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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年10月26日
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アシュタールの部屋を辞した後、二人は控え室に入って打ち合わせをすませた。
警備状況の報告にやってきたエル・フィンが、部屋内にあふれる光に圧倒されて目をしばたたく。

「どんな感じだい?」
「現在賓客を含め4割の入場といったところです。不審者およびトラブルはなし。ステーションの入口で揉めそうになったのは共有エリアの警備班によって穏便におさめられました」

統括として感覚でも把握はしているが、今日は細かくチェックしている余裕がない。尋ねると改めて報告がなされる。

「エネルギーバランスも現在は良好です。問題はうまくグリッドのほうに流れて形成されてくれるか、その点です」
「それは技術部のほうでうまくやるだろう」
「私もそう思います」
「もし、私と連絡が取れない場合はエル・フィンが判断して行動してくれて構わない。任せるよ」
「わかりました。ではまた連絡します」

一礼して退出しようとする部下に、トールは声をかけた。

「その姿で会ったかい?」

主語が抜けていたが、誰のことかはすぐにわかったようだ。エル・フィンも、今日はアシュタール軍の礼装を身につけていた。トールの着ているものとデザインはほぼ一緒で、銀糸の縫い取りがされている。

「いいえ、お会いしておりませんが?」
「そう」

閉じられたドアを見送って、トールは内心ため息をついた。
やれやれ、先方は見たいと思っているだろうに。気づかないのかあえて避けているのか……おそらく、会場警備で頭がいっぱいなのだろうが。
だがせっかくの式典がもうすぐ始まる。
トールは分身のひとりを、そっと天使エリア上層へと向かわせた。


エル・フィンの後にやってきたのはデセルとマリアだった。
技術主任も同じく銀の縫い取りのついた礼装、マリアは一見白ながら虹色の光沢のある生地で、しなやかに裾の広がる巫女の盛装をしている。
長い銀髪はおろしているが、耳と胸元には七夕にもらったペリドットが若草色にきらめいていた。

彼らが技術的な話をしている間、緑の少女はしばらく待っていた。
二人と別れた後、トールに暗い会場内の足場へと連れられてゆく。真っ暗でそれほど広くはなく、どうやら会場を見渡すタワーのような場所らしい。
その頃、下の娘も裏方のグリッド補修班として、暗い足場にほかの人員やドラゴンたちとともに待機させられていた。


会場に客が満ちてくる。雑多なエネルギーを、技術班が構築したグリッド網が広く支えはじめた。
エル・フィンは警備本部に詰めながら、矢継早に指示を出していた。その間も会場のグリッド網のチェックを欠かさない。

式典出演者、賓客、アセンデッドマスター達、それぞれの担当から、すべて滞りなく入場したという報告が届く。
会場にいく手はずになっていたエル・フィンを、同じく警備本部に詰めていたセラフィトが呼び止めた。

「エル・フィン、お前本当に分身できないのか?」

怪訝な顔をして振り返ると、共有エリア警備主任は続けた。

「お前のエネルギーキャパシティを見ている限り、そろそろ常時は無理でも一時的に、そうだな、ひとつの催しの間くらいなら、分身できるはずなんだがな」
「あ、俺も思った。そもそも下とわずかな時間なら同時存在できるんだ。出来ないはずがない」

相棒の竜であるシェーンにも言われ、金髪の青年に困惑が広がる。

「だとしても、どうしたらよいかいまいち把握しかねております」
「ふむ、ちょっと来い」

セラフィトは青年を呼び寄せると、いきなり肩をつかんで額を合わせた。
同時に、必要な知識というか感覚がすべてエル・フィンの中に流れ込んでくる。

「これで分かっただろう? 必要ならそれで動け」

言われてはっとする。ほんの数秒のことだったようだが、あまりの情報量に目眩がした。
だが、これで自分の中の分身に関する記憶の封印も解かれ、さらに効率的なやり方まで知ることとなった。

「ありがとうございます」

エル・フィンは、まだふらつく頭を軽く振って会場へと移動した。



やがて日蝕はすすみ、太陽は半月から三日月のような細さになった。

歌が始まる。
緑の姫君と呼ばれている少女の歌。
 
静まり返った会場に、賛美歌のようなそうでないような、不思議な澄んだ歌声が広がる。

エル・フィンは思わず意識を奪われ、聞き入りそうになった。だが、つながった会場のグリッド網が意識をつないだ。

思った以上に歌のエネルギーが大きい。
グリッド網が軋む。
エネルギーはどこも滞らず流れて、この会場から外へと流れて行っている。ただ流量が多い。

エル・フィンがシェーンと心をあわせ、その上で会場グリッド網とシンクロして流れをチェックしている間に、静かなハープの伴奏が始まっていた。
奏でているのはマリアだ。
広い会場の中、ステージとは離れた壁よりの場所に大きなハープが据えてあり、繊細な白い指が弦の上をやわらかく踊っていた。
その傍には、守護の騎士のように立つ長身がある。

ハープの音色は少女の歌声を乗せつつみ、まったく勢いを減殺させずに支えて会場外へと誘導してゆく。
いつしか膨大なエネルギーが生まれようとしていた。

そしてエル・フィンは気づいた。
軋んでいる、と感じたのは、グリッド網そのものも歌に共鳴して音を奏でているということに。
そうすることによってエネルギーの流量を増やしているようだった。

その技術に舌を巻く。
技術部はこのことも考慮に入れてこのエネルギー網を構築したらしく、さすがとしか言いようがない。

緑の少女は、セレモニー会場を見下ろす高い足場で歌っていた。
下のほうに会場の光とたくさん人が集ってるらしいことが見えるが、会場の様子までは細かくはわからない。
リハーサルのときは、トールの構築したラインにつなげて歌ったが、今は彼のフィールドそのものの中で歌っていた。他にも大勢の人が同じようにあちこちに立って歌っている。下では楽器を演奏している人たちがいるらしい。

グリッドと結び合わされたラインの中でエネルギーが共振してゆき、彼女はだんだん自分がどこで歌っているのかわからなくなってきた。

少女の歌。
マリアのハープと楽団の伴奏。
会場の人々たちの合唱。

すべてが共振し、光のグリッドを揺らし響かせてゆく。
細密かつ大胆に構築された光の糸が、蝕の暗闇をぬって広がりはためき、地球にそなわる大きな糸へと繋がれてゆく。

エル・フィンは手元にある、ステーション全体を見る小さな機器に目を落とした。他の会場で行われている音のバイブレーションも同時に高まり、地球をめぐるグリッド網に共鳴し、流れていっていることを示している。

少女の下の娘を含む、多くの人員を抱える地球グリッド部門では、皆が駆り出され、狭い足場で裏方仕事をしていることを彼は知っていた。
セレモニーも見えないし足場は真っ暗で狭いし、と彼女たちには不評であろうが、これだけの膨大なエネルギーが流れるのだ、万が一周辺のグリッドが切れたら、即座に修復という手はずを整えておくのは当然だった。

高まるエネルギーの中、アシュタールのゆったりとした厳かな声がつむがれた。

「会場にお集まりのすべての方々に申し上げる。どうか地球のため、地球にかかわるあらゆる存在のために、祈りをささげてくださいますように」

その言葉の余韻も消え去らぬうち、引き寄せられたかのように、会場全体のエネルギーが強烈な勢いで共振しはじめた。
人々の祈りが歌となってどこまでも空間を満たしてゆく。

合唱の中、ひときわ高く高く澄んだ歌声が響いたとき、蝕が最大をむかえた。
世界が漆黒の暗闇につつまれる。

太陽と月の結婚。

日と月が完全にその姿を重ね合わせたとき、流れ響く歌も最高潮に達した。
人々のハートチャクラが美しい歌に共鳴し、開かれてそれぞれの音を響かせる。
会場にいた全員は、全身がなんとも形容しがたい、大きく暖かなエネルギーに包まれていくのを感じた。

たくさんいる天使やマスター達は、個の肉体に見える大きさをはるかに超えて、存在そのものが巨大化しているように見える。

美しい歌が胸に響く。

緑の少女は伸びのある大きな声で歌いながら、満ちてくるハートの温かさを感じていた。
背後からトールの歌声が聞こえる。

自分の声、彼の声、みんなの声。
すべて重なり混ざり合って、ひとつの大きな響きになる。

ひとつ、だと少女は思った。

ひとつだ。
みんなひとつ。

そこにあるのはただ、響きあいゆらめきあう波紋のような愛しさだった。

自分とトールは同じ。
マリアと、デセルと、エル・フィンと同じ。
大天使やマスター達と同じ。
会場、そして地上と地下にいるすべての人々と同じ。
全員を支えてくれている地球と同じ。

それぞれがそれぞれの音を持ち、同じ歌を響かせることのなんという美しさ。

ひとりとして同じ音を響かせる者はいない。
すべてが欠けようのないピースのひとつであり、壮大なタペストリーの一部分だった。

この気持ちをなんと表現したらいいのだろう。

泣きたいような愛しさにかられて、少女はいっそう声を強めた。


















*************

>>【銀の月のものがたり】 目次 1 ・ 目次 2 ・ 目次 3

>>登場人物紹介(随時更新)


銀の月のものがたり、ついに第100話!
書き始めた当初は、ここまで続くとは思ってなかったですが 笑
・・・でも、まだまだ続きそうな勢いです。
読んでくださる皆様、ほんとうにありがとうございます♪



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最終更新日  2009年10月26日 10時24分52秒
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