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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2024年02月09日
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ラリー (困ったように彼を見詰めて)何を理解するって。

パリット (性急に)そう、僕がこれまでにやって来たこと全て。(視線を逸らして)ああ、こ

いつは地獄の神経をもっていると、貴方が考えている事を僕は知っているよ。餓鬼の頃以来彼

には会っていない。僕は彼が生きているのをすっかり忘れてしまっていた。でも僕はあなたを忘

れた事は無いんだ、ラリー。あなたは僕に注意を払ってくれた、或いは僕が生きていると知って

いるマザーの唯一の友人だった。外のみんなは運動に夢中だったのだ。マザーでさえもが。そし

て僕にはオールドマンはいない。あなたは膝の上に僕を乗せて、話を聞かせ、冗談を飛ばして僕

を笑わせてくれた。僕に質問をして僕が真面目に答えるのを受け止めてくれた。長年の間あなた

は僕等と一緒に住み、僕のオールドマンの地位にいたように感じていたように思う。(困惑した

ように)しかし、畜生め、それは女々しい感傷過多さ。あなたはそんなことは何も覚えてはいな

いだろう。

ラリー (思わず感動させられて)よく覚えているよ。君は生真面目な寂しい詐欺師だった。

(やがて感動から冷めた後で、話題を変えて)警察が君の母親やその仲間を逮捕した時サツは君

を逮捕しなかったのかい。

パリット (声を低めて、しかし事情を告げたくていたように熱心に)僕は現場にはいなかっ

た。その知らせを聞くや否や僕は隠れ家に潜伏した。あなたは僕が運のいい人間だと気づいてい

た。僕は警察に囲い込まれた。ある種、変装した者として。僕は溜まり場や賭け場、偽装ショッ

プなどサツが決して探さない場所を転々としていたのだ。とにかく、警察は重要人物は逃さない

でいて、後になるまで僕の事などは考えなかった。

ラリー 新聞はバーンズと言う男が事前に情報をリークして運動家の内部情報は漏れてしまって

いたらしいと書いていたよ。

パリット (眼だけラリーに向けて、ゆっくりと)そう、それは本当だろうと思う。誰が犯人な

のか分からないままだ。いずれ真相は解明されるだろう。バーンズ達をはじき出す取引はされ

た。警察は証拠など必要としていない。

ラリー (緊張して)御蔭で、俺は有象無象の奴らを信じる気は全くない。奴等とはとっくの昔

に縁を切ってしまっている。俺は奴らが大馬鹿野郎で、大部分が奴らが攻撃している最悪の資本

家同様に権力をどん欲に欲しているのだ。俺は断言するが、奴らの中に平和主義者など一人もい

ない。

パリット 確かに。僕も同様に宣誓するよ、ラリー。

ラリー 誰であれ、地獄堕ちだよ。

パリット 全く、同感だ。

ラリー (少し間を置き、ぶっきら棒に)どうやって俺を見つけたのだ。俺の平和を乱しに誰も

この場所に来ない隠遁場所を此処に見つけたのだからな。

パリット マザーを通じて発見したのさ。

ラリー 彼女には誰にも教えるなと頼んでいたのだが。

パリット 彼女は教えてはいない。が、彼女はあなたからの手紙を全部隠し持っていて、僕は彼

女のアパートでそれを見つけて、彼女が逮捕された後で或る晩そこへ忍び込んだわけさ。

ラリー 俺は彼女が手紙を貯めているなどとは考えもしなかった。

パリット 僕もそう思った。マザーには柔らかさやセンチメンタルな要素はなにもなかったか

ら。

ラリー 彼女からの最期の手紙には返事を出さなかった。彼女にはここ数年手紙を書いていない

し、外の誰にも書いてはいない。世界の誰とも交信しないように欲望を遮断してしまっている。

さもないと、大切な点は、あのどん欲な狂気に邪魔されてしまうからね。

パリット マザーがあんなに長くあなたと通信を続けていたのは奇妙なのだ。彼女が誰とも終

えてしまったのは、彼女の終わりなのさ。彼女はそれをいつも誇りにしていた。そしてあなたは

彼女があの運動をどう感じていたかを知っている。信仰復興者の信仰への説教みたいに、信仰へ

の信頼を失った者は彼女には死人以上の存在なのだ。それは油で煮られるべきユダなのだ。そ

れでも彼女はあなたを許すでしょう。

ラリー (皮肉に)いいや、許さないさ。気にするな。彼女は手紙で俺を非難し、罪人を悔悟へ

と誘い、再び唯一絶対への信仰へと導くだろう。

パリット どうしてあなたは運動を捨てたのですか、ラリー。マザーの為にですか。

ラリー (ぎょっとして)馬鹿野郎! どうしてそんな馬鹿々々しい事を考えるんだ。

パリット いいえ、何でもありませんよ。ただ、あなたが去る前に彼女と喧嘩した事を覚えてい

るのです。

ラリー (拒絶するように)ああ、それなら別に構わない。それは十一年前の事だ。君はたった

の十一歳だった。我々が喧嘩したとすれば、俺が運動は美しい単なるパイプ・ドリームなのだと

信じる様になったと彼女に告げたからさ。

パリット (奇妙な笑いを浮かべて)僕はそんな風には記憶してはいない。

ラリー それじゃあ君は自分の想像力を侮蔑して、忘れてしまえよ。(急に話題を変えて)君は

俺が何故運動を止めたのかと訊いたが、それには十分な理由があるのだ。一つは俺だから、もう

一つは仲間だ。最後は一般には人間と呼ばれている豚野郎だからさ。俺自身は、俺は強制されて

認めた崇高な理由に三十年間献身した挙句に、俺はそれ向きではなかったことを悟ったのだ。俺

は問題のあらゆる側面を見なければいられない呪われた者として生まれついた。君がそんな風に

呪われていたら、最後には問題が倍加されて膨れ上がり、終いには問題が山積して終わりが無く

なる。歴史は証明している、何ごとでも成功するには、とりわけ革命は、馬の様に目隠しをして

前だけを見る事になる。また、悟るのさ、全てが黒で、全てが白だと。偉大な目的に献身する

仲間はホレイス・ウオルポールがイギリスでしたように、人民の為なのだと感じたよ。理想の自

由社会を構成する材料は人間自身と泥と肥しから作る大理石の寺院などじゃあない。人間の魂は

雌豚の耳なら、シルクの財布を夢見る時間はあるよ。(冷笑的に笑い、しゃべり過ぎたのを悔や

むかのように慌てて)そう、だから俺は運動から足を洗った。それは君の母親とは何の関係もな

い。

パリット (嘲る様に笑い)ああ、確かに。僕は賭けてもいいが、マザーは彼女が原因だと思っ

ている。あなたは彼女を知っている、ラリー。時々彼女の行動を聞くと、彼女こそ運動そのもの

だとあなたは思っている。

ラリー (彼を見詰め、困惑してそれを跳ね除ける様に、鋭く)話すのは君にとって地獄への道

だよ、彼女に起こってしまった後ではね。

パリット (困惑し罪悪感を感じながら)僕を悪く思わないでください。あなたを小馬鹿にして

いるのではないので。ただ、からかっているのです。僕は彼女をからかって同じような事を何度

も言ったりしたものだ。しかしあなたは正しい。僕はそうするべきではなかった。僕は彼女が刑

務所に居る事実を忘れ続けている。それは現実ではないようだ。実際信じられない。彼女はいつ

でも自由闊達だった。僕は……、そのことを考えたくはないのさ。(ラリーは止むをえずに同情

的になっている。パリットは話題を変えて)あなたは西海岸を離れてからずっと何をして長い年

月を過ごしていたのだろうか、ラリー。

ラリー (冷笑的に)何もしちゃいないさ。俺は運動を信じてはいなかった。外の何も、とりわ

け国家などはね。おれはその社会の一員になる事を拒否し、ずっと哲学的な飲んだくれだったし

それを自慢にしていた。(突然に彼の口調は鋭く拒絶的な警告調になり)聞けよ、よそ者への出

しゃばった質問に答える独自の理由があると考えてくれ。今の俺と君との関係の様にだ。強い予

感があった、君が俺に何かを期待してここにやって来る。最初に君に警告する、誤解が生じない

ように、君に与える物など何も残しちゃいない。俺は独りになりたい、君が君自身で生きて行く

のに感謝しよう。君は何かに対して何かを捜しているようだと感じる。俺は誰かに与える答えな

ど持っちゃいない、俺自身に対してもだ。ハイネがモルヒネに捧げる詩に書いている事を君が想

起しなければ…、(彼はその詩の最後の聯の翻訳を引用して、冷笑的に)

 見よ、眠りは美味し、死は更に善し。慰めとして、最善の事はこの世に生まれない事だ!

パリット (ぎょっとしたように怯んで)それは答えとしては最悪だ。(それから強がりの無理

したにやりを示して)でも、その死が何時身近に来るかあなたには分からない。(目を逸らす)

 (ラリーは彼を戸惑いの目で見つめ、われ知らず興味をそそられて、同時にぼんやりと不安そ

うに)

ラリー (無頓着な調子を無理に作って)君は母親が入獄して以来あまり彼女に関する情報を入

手する機会がなかったのだと思う。

パリット ええ、全く。(もじもじした後で、出し抜けに言う)いずれにしても、母は僕から何

かの便りなど望んでいないでしょうよ。僕らはあの事件が起こる前に喧嘩したんです。母は僕が

売春婦達と付き合っていると僕を怒鳴りつけたのです。僕は母から逃げて来たのだ。僕は母に言

った、貴女はいつも自由な女を演じ、何物からも独立して…、(そこで自制してから急いで続け

た)それが母の癪に触った。母は言った、僕のする事などに介入しない。僕が余計な事ばかりし

て肝心な運動から関心を失ってしまったのだと疑っている、と。





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最終更新日  2024年02月11日 09時30分20秒
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