パディントン・セントラル 歩行者空間のデザイン
パディントンといえばくまのパディントンで有名なパディントンベアーがブラウン一家に遭遇した駅があるところですが、この付近にはリトル・ヴェニスと呼ばれるエリアがあり沢山のナローボートが停泊しています。ナローボートには人が暮らしていたり本屋やカフェ、バーに改修されていたりするため、いかにもイギリスらしい風景を楽しむことができます。リトル・ヴェニスから数分歩いた場所にはクリフトン・ナーセリーと言うガーデニング専門店があります。店内には多年草や球根をはじめとして多くの草木類やテラコッタ・ポット、様々なデコレーション、温室植物のブースやカフェがあり訪れた人々が思い思いに楽しんでいける場所です。何か質問があればサルバドール・ダリ並みの巻きひげのおじさんが植物のあれこれを色々と教えてくれます。今回紹介するプロジェクトは落ち着いた雰囲気のあるカナル周辺の住宅地と駅付近のハイストリートの喧騒の境界線上にあると言っていいと思います。パディントン駅からリージェンツ・カナル方面の出口を出てリトル・ヴェニスの方へ少し進んでいくとレストランなどが入っている建物と左へ逸れる道が見えてきます。パディントン・セントラルはオフィスビルの間にある公共空間の改修プロジェクトです。今のオフィスで働き始めた頃プレゼンテーションボードの作成を手伝ったことがありますが、オフィスビルの間の細長い街路空間をより歩行者にとって親しみやすい空間にするために、既存のサービスアクセス用の車道を縮小し、より多くの植栽と良質の敷石を使った遊歩道、小規模のイベントに使えるポケットスペースが一体となった活気のある空間を作ることが狙いでした。オフィスビルの間に位置するため陰りがちで、既存の構造物上を改修するため重量制限もありますが、マウンドを使って樹木や植栽に必要な作土層の深さをつくりだしています。街路樹は半日陰に耐えるベチュラ・ナイグラ (Betula nigra) で、明るく爽やかな樹冠を持ち、やや茶色みがかった幹はフレーク状の樹皮で覆われておりユニークな外見です。敷石とプランターの境界を入り組ませて空間的な一体感を出しており、所々に配置されたベンチでは植栽に囲まれながらリラックスして過ごすことができます。以前は車道と金属プランターに植えられた生垣しかない空間でしたが、多くの植栽を加え、昼休みには外に出て座ってランチや会話を楽しんだりできるポケットスペースへと生まれ変わりました。リトル・ヴェニスからの至近距離にバーやレストラン、ジムを備えているため今では平日休日問わず賑わう空間となっています。 EXPERIMENTAL GARDEN