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エタ-ナル・アイズ

『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー 3 〜花咲姫と奔流王〜』



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2021年08月21日
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 事件後、周一郎は朝倉家に戻り、滝は『俺の死んだ日』を書き上げた。

 危険な目にあったから、書けなくなるかも知れないから、と言うのではなく、戻ってから『高王ヒカル』の作品を読み直し、これはこれでありかも知れないと思ったからだ。

 周一郎やお由宇が本当のところどのような意図でどう関わっていたのか、滝にはよくわからない。小説にして起こったことを追いかけて行ってようやく、ああこう言う結末があったのかと気づくことも多い。

 それは滝が全てのことを見知っているのではなく、事件や物事の一方からだけしか見えていないからだ。

 ならば、事件を別の方向から眺めていた誰かもいるだろう。

 『高王ヒカル』はその『別の方向から眺めていた誰か』が書いた物語だ。事件をよりセンセーショナルに娯楽として楽しめるような視点で切り取られた光景。けれど、その中にも確かに、真実のかけらが含まれている物語。

 作家は物語を書く仕事だ。

 なぜ、書くのか。

 簡単なことではないか。

 何があったのかを知りたいのだ。

 そこで、何が、どのように起こり、誰が動き、何が変わり、何が変わらなかったのか。

 ちかっと目の前が光って、俺が今までやってきたことが何なのか、わかるような気がした。

 いつも体の中に音が鳴り響く。気持ちを苛立たせ不安にさせる警告音だ。

 その音をずっと聞いているのは不愉快だ。

 だから滝は歩き出す、警告音の方へ。その音が何なのか、知ろうとして。そして時には、その音が消えてくれないかと願いながら。

 そこに『厄介事』が待っている。

 滝の命を奪い、人生を傷つけ、周囲の大切な人をも巻き込む出来事が。

 それを知りながら、滝は近づいて行ってしまう、ただただ自分の『好奇心』を満たすために。

「……高野が怒るはずだよなあ……」

 溜息をついた。

 かけがえのない『坊っちゃま』を守り続けてきた高野にとって、周一郎を危険な場所に引き摺り込む滝は災厄でしかない。名画や絨毯や高価な茶器などを破損するのとは桁違いの悪行だ。

 それでも主人である周一郎が望むから、高野には止める術がない。腹立たしさを堪えながら滝に向かう事になる。

「だから…病気になったのかなあ」

 ちょっとしょんぼりした。

 高野が病を得てついに入院したと聞いたのは先日だ。少し前から体調が思わしくなく、岩渕を何とか育て上げてようやく休めると思ったのでしょうと周一郎は告げたが、この間のドタバタで全身疲労困憊したのではないか。

 見舞いに行った滝には穏やかに笑って接してくれたが、かけている迷惑を思うと申し訳なさが募った。

 滝は、多くの人間を『厄介事』に巻き込み、心配と迷惑を撒き散らしている。

 けれど止められないし、サイコロを振ってる上の奴もお役御免にする気はなさそうだ。

 だから精一杯感謝しようと思う、いつでも何でも、どんな事にでも、なるべく。

 誰かが書く物語は、俺が書き切れない部分を(本来ならば描き切っていなくてはならない部分を)違う視点で別の方向から書き込み補完してくれている。そしてまた、俺が書く物語も、誰かが何かの事情で書き切れなかった部分を、多少なりとも補完している。

 俺にはそこまでしか作家の才能がないし、今後もそれ以上伸びる余地があるとは思えない。

 そんなこんなを考えていた時、TVで囲碁の番組を見た。

 数多くの棋譜が残され、先人の足跡がくっきりついたその山を、同じように辿りながら、少しでも高く登ろうとすると語る棋士に、作家もまた似ていると思った。

 一番良いと思うものを目指し続けよう。

 それは山と積まれた作品群の路傍に転がる砂粒だろう。

 けれどその砂粒がある事で、『何が起こったのか』を知る手間が1つ省けるかも知れない。俺が辿った道筋を辿らずに済んで、より高みへ登る道を見つける作家がいるかもしれない。山の裾野が砂粒1つ広がり、砂粒1つ高く積めるのかも知れない。

 人はそうやって、始めたことを磨き上げてきたのかも知れない。

 ならば高野や周一郎やお由宇に守られ支えられてる俺が、多少の恩返しにものを書くのは、世界的にもあながち間違っていないのかも知れない。

 書き上げた『俺の死んだ日』を持って行くと、高野は微笑んで、良い出来です、と褒めてくれた。褒められたのに気を良くして、石路技に送った。

 返事はまだない。

 ピンポーン。

 柔らかいチャイムが鳴る。お由宇は留守だ。急ぎ足で玄関に向かう。

「お届け物です」

「はいはい、ハンコね」

「サインでいいです、ここ」

 運送会社の男は箱の上をひょいと示し、ボールペンを差し出す。

「滝、志郎さん、ですね」

「……?」

 俺の名前を確認する相手の口調に、ふと気になるものがあった。目深に被ったら帽子の下を覗き込む。今日は曇り空で日差しも強くない。なのに顔の半分が隠れるほどの被り方だ、まるで見られることを想定して隠しているように。

「そこで覗き込む? 相変わらず遠慮ないね」

「……鵲…?」

「で、そっちを呼ぶ。呆れました」

 帽子を少し押し上げ、顔を見せた男はにやりと笑った。

「運送会社に勤めてたのか!」

「そんなワケないでしょ」

 第一、運送会社にナイフの腕は必要ない。

 言い切られてどきりとする。

「…殺しに来た…のか?」

 瞬間、ああ『俺の死んだ日』を石路技に送っておいてよかったと安堵した。とりあえず1作分は保つだろうし、次回作までに誰か他に書ける奴を見つけられれば、『高王ヒカル』は何とかなる。編集やってるんだから、そういう相手と出くわす可能性も高いだろう。

 けれど鵲はあっさりいなした。

「まさかそんな」

「だよな」

 思わずにへらと笑い返す。

「そんな暇なことしないよな、俺を殺しても何のメリットもないし」

「デメリットしかないよ、僕はあなたの盾だしね」

「へ? たて?」

「そうそう、そのホタテ。美味しいよね!」

「ああ、ホタテな、うん美味しいな、え、荷物はホタテなのか? 誰から?」

「ああ酷い。なんて馬鹿だろう、困った」

 鵲が大きく深い溜息をついた。

「こんなのを守れなんて無理です嬋娟(チャンユエン)。僕が何をした?」

「ちょっと待て」

 よくわからないが、凄く罵倒されている気がして来た。

「お前は何をしに来たんだよ」

「見てわかるでしょう。荷物の配送。それ以外に何に見える? はいサイン」

「あ、うん……」

「ありがとうございまーす。ああそれから」

 言いたいことだけ言って荷物を俺に押し付けた鵲は、帽子をまた引き下げて、

「仕事は朝倉家の執事見習いです。高野さんが病んだので」

「へ?」

 呆気にとられる。

「執事が配送業者をするのか?」

「だーかーら」

 うんざりした顔で振り向く相手が、一瞬微かに眉を顰めて気がついた。

「知ってるだろうが、あそこは危ないぞ? まだ傷治ってないんだろう? 他の仕事の方がいいんじゃ」

「ダーーカーーラ」

 おもちゃのように虚ろな声で応じて、鵲は顔を歪めた。

「それでもあそこしかないんですって。しかも何で気づくか、怪我知らないでしょ?」

「あの時刺されてたんだろ? 人1人担いで無茶したろ?」

 あいつはどうした。

 それを口にする前に、鵲はくるりと背中を向けた。

「あなたは僕が死んだら悲しみます?」

 突然理解した。

 そうか、こいつも周一郎やお由宇側だ。俺の理解を越えてるのに、自分勝手に話して完結するタイプだ。なら、俺に言えることは1つ。

「俺がらみで死んで欲しくない」

「………はあああああああ」

 鵲は大きく深く、もう一度溜息をついた。

「わかりました。僕、嫌がらせのためにあなたを守って死にますね」

「はい??」

 いや、俺、死んで欲しくないって言ったよな? 俺がらみで死ぬなって伝えたよな? 

「嫌がらせ?? 俺が何かしたか?」

 鵲はじろりと肩越しに冷たい目を向けて唸った。

「人生を変えた」

****************

 今までの話は こちら  

 1950000ヒット、ありがとうございました。
 この作品はもう仕上がっており、掲載を待つだけですが、アップするたびに違和感はないか、読み直しながらあげています。
 今のところ、このラインで良いようです。
 となると、ラストには切れる絆があり、結ばれる絆があるわけだよなあ、と微かな溜息を漏らしてしまいます。
 『彼』のファンの方にお叱りを受けるだろうなあとか、『彼』のファンの方にはああ良かったと安堵してもらえるかも知れないなあとか、色々考えもするのですが、物語は私の手を離れているのは確かです。
 続編があるのか、これで最終なのか、それも私にはわかりません。
 そもそも、『そして別れの時』で、このシリーズは終わっていたはずなのですから。同人誌として発行した時点からでも約20年前の代物です。それが再度書き上げることになり、しかも登場人物の関係性が変わるとは、あの頃には想像もできなかったことでした。
 ようやく手放してやれたのかなと思います。

 最近になり、10000ヒットのキリが近づくと急激にヒットが上がるようになりました。どうなるのかなと楽しんでくださっている方、繰り返し覗きに来てくださっている方がおられるのだ、嬉しいなあと思います。
 後2話。
 1970000ヒットを持って、このお話は終了となります。
 今の展開で行くと、年末ぐらいでしょうか。
 それもまた、作品にふさわしい時節かもしれません。

 ご愛読、ありがとうございます。
 もう少し、お付き合いくださいませ。

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最終更新日  2021年08月25日 20時33分17秒
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