ナイジェリア内戦
ナイジェリアはアフリカ有数の国と認識されている。OPECの構成国でもあり、海岸地帯には、膨大な量の石油埋蔵量を誇る。人口は1億5千万人あり、250の民族と500の言語を持つという。北側は古くからイスラム世界に組み込まれていた。南部はキリスト教徒が多い。教育や公的な機関では、英語を標準化している。英国の植民地だった時代が長かったからだろう。隣の村に言葉が通じないのでは、英語が標準化されるのも無理はない。多民族と対立する二つの宗教、言語や主観の違いに加えて、石油産業の発達で貧富の格差が生まれている。官僚や石油会社の関係者は先進国並みの豊かな暮らしをしているのに、国民の半分は貧困層というギャップがある。 政策に不満を持つイスラム原理主義者は、ナイジェリア全土にイスラム法を公布することを求めて武器を取る。当然、南部のキリスト教徒たちは反発して宗教対立が続いている。250に民族を統合することは難しく、ビアフラ戦争が起きたのも、根底に民族間の対立と抗争がある。政権を握った権力者の属する部族がすべての利益を独占する。他の地域には配分されないので、中央政権を握ることが価値を持つ。軍事力を握る軍部が独裁政治を続けてきたのも、メジャーなどの石油利権と深い関係があるだろう。石油輸入国は供給が安定してさえいれば、ナイジェリアの政治体制にはこだわらなかった。それがナイジェリアのいびつな経済を生み出した。 石油産出地帯の住民は放置されてきた。広大な石油埋蔵地帯には貧しい人々が暮らし、何の恵みをもたらさない石油生産施設にゲリラ攻撃を仕掛けるようになった。貧しいアフリカの中に、世界有数の石油施設が並んでいる光景は異常だろう。住民の福祉を省みなかった中央政府に対する反発は強く、政府は武装ゲリラに手を焼いている。石油地帯で紛争が起きるたびに、それを口実にして原油相場は乱高下する。 ナイジェリアに解決策はない。軍人たちは軍事力で政権を維持してきたが、選挙と民主主義を受け入れてみると、内紛の危険がむしろ高まっている。石油の利益を基にして、工業化や農業の育成を行うべきだったのに、多くの貧しい村は放置されてきた。石油収入で財政のすべてをまかなうという政策は破綻している。石油パイプラインを破壊するゲリラ活動が増加し、住民たちは石油を安く手に入れるためにバケツを手に持ってパイプラインを破壊するという。石油盗賊を抑えるために、政府軍は周囲の村に無慈悲な銃撃を繰り返す。民族と宗教と石油の利権が複雑に絡んだナイジェリアの内乱の根は、当分消えることはない。