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2020.08.09
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「光栄ですな、聖女王(シグラトル)」

 ディオングはお構いなしに話を続け、右手首を引っ張る力を増した。踏ん張るユーノ、馬が耐えきれず、ずずっと蹄を泥土に滑らせる。

「さあ、いらっしゃいませ、古くからの知り合いの近くへ…」

「私はお前を知らない」

 ユーノは凍てついた声で応じた。

「また、これから知ろうとも思わない……お前はもうこの世にいなくなるからな」

『ぎゃうっ…!!』

「!」

 カイルーンが絶叫すると同時に、右腕に込めていた力を抜きながら剣を放した。ぐんと引っ張られた右手の先から、光条となって剣が飛ぶ。身を躱す間もあらばこそ、狙い違わず薄く開いたディオングの口の中へ突き立つ。かっと金の虹彩が燃え、苦痛の呻きを上げるのも待たず、引っ張られている右腕の勢いのまま馬から飛び降りる。パッと足元に黄色の煙が立つ。すぐに後方へ置き去ってディオングに走り寄り、口の中に突き立った剣の柄を掴むや否や、勢いを込めて渾身の力で下方へと、腹の方へとなおも斜めに深く押し入れた。

「グ、グエエッッ!!」

 ディオングが声を上げ、右手首から触手を解く。これ幸いと、握った柄を持ち直し、今度は斜め上へと切り上げた。閃光を放って剣が走り、ディオングの口中を抉って脳天へ、顔面を切り裂いて抜き放つ。

「グアアアアーッ…」

 叫び声を上げて倒れ込んでくるディオングの返り血を浴びまいと、ユーノは飛び退った。そのまま手綱に手を掛け、ひらりと再び馬上に戻る。飛び乗る瞬間、背後のカイルーンの無惨に引き裂かれた姿が視界に入った。が、感傷に浸れるほど周囲は静かではない。新たな『穴の老人』(ディスティヤト)が次々と襲いかかってくる。蹴り、突き、殴り、叩き、切り、裂き、潰し続ける。

 いつ果てるともない血みどろの死闘は夜明けまで続いた。『泉の狩人』(オーミノ)のうち、誰一人としてまともな格好をしている者はなく、破れ切られた青衣に乱れた髪を散らした姿ばかりが残った頃、そして彼ら以外の何者も生ある者動ける者がいなくなった頃、生者の守り手である陽はようやく東の空を明るませた。

『ユーノ…』

 のろのろした動作でミネルバが近づいてくる。切り解けたユーノの防備を心配そうに見上げ、

『大丈夫か…?』

 物憂げに問いかけた。

 馬の背にのめるようにかろうじて乗っていたユーノは、血と脂とわけのわからぬ体液でぐしゃぐしゃになった衣類と強張って開かない指に触れ、ゆっくりと辺りを見回した。

 戦いがいつ終わったのか、ユーノには覚えがなかった。ただ、なぜか、いつかしら、自分に斬りかかってくる者がいなくなったのを、薄ぼんやりと覚えているだけだ。

 白々とした陽の光は、血肉に埋もれた戦場を隅々まで晒した。むかつきが襲ってきて、ユーノは口元を押さえた。疲労からか目眩がする。胃の腑が縮まっていて、口を開きたくなかった。顔が青ざめたのだろう、ミネルバが不安そうな声になる。

『ユーノ…』

「…大丈…夫……」

 ようようユーノは答えた。

「報告を……何名…残った……?」

 放心するほど疲れ切っても尋ねた内容に、ミネルバの眼窩の奥に、一瞬状況に不似合いな誇らしげな笑みが浮かんだ。が、すぐに厳しい声で、

『私とそなたを入れて……5名じゃ』

「そんなに…か…」

 ユーノはことばを途切らせた。

「カイルーン………ディーディエトは?」

 ミネルバは無言で首を振り、僅かに背後を振り返った。

『あの辺りの死骸の中におるじゃろう……ユーノ!』

 再び顔を向けたミネルバがはっとしたように叫ぶのが遠くで聞こえた。

 ユーノは地面に引き込まれるように、馬から滑り落ちながら気を失っていた。

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Last updated  2020.08.09 00:00:12
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