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イタリア映画の巨匠、『木靴の木』『聖なる酔っぱらいの伝説』のエルマンノ・オンミ監督作品、監督最後の長編劇映画となるというだけあって、魅力的な作品でした。
病める時代に贈る、希望への道標 人生の豊かさの意味を問う。そんなキャッチフレーズを眼にしました。 ポー川のひかり この夏のカトリック推奨映画というのにひっかかっていて、 護教的色彩が強い映画なのかもと思っていたのですが、違っていました。 むしろ、よくこの映画を推薦映画としたなあと感心。 音や音楽が印象的に使われています。開発や都会のうるささが重機やモーターボート、オートバイの音で表現され、ポー川のゆったりとした風景にはアコーディオン、「わすれな草」のメロディーが響いています。 未開発の山奥での仙人のような暮らしではなく、人と自然がゆったりと共存する田舎の風景です。 開発が進むと都会に飲み込まれそうな村です。 国際的名声も得ている若い宗教哲学教授は、夏休み前の最後の授業で学生たちにヤスパースの言葉を挨拶代わりに残し、100本の釘で本を床に打ち付け、失踪してしまいます。 「我々の時代は精神性が利益に置き換えられ、もうけることが全てになった。人生そのものが虚構であり、生きる喜びも偽りだ。芸術も偽りである。純粋性が失われた時代には、我々の実存を解明するのは狂気なのか?」 ポー川流域の廃屋に住み着いた教授。不法に住み着いた村人たちの助けを借りて廃屋に屋根をふき、ドアをとりつけます。村人とワインを飲み、ダンスを楽しむ教授。容貌からキリストさんとあだ名され「ワインの奇跡の話」を村人にせがまれ話をします。 教授が優しく語る聖書の話は村人の心にしみいります。 夜には「放蕩息子の話」をしてほしいと訪れる村人。 生涯人よりも本を友とし、大学図書室の本と暮らす司教とは激しく対立します。 釘付けにされた美しい装飾本が意味するものは、何なのでしょう。 原題は「100本の釘」。 和訳の『ポー川のひかり」の方が映画とぴったりしているように感じます。 プログラム(700円)はお勧めです。映画紹介、監督他7名のエッセイ、風景、登場人物の表情、心理のト書きもついた採録シナリオが載っています。読んでいると映画の各シーンがよみがえってきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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