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2017.12.14
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「無事も無事」
 シートスは微笑しながら平原竜(タロ)の向きを変えた。呆然としている部下に、ついてこい、と眼で合図する。そのシートスに馬を並べながら、アシャはようやく落ち着いてきたようだ。
「あなたも聞いた通りですよ。星の剣士(ニスフェル)。星の剣士の名前の方が恥じるでしょうな」
「…」
 淡く微かな、どこか誇らしげな笑みがアシャの唇に滲んだ。
「それに、あの子の剣は何ですか? 『銀の王族』があれほどの剣を使えること自体が驚きだが…」
「どのように見える?」
「そうですね」
 シートスは少し考え込んだ。頭の中にこれまで戦って来た相手を浮かべてみる。だが、どれもユーノの剣の冴えに重なる者はいなかった。シートスは軽く首を振って、ちらりとアシャを見やった。
「強いて言えば、あなたの……視察官(オペ)の剣に似ている」
「…」
「もっとも、『銀の王族』のように優しくか弱い一族が、視察官(オペ)の守備即攻撃の荒々しい剣を身につけられるとは思いませんが」
「そうだ、と言ったら」
「え?」
「視察官(オペ)の剣を未完成ながら身につけた『銀の王族』だと言ったら?」
「……あなたが教えられたんですか」
 シートスはアシャの悪戯っぽい眼が含んでいる問いに応えた。
「…道理で、並の野戦部隊(シーガリオン)じゃ敵わないはずだ」
「…」
 ふっと悔しいほど魅力的な笑みがアシャの唇から零れた。教え子に対する自信と信頼、育て上げた存在の評価に満足した顔、今まで見たことのない大人びた微笑。
 側に居た部下がもじもじと体を動かす。どうやら、その男もユーノに手合わせ願って、見事一本取られた口らしい。
「『銀の王族』が、視察官(オペ)の剣を、ね」
 繰り返しながら、シートスはユーノが初めて彼の前へ姿を現した時のことを思い出していた。
 どこか追い詰められた緊張感漂う黒い瞳、戦場ばかりを見てきているような振舞い、野戦部隊(シーガリオン)のふてぶてしい男達にもたじろぐことなく、ことばの端に宮廷生活を思わせる上品さが漂うのに、質素な天幕(カサン)の生活も黙々と耐え忍んだ。
(なるほど)
 シートスは平原竜(タロ)の上に体を安定させながら考えた。
(アシャに見込まれた剣士ならば、それも頷ける…しかし)
 ふと閃いたことばを口に乗せる。
「アシャ、星の剣士(ニスフェル)は、『あなたにとって』何か特別な人間なのですか?」
 視察官(オペ)の剣は特殊な剣だ。単に才能だけでは身に着けられない。感覚から組み直されると聞いたことがある。
 だからこそ、それを視察官(オペ)以外が使えるようにはならないとされる。生徒の教師への強い信頼、教師の生徒に対する深い理解、それらがうまく重なって初めて教えられる類のものだとも。
 それだけ手間暇かかる難しい仕事、言い換えれば、それほど誰かに自分の全ての時間を注ぐような接し方をするアシャを、シートスは知らない。
(子ども? まさかな)
 親子の絆ならあり得るかも知れない、だが、そんな絆自体がまずあり得ない。
「………」
 沈黙があった。
 駆け続ける草原、その地平の彼方へ向けていた目を、緩やかにこちらに回してきたアシャが、低くぽつりと口にする。
「そうだ」
 く、っと引き締められた唇が、先ほどまでの興奮を消し去っていた。削いだような線の頬、暗く陰った紫色の目の語る想いをシートスは読み取る。
「失うわけにはいかない、ですか」
「…」
(たとえ自分が側に居なくても、その命を守り切るために)
 その想いの深さに価するのは、おそらく、世界でただ一人の存在だから。
「よろしい。では急ぎましょう」
「ああ」
 怯えがちな一頭の馬と、重い地響き立てる二匹の平原竜(タロ)は、速度を上げて野戦部隊(シーガリオン)の野営場所を目指した。

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Last updated  2017.12.14 20:23:17
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