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テーマ:ミステリはお好き?(1490)
カテゴリ:感想(本・漫画)
1994年に発刊された、本邦初のクトゥルー神話アンソロジーの文庫化…だそうです。初版時には朝松健氏の作品も一編収められていたらしいですが、版権上の都合で本書では削られてしまっているのが残念。
・「曇天の穴」 佐野史郎 割と短めでスルスルと流れのよいせいか、なんとも狐につままれたような読後感。チャンチャン、と最後に付け足したくなるような、そんな感じ。 冒頭で出てくるグロテスクな「兎」を追っかけて「穴」に向かう所からして、モチーフは「不思議の国のアリス」…なのかな。嫌なアリスだけど。 さりげにランドルフ・カーターさんが出てきてたり。 ・「蔭洲升を覆う影」 小中千昭 1992年にTBSで放映された同名のTVドラマの脚本を、脚本家自ら小説にしたものらしいけど、残念ながらTVドラマの方は見たことがありません。…まだ小さかった頃だし。 お話的には書いて字の如くラヴやん御大の「インスマンスを覆う影」の本歌取り。 激しく不味そうな煮魚定食が面白い。映像で見たかったな。 ・「邪教の神」 高木彬光 「刺青殺人事件」などで有名な作者による、クトゥルー(作中では「チュールー」)をモチーフにしたガチガチの本格推理小説…でいいのかな、神津恭介も出てくるし、実際に起きた殺人事件に関しては普通に論理的な解決を見てるし。 とりあえず、クトゥルーの写し身を邪険に扱った人にはバチが当たるし、持ってるだけでもろくな事にならないのは当たり前なのです。 ・「銀の弾丸」 山田正紀 凄いオチだ…。確かにこれは、ある意味でクトゥルー神話体系そのものを崩壊させる、禁じ手だよなあ。 「HPL協会」というガジェットはかなり好み。この世界観でこの秘密結社(?)のお話がもっと読みたいなぁ。いや、皮肉ではなくてね。 ものごっつうダイナミックな暗殺計画と、実際の「始末」の顛末の落差は…これは、笑う所なんだよね? ・「出づるもの」 菊池秀行 あ、こういう話は好み。短いけれどスッキリした感じ。いつの時代でも、一番恐ろしいものは「そこ」に存在してるんだけど…でも、あの状況で「笑え」ってのはいくらなんでも無理難題なのではないかと。 ・「地の底の哄笑」 友成純一 あう、スプラッタ…。話自体は面白かったけど、グロ系描写はちょっと駄目…。 親戚達もヤな奴らだけど、本当に核兵器よりも危険なものを蔵の中に無造作に仕舞ってた亡父は更にイヤだ。 …ついでに何の関係もないはずなのに、必要以上に入れ込んでとんでもない事態を引き起こした語り手も。 ・「ラヴクラフトに魅せられて」 菊池秀行・佐野史郎 菊池・佐野両氏による、ラヴクラフト&クトゥルー神話対談。…佐野史郎がリポートする、ラヴクラフト作品系ドキュメンタリー番組は見てみたいなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.08.15 18:56:02
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