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2018.11.14
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「…陛下は、あなた様のこの、美しい金色の髪に魅かれておいででした、まるで金の綿菓子のようだと」

「…わたがし?」

「…ハイオルトにはございませんか、蜜を煮溶かし固め、網のように幾重にも重ねたものです。細やかなものほど美しく、巧みな細工になりますと、金色の雲を集めたようなものが仕上がります」

「まあ…」

「…ずっと…触れてみたい、とお望みでした…」

 女官長はしょんぼりと呟いた。髪飾りを留め直してくれる。

 そう言えば、この女性の髪は赤茶色だわ、とシャルンは思い返し、切なくなる。

 好いた相手が愛おしく自分を見つめて触れてくれる喜びを、得られないだろうと思うのは辛くて寂しいことだ。

「あの夜、陛下はお休みになれませんでした」

 静かな声が最後のピンをそっと差し込む。

「望んだ女性が、犬の声を真似た瞬間、もう同じ部屋にはいられなかった、と」

「……」

「……できました。如何でしょうか」

 そっと手鏡を差し出され、見事に結い上げられた髪の毛と、背後から覗き込む女官長のうす赤くなった目の縁が写った。

「…ありがとう。素晴らしいわ」

「……あなた様が王妃になられたら、私は女官長を辞するつもりでおりました」

 くしゃくしゃと赤くなった鼻を中心に顔が歪む。

「でも、あなた様がギース様を傷つけたことを知って頂きたかったのです」

「……あなたは」

 シャルンは鏡の中に微笑む。

「勇気のある女性ですね」

「…え?」

「……大事な人のために戦うのですもの」

「……」

 女官長の頬を大粒の涙が零れ落ちる。

「私もきっと、陛下のためになら誰とだって戦うでしょう」

「…レダン王はお強い方です」

 苦笑が女官長に顔に広がる。

「お守りになる必要など、ないのでは?」

「さあどうでしょう」

 くすりとシャルンは笑う。

「百に一つ、万に一つ、私のこの細腕が陛下を庇う時があるのかもしれません」

 あるいはまた。

「え…?」

「いえ……なんでもありません。私は陛下が来られるまで、こちらで待っております」

 少し疲れたので休みたいと思います。

 告げると、カルミラは、お部屋の水差しだけ、とすぐに使えるように準備を済ませ、頭を下げて退室して行った。

「……」

 静かに閉ざされた部屋の中で一人、シャルンは考え込む。

 あるいはまた。

『……ご存知でしたのですね?』

 ギースの犬嫌いを知っていて、閨で無知を装って鳴き真似をした。

『でも、あなた様がギース様を傷つけたことを知って頂きたかったのです』

 シャルンは繰り返し、同じようなことをしてのけている。国のために、父のために。

 偽りの姿を見せ、仮面を被り、嫌われるために手を尽くし。

 そうして相手に婚儀を断られ、被害者の顔を装って、見舞いと労りを受け取って。

 きっと、傷つけてきたのだろう、幾人もの王を。

 ひょっとしたらこの先、レダンに見えてくるのはシャルンの狡さばかりなのではないか?

 あるいはまた。

 レダンはそんなシャルンをまだ、見ていないだけではないのか?

 だから、シャルンを愛おしんでくれているだけではないのか?

 ならば、諸国訪問の後に残るのは、シャルンへの嫌悪と疎ましさだけではないのか?

 そうしてシャルンは、今度こそ、本当に愛想をつかされてしまうのではないか?

「……」

 溢れそうになった涙を飲み下し、長椅子から立ち上がり、窓を開けてテラスに出る。

 夜気は冷たかった。

 ステルンはハイオルトよりも南にあるはずなのに、それでも風が鋭いと感じた。

「……どうしましょうか…?」

 誰へともなく問いかける。

「私……人に好かれる術を知りません」

 嫌われる方法なら熟知している。

 けれど、どうしたら好いてもらえるのか。愛し続けてもらえるのか。

 ぶる、と小さく震えた、と。

「…どうなさいましたか?」

 幼い声が響いて顔を上げた。



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Last updated  2018.11.14 09:07:45
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