冥途の飛脚
また文楽の話題です。「冥途の飛脚」を見てまいりました。有名な近松門左衛門の作品です。いくつか改作のバリエーションがあります。 最初は飛脚屋亀屋の店先。お金を届けるのを業としていますが、支払っているはずのつけの請求が来たり、為替が届かないと督促が来たり、大きな農家の息子で縁あって養子となった忠兵衛の様子が最近おかしいと、養母が不審がります。ちり紙を2,3枚いっぺんに使って洟をかむようになった、どのくらい持って出かけたが帰ったときに残っていないなどとしっかりチェックしているあたりに、昔の人のつましい生活がうかがえます。紙も貴重なものだったのでしょう。 実は忠兵衛は遊女梅川に入れあげて、他の人から身受け話が出ているのを止めようとお金を使いこんでいたのでした。帰ってきても敷居が高く、下女から様子を聞こうと気のあるふりをするところがこっけいです。それにこの人の身の破滅になっていくいい加減さが表れているようでもあります。 八右衛門は最初の版では友人として忠兵衛を心配しているのかと思っていましたが、どうも侍から預かったお金の封印を切らせるようにわざとそそのかしているようですね。 忠兵衛を心配する梅川のしおらしさといじらしさに目頭が熱くなりました。 ふたりが逃亡して行く新口村の場面は、歌舞伎では梅川は黒地に裾模様の着物ですが、文楽は町人の妻らしい小さな柄の地味な小紋を着ています。前に見たときもそうでしたかしら?忠兵衛の実父は登場しないまま幕になります。 太棹三味線の音を間近で聞くのはやはり楽しいものです。 終演後半蔵門駅近くのイタリアンのお店で遅いランチをとりました。混んでいて入るのにちょっと待ちました。ワインが進みそうな味付けで、ワインなしで食べるにはちょっと濃い目でした。パンがとてもおいしいです。普通のマンションの一階にありますが、木の扉を開けるとなかなかよい雰囲気で、イタリア語、英語、ドイツ語も聞こえる店内でした。ランチはお手ごろ価格です。エリオ・ロカンダ・イタリアーナ