない。でも，そんなに耐震設計もへったくれもないようなボロ家に住んでいるひとは今回の騒ぎを冷めた目でみているのでは，と思わないでもない。で，先ほど，群馬である某大学の集中講義のために，事務に宿泊先を指定するお願いメールをしたところ，次のような返事がきた。「宿泊場所ですが，そのホテルは例の「姉歯」ホテルのため，現在営業休止中です・・・」思わず，またかいっ！と心の中でつっこんだ。「姉歯」の守備範囲はなかなか広いね。昨年，このホテルにもさんざん泊まってたので，やはり笑えた。その辺では，綺麗で一番新しいホテルで，値段もリーズナブルだったのである。ぼくは自分が「姉歯」ホテルに泊まっていたということに関して，怒りは湧いてこない。だって，「姉歯ホテル」は確かにリーズナブルで外見は綺麗だったし，大地震が起きなかった以上，得したことにかわりはないからだ。そう考えると，今まで「姉歯ホテル」に泊まった回数が多い人ほど，得したといえるかもしれない。地震が起きずに泊まったという「過去」は，これから大地震が起きて倒壊する可能性があるという「未来」と，“交差”することはないから，ぼくにとって不利益ということはまったくない。まあ，といっても「姉歯」が悪いことは確かで，もっと悪い奴がいそうなのもまた確かなことだけど，そのことと上記の論考は“交差”する話でもない。先日の忘年会で，「いい加減な仕事をすると，『おまえ姉歯みたいだな』とか言われるようになった」と後輩がぼやいていた。「姉歯」という名字の方は，さぞかし迷惑していることだろうが，みんなで訴えればその損失は国が補償してくれちゃったりするかもしれない。以下は余興。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━『好事苑』あ「あねはる」（動詞）いい加減な仕事をすること。特に中身がスカスカな仕事をすることを指す。また，それについて責められても他人事のようにひょうひょうとしていることを指して使う場合もある。

「全地球規模の不幸中の幸い」とは何か？

　昨日，とあるテレビ番組で「グンタイアリ」の生態を取り上げていた。　ドラクエに出てきた「グンタイアリ」は弱かったが，本物はマジつよい。　一つの群れが１０００万匹。ざっと東京都の人口ぐらいだ（ちなみに，平成１７年７月１日現在の東京都の人口は12,532,744人）。　彼らが通った後は，植物以外の生き物は根絶やしになる。ものすごくでかいスズメバチの巣も，あっというまにアリの巣になっていた。　集団で襲いかかって筋肉を麻痺させる毒バリを指して，生きたまま解体していくのである。そうして全て抹殺する。　おもしろかったのが，彼らの巣は，彼ら自身の身体から作られているということ。つまり，アリ同士がつながることにより一つの巣を形成しているのだ。　しかも，「中の温度が一定に保つために，連結している足を調節して，他のアリとの距離を調整する」といっていた。　　生物や進化に関する言及において，こういう「～のために」という「目的的な記述」が多いが，それらの多くは間違っていると思う。　いかにも頭の悪そうなグンタイアリが，「巣の中の温度を一定に調節するために」などと考えて，意図的にそんなことをしているとは考えにくいからだ。　そうではなく，彼ら自身暑さ？という不快さを感知したときに，他の個体とちょっと距離をとったりするため，その「結果として」中の温度が一定に保たれるんじゃないかと思う。　メカニズムはわからないけど，たぶん，何らかの相互作用の結果として，温度が保たれている，ということなんだと，僕は思う。巣の中の温度が自己組織的に保たれている，っていう感じかな。　さて，このグンタイアリは，移動を繰り返す。　なぜなら，一定の場所に留まると，近辺にいる生物を完全に死滅させることになってしまうから，といっていた。逆にいえば，移動しないタイプのグンタイアリは既に淘汰かかって現存していないといえるかもしれない。　驚いたのが，その移動中に，渡れない場所があると，アリ同士がガシガシ連結して「吊り橋」を造り，そこを他のアリが通っていくのである。　これは『魁男塾』でやっていたことそのものである。　うむー，おそるべしグンタイアリ。　と思っていたら，ハタと気がついた。　そのグンタイアリに一番似ているのは人間ではないかと。　みんなでせっせと獲物を運ぶ社会的な行動とか，集まって巣を形成しているところとかも，なんか似ている。　もちろん，ヒトの方がより「高等」なので，違いもある。　グンタイアリは，生き物を根絶やしにするが，ジャングルや植物そのものを破壊したりはしない。　むしろ，生物を根絶やしにするグンタイアリの存在を込みにして，そのジャングルの生態系は成立している。グンタイアリがいないと他の動物が増えすぎてしまって，ジャングル全体の生態系が崩れてしまうらしい。　ヒトはどうか？　動物や昆虫どころか，ジャングルや森そのものから消滅させる。　ヒト，おそるべしである。　でも，ヒトがいなくなっても，地球の生態系は崩れなさそうだなと思った。　「全地球規模の不幸中の幸い」というものがあるとしたら，このことに違いない。