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カテゴリ:自作の絵、詩、物語
もっともそのときまだ私は、自分の未来が一本道になったことには気づいていなかった。
選択可能な未来は無数に現在から枝分かれしており、シオンと再会する道も、二度と会わない道も、自分(とシオン)が自由に選べるつもりでいた。 そして私は最初から、2度と会わない道を選択するつもりだった。 だから好奇心の向くまま、それを隠そうとすることもなく、あれこれとシオンに尋ねたのだった。 シオンにとっては、その態度は、傍若無人に映ったかもしれない。しかし、訳もなくそういう態度 をとったわけではなかった。会うまでに数回、やりとりしていたメールから受けた印象では、シオ ンは礼儀知らずで自分勝手な「ヘンなやつ」に感じられたのだ。先にも書いたが、私はその変わり ぶりを見たくなって、写真をメールで添付せず、手渡しすることにしたのだった。 去年の8月24日の日記にアップしてあった写真を下さい。 元はどれくらいの画素数ですか? メールに添付して送ってくれませんか? 初めてシオンから受け取ったメールの文面、私とシオンのファースト・コンタクトは、こんなふう だった。この単刀直入な切り出し方は、私の好奇心を十二分に刺激した。それさえも運命という名 の必然だったというのだろうか? 望まれるままメールで送ることも、無視しておくこともできたのに、私はわざわざ会うことを要求 した。そしてあのとき、名曲喫茶Mでシオンと話すうちに、彼女の繊細さ、育ちのよさ、無垢な心 に触れるうちに、自分の態度が少しずつ変わっていくのに気づいていた。 そうなってくると逆に不思議に思えるのは、そっけないメールの文面のほうだった。会った後にも メールは何度かもらっているが、会う以前ほどそっけない文面のメールは1つもなかった。シオン は人見知りするのだろうか? 彼女ほど特異な考えを持っていたなら、そうであっても不思議はな いのだが。 「この写真にも、化け物が見えるのかい?」 「いいえ。見えないです。。今のところは、ですけど。。」 「やがて見えるかもしれないのか?」 「ええ。。写真を食べる化け物がいるのです」 「だとしたら、化け物の存在を物の量の変化として、視覚で捉えることができるってわけだな」 「それが。。写真そのものは、食べられてもなくならないんです。たぶん写っているものを食べち ゃうんだと思うんです。食べられると、写ってるものが変わっちゃうんです。。」 「そしてそれは。。キミにしか見えないのか?」 「ええ。。今はそうです。でも、私以外にも、きっと見えると思うんです。化け物の存在を信じて くれさえすれば、見えると思います。だから実は、せびさん、あなたには一番可能性があるんです よ。化け物が見える可能性が。。」 「たしかにおれは信じてるよ。キミには見えるということに関しては、信じている」 「微妙な言い方ですね」 そう言ってシオンは笑ったから、私は訂正した。 「こういうのは正確な言い方っていうんだ。言っておくが、信じているからといって、見えるとは 限らない。見えなきゃ、キミの<生まれてからずっと>が否定されることになる。なぜそんなリス クを犯す気になったのか、おれには理解できないな。誰にも打ち明けないでいれば、それは永遠に キミひとりの真実のままだったのに?」 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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「こういうのは正確な言い方っていうんだ。言っておくが、信じているからといって、見えるとは
限らない。見えなきゃ、キミの<生まれてからずっと>が否定されることになる。なぜそんなリス クを犯す気になったのか、おれには理解できないな。誰にも打ち明けないでいれば、それは永遠に キミひとりの真実のままだったのに?」 ここのセリフ好きです。 (2006.07.25 23:19:57)
詩音さん
>ここのセリフ好きです。 ----- いつもありがとう^^ 最近、仕事が忙しくて、忙しくなってからの話の展開、やっぱちょっとへんなんだけど、最後までがんばって書きますね^^ (2006.07.26 23:45:23) |
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