日本と韓国の近未来小説「時のそよかぜ」第18話
2025年6月13日 PM9時 大阪・北新地 韓国クラブ「ファンジニ」「小村さん、雰囲気で入っちゃいましたが・・」「交渉したんだから大丈夫ですよ、いいお店のようですね」 このクラブ、女の子が20人以上在籍するかなりの大きさのお店だ、ファンジニと言う名前も李王朝時代の一番有名なキーセンの名前だし、美貌と教養を兼ね備えたファンジニにあやかって名づけたそうである。「ところで面白い話というのはね、君島さん」「はいはい、なんですか?」「私の娘が今ソウルにいるでしょ、雑誌の記者やっていて今の記事のテーマがソウルに住んでいる日本人の生活についてなんです」「面白そうなテーマですね」「そしたらね、ソウルの大学のメディア・プロディユース学科の講師と会ったらしいのですが、誰だと思います?」「誰ですか?知ってる人?」「日本人女性です」「う~ん、誰だろう?」「三沢さんです」「三沢さん!懐かしい名前ですね」「小村さんの同級生の・・・そういえば三沢さんと知り合った頃はテレビ局のプロディユーサーをやっていらっしゃいましたよね」「そうです、小学校の同級生の三沢さんと再会したのも君島さんの知り合いだったという偶然でしたが、今回も娘がたまたま取材に行って名刺交換して、取材の後三沢さんの方から、あなた田舎はどこ?・・・という話から私の娘という事がわかり三沢さんから連絡が来たんです」「へぇ~またすごい偶然ですね」「でね、次回訪韓時に会う事になっているんですよ」「いいですね~私も一緒にお会いしていいんですか?」「当たり前ですよ、三沢さんも楽しみにしていらっしゃいました」「懐かしいなぁ~もう15年も前ですもんね、一緒に良く呑んだのは」「じゃ連絡しておきます、いつがいいですか?」「三沢さんと会うなら、やっぱりお酒ははずせませんね、着いた日の夜28日はどうでしょう?」「わかりました、調整してみましょう」「三沢さんもとうとう韓国で仕事をするようになりましたか・・それも大学の先生ですか・・」「テレビ番組の構成技術は日本のほうが進んでいる部分がありますからね、三沢さんの経験が活かせる仕事でしょう」「あの時代の私の友人は韓国にまだ関わっている人達が多いですね」「そうですよ、一番深く関わっていた君島さんが一番早く韓国から離れたのですよ」「そうでしたっけねぇ~まあ大きな事件がありましたから・・・」「あの詐欺事件はひどかったですね」「詐欺だけじゃないですよ、あれがトドメになりましたが、竹島問題で相当ゴチャゴチャしていましたから・・・本来民間の仕事に竹島問題を持ち込むべきではないのですが、韓国の人は一旦ナショナリズムに火がつくと、理性なんて吹っ飛んじゃいましたから、あの頃は・・・」「あの頃も”韓流”なんて言って、民間交流は進んできていましたが、裏ではいろいろあったみたいですね、君島さんも苦労してましたよね」「そうですね~いろいろありましたが、それでも韓国を嫌いになりきれなかったですね」「いまは竹島も共同管理区域になりましたし、時代が変わったということでしょうか?」「韓国政府が今までの反日教育は間違いであったと認めて、反日施設を撤去したりした5年程前が、ひとつの方向転換期でしょうね」「あの時も韓国内では相当な反対運動があったでしょ、デモもすごかったじゃないですか」「アメリカの公文書館に保管されていた書類があったでしょう、あれほどの証拠が出てきたら、反日論者も間違いだと認めざるを得なかったんでしょう、それでもアメリカの公文書が日本が捏造したと言っていた韓国人もいましたけどね」「悲しい過去の歴史ですね」「今では北朝鮮も韓国になって、いつでもピョンヤンにもいける時代です。いい時代になってきましたよ」「今度行く予定の38度線にある自然公園は希少植物や野生動物の楽園みたいですよね、天然のサファリパークみたいな感じでしょう?」「行くのが本当に楽しみですね」「これを機会にまた君島さん、韓国にはまるのではないですか?」「ハハハ、可能性は大いにあります」「今度はいい付き合いを続けたいですよ韓国と」「じゃ、そろそろ帰りましょうか、小村さん、次回は韓国で!」「はい、金浦空港で」 この後、ほろ酔い気分でお店をあとにした。 君島にとって大阪は縁の深い街で、若い頃大阪南部の町に10年間ほど住んでいたことがあった。 北新地もなじみの深い場所である。 君島は郷愁の思いを胸にホテルに帰った。 今回の韓国訪問が、君島にとって、またチェジョンチョルや小村にとって、人生の大きなターニングポイントになろうとは誰も知る由もなかった。つづく