おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は’高齢糖尿病患者では食べなさ過ぎにも注意?’という報告です。
高齢の糖尿病患者では「食べ過ぎ」だけでなく「食べなさ過ぎ」が死亡リスクの上昇と関連しているとの報告が医学雑誌に掲載された。東京都健康長寿医療センターの研究グループが「J-EDIT研究」のデータを解析した結果、明らかになった。J -EDIT研究は65歳以上の高齢糖尿病患者への治療介入効果を検証した多施設共同研究。今回はこのJ -EDIT研究登録者のうち、食事摂取に関する記録がある患者756人を対象とした。アンケートの回答から推定した摂取エネルギー量を体重当たりに換算した値で全体を四分位に分け、6年間前向きに追跡し全死因による死亡率との関連を検討した。
対象者の摂取エネルギー量は1,397~2,086kcalの範囲に広がり、最も多い第4四分位群(2,086±361kcal)は最も少ない第1四分位群(1,397±223kcal)の約1.5倍摂取していた。実測体重1kg当たりの摂取エネルギー量は、第1四分位群から順に、24.85kcal/kg以下、24.86~29.73kcal/kg、29.74~34.78kcal/kg、34.79kcal/kg以上だった。なお、4つの群の指示エネルギー量の平均は1,458~1,490kcalの限られた範囲にあった。
追跡期間中に59人が死亡した。年齢、性別、BMI、HbA1c、収縮期血圧、LDL-C、eGFR、身体活動量、虚血性心疾患や脳卒中の既往、低血糖の頻度、および蛋白質摂取量で調整の上、死亡リスクを検討すると、摂取エネルギー量が最も少ない群と最も多い群ともに死亡リスクが上昇するU字型の関係が認められた。最近まで指示エネルギー量算出の基準とされてきた標準体重〔身長(m)×身長(m)×22〕当たりの摂取エネルギー量で検討した場合も、同様にU字型の関係が認められた。ただしリスクが最小の第3四分位群の摂取エネルギー量は31.45~36.42kcal/kgであり、これは身体活動強度「中等度」の場合に用いる係数に近いことから、身体活動強度「軽度」の係数で摂取エネルギー量を設定すると、多くの高齢糖尿病患者に摂取量不足を招くと考えられた。
さらに、このような摂取エネルギー量と死亡リスクの関係は、炭水化物、脂肪、食物繊維の摂取量で調整しても保たれていた。よって高齢の糖尿病患者では、特定の栄養素の摂取量の多寡とは無関係に、十分なエネルギー摂取を確保することが重要であることがわかった。*HealthDay Newsの記事を抜粋し、一部改変
日本でも高齢の糖尿病患者さんが増えてきていますが、上述の様にあまり過度なカロリー制限はかえって予後が悪くなる可能性がある様です。私自身も高齢の患者さんにはあまりカロリー制限のことは強く勧めず、体重が増加しない程度の食事にする様にはお話しています。