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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2022年11月12日
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わが名はも 千名(ちな)の五百名(いほな)に 立ちぬとも 君が名立たば 惜しみこそ泣け

(― 私の悪い噂は、千人中で半分の五百人位にも既に立ってしまっておりますよ。それは意に

も介しませんが、もしも仮に私ではなくてあなた様の名前が悪く言いふらされてでもいるのでし

たら、私は悔しくて泣くに泣くでありましょう、きっと。その事をよくよく考えて下さいませ)


 今しはし 名の惜しけくも われは無し 妹によりては 千(ち)たび立つとも(― 私は今は

もう名が惜しいことは全くありません。ましてや、あなた様の如き素晴らしい美人とならば、悪

い噂が千を超えて無数に立ったとしても何らの痛痒も感じは致しません)   ―― 言葉という

ものは面白いもので、過度に何かを強調しようと試みると、その意図とは逆に、程度が非常に軽

い印象を与えてしまう。そればかりではない、真剣度そのものが揺らいでしまい、相手を茶化し

てでもいるかのように見えてしまうのだ。つまりは、それが真の狙いだった、と言わんばかり

に。自己韜晦の極致とも、深読みすれば、解釈出来なくはない。ここで、私も含めた近代人が我

知らずに陥っている陥穽がある。曰く、古代人は 素朴で、純粋 である。その通りでも、ある

し、そうではないかも知れない。つまり、そんな余計な事を考えずに、虚心に文脈の流れに沿っ

て素直に、自然に文意を読み取れば良いので、現代人は昔の人に比べてソフィストケイトの度が

過ぎているなどと知ったかぶりをしていると、御当人が損をするだけなのだ。人間は、人の心は

時代ではなく、空間的な制約をも受けているのは至極当然のことなのだから。地理的な環境は、

特に我が日本の様に明治維新後に激しい環境の変化を経験した場合には、様々な文化的な影響を

受けていそうではなかった昔に比較すれば、同じ国の民とは一見思えない程の変貌を遂げている

と考えなければならず、人の心の内部にも激しい違いが見られて当然と考えるのが普通だろう。

しかし、人間は何時でも、何処でも、人間であったし、これからも人間で有り続けるだろう。そ

うあたふたとして右顧左眄する必要もないと、高を括っておくに如くはないだろう。


 うつせみの 世やもニ行(ふたゆ)く 何すとか 妹に逢はずて わが獨り寝(ね)む(― 人間

の住む世は二つの世界が同時に並んで存在しているのだろうか。同じ世界に居ながら恋しい女性

と会えないなどとは、理不尽であり、どうして私は一人寂しく寝なくてはならないのか。やんぬ

るかな、やんぬるかな)


 わが思(おも)ひ かくてあらずは 玉にもが 眞(まこと)も妹が 手に巻かれむを(― こん

な悲しく淋しい憶いばかりしていないで、ああ、美しい宝玉になってしまいたい。そうすれば恋

しい女性の手にぴったりと巻かれて、何時でも一緒にいることが出来るのに…)


 春日山 霞棚(たな)びき 情(こころ)ぐく 照れる月夜(つくよ)に 獨りかも寝む(― 春

日山に春霞が棚引いていて、私の心が恋の煩悶のためにもやもやとしていることを暗示している

ようです。この霞に遮られてぼんやりと照っている月の光の下で、私は独り寝をせざるを得ない

のですが、何と切なく苦しい事でありましょう、御推察下さいませ)


 月夜(つくよ)には 門に出で立ち 夕占(ゆうげ)問ひ 足卜(あうら)をそせし 行かまくを

欲(ほ)り(― 月の出ている美しい夜には、我が家の門のところに出て、道行く人の言葉を聞い

て吉凶を占う夕占をし、又、歩いて行って右足、左足のどちらが先に目標につくかによって占い

をする足卜をして、恋しいあなたに逢いに行くか否かを決めようと、弱くなった自分の心だけで

は決めかねている、心弱い私になってしまっているのですよ。こんな軟弱な男ではなかった筈な

のにねえ…)


 かくかくに 人は言ふとも 若狭道(わかさぢ)の 後瀬(のちせ)の山の 後も逢はむ君(ー

 世間の人たちは様々に噂しているようですが、若狭道にある後瀬の山ではありませんが、次節

をしばらく待って、後に又お逢いしたいと存じます、元気をお出しくださいまし、敬愛申し上げ

ている我が君様)


 世間(よのなか)の 苦しきものに ありけらく 戀に堪(た)へずて 死ぬべく思(も)へば(

― この世の中とは今更のように苦しいものと切実に感じておりまする。恋心の苦しさ切なさで

死にそうだと思われておるます故に)


 後瀬山 後も逢はむと 思へこそ 死ぬべきものを 今日までも生(い)けれ(― 後瀬山の 

のち ではないけれども、後にこそはあなたと会いたいと願ったからこそ、私は今日の日まで生

き長らえているのです)


 言(こと)のみを 後も逢はむと ねもころに われを頼めて 逢はざらむかも(― 貴女は言

葉だけでは後で会いましょうと心を込めて仰り、私を心頼りさせていながら、遂には会って下だ

さらないのですね。何と酷い仕打ちをなさるのでしょう)





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最終更新日  2022年11月12日 17時38分33秒
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