2006/08/15(火)17:00
「父の志引き継ぐ」
安倍晋三官房長官は8月12日午前、地元・山口県下関市の「海峡メッセ下関」で開かれた後援会など主催の支援集会で「しっかりと志を持って頑張っていきたい。9月の早い時期にはこの志、思いをしっかりと国民に説明したい」と明言、来月の自民党総裁選への出馬を事実上表明した。安倍氏は来月1日に正式に出馬会見を行い、社会的な格差を固定しないための「再チャレンジ支援策」などを盛り込んだ政権構想を発表する。
総裁選は安倍氏と先月27日に出馬表明した谷垣禎一財務相、今月21日に表明予定の麻生太郎外相の三つどもえの構図となる公算。若手からベテランまで派閥横断的に支持を集める安倍氏の独走状態で、来月8日の告示を控えた地元集会は「安倍首相」誕生への地元の期待を反映する「総決起大会」となった。
支援集会には支持者ら約3000人が出席。安倍氏は「私たち戦後世代が責任を担っていく。そういう気概を持つ時がやってきた。戦前・戦中の鍛えられた皆様や、熱意にあふれる若い人たちとともに、国づくりに大きく一歩踏み出していかなければいけない」と政権獲得への決意を表明。さらに「我々が進めてきた改革は決して間違っていない。改革の炎は絶やしてはいけない。たいまつは受け継いでいかないといけない」と小泉首相が進めてきた構造改革路線の継承を強調する一方で、再チャレンジ支援策推進を訴えた。
安倍氏は、幕末の思想家、吉田松陰の言葉を引用し「志がしっかりしていれば気力がついてくる」と述べた。さらに「13年前(の総選挙で)初当選した際、(首相の座を目前にして病を得て他界した)父(安倍晋太郎元官房長官)の志を受け継ぐと宣言した。その志をもってがんばっていきたい」と語った。
伊藤昭男後援会長は「長年の念願の『安倍晋三総理』。長州8人目の総理実現に向け、機は熟した」とあいさつ、安倍政権実現を目指した決議も行われた。
江島潔下関市長が「皆さんも私も心の中は『総理にする会』。小泉首相が下関に来られたのは、お分かりですよね」と呼び掛けると大きな拍手。林芳正参院議員(山口)は「この次は、総理になって帰還される」と会場を沸かせた。
安倍氏が登壇すると会場の熱気は最高潮。「戦後世代が責任を持って担っていく時がきた」と政権への強い意志を表明し、支持者に応えた。安倍氏は昭恵夫人、母の洋子さんらとホール出口に立ち、約四十分かけて一人一人と握手した。
安倍氏は午後には山口県長門市での後援会会合で、幕末の思想家・吉田松陰の言葉を引用し、「士たる者、その志立たざるべからず。それ志ある所、気もまた従う」と、自民党総裁選への意気込みを語った。安倍氏は、この言葉について「侍はしっかりと志を持たないといけない。そして、志がしっかり定まっていれば、やる気も後からついてくるという意味」と説明。「この長州は7人の首相を生み、日本のかじ取りを担ってきた。わたしも伝統ある長州出身の政治家として、命懸けで頑張っていく決意だ」と強調した。
安倍氏の表明を受け、安倍氏支持の中堅・若手議員らが18日に選対本部を事実上発足させ、政権構想作りも本格化する。
安倍氏は来月1日の政権構想発表と同時に、小泉首相同様、森派からの離脱も表明する。政権構想は再チャレンジ支援策、憲法改正、教育基本法改正のほか、靖国問題でこじれる中国との関係で政治問題を経済問題に波及させない「政経分離の原則」を確認することなども盛り込む方針。