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ラリー (パリットを見つめて)それでどうなのだい。
パリット (たじろいで、そして強調するように)確かに。僕は馬鹿じゃあない。僕は永遠に信 じ続ける事など出来はしないあの連中が世界を変えるだろうなんて、粗末な演台上でするあのけ けばけばしい戦略論や不潔なビルや橋を爆破する方法で。僕は賢く振る舞って、それが全部気違 いじみたパイプドリームだと知ったのだ。(訴えるように)ラリー、あなたも同様の事をした。 それが僕を此処へ来させたのです。あなたが理解するだろうと僕は知っている。僕を終わらせた のはこの最期の仕事、誰かが秘密取引で裏を掻く事なのだ。あんなことが起こってしまった後で あなたは何を信じるられでしょうか。あれでなたは凍り付いてしまった。あなたは何が何だか分 からなくなってしまった。あなたは終わってしまったのです。(訴えるように)僕の気持が解る 筈ですよね、ラリー。 (ラリーはパリットを見詰め、同情して、思わず知らず憐みを感じ、混乱するのを拒絶する ように自分がパリットに感じている何かに困惑して。しかし、彼が返答をする前にヒューゴが自 分の腕から突然頭をもたげ、半分酩酊したまま喋り出した) ヒューゴ (ガラガラ声の熱弁調で自分に言い聞かせるように)日々は熱くなり、おー、バビロ ン。汝が柳の下は涼し。(パリットは吃驚したようにヒューゴの方を向く、パリットは酔眼朦朧 とした彼を見ても識別できずに自動的に、威嚇する如くに叫ぶ)くたばれ、便所鳩め。 パリット (ちじこまり、口ごもりながら)何だって。どういう意味なんだ。(やがて憤慨した ように)薄汚い虫けらめ。そんな風に僕を呼ぶな。(拳を固める) ヒューゴ (これを無視し、パリットを認めて、子供じみたたらかい口調で)やあ、坊や。猿面 冠者君。君だとは分からなかった。大きくなったなあ。御母ちゃんは元気かね。何処から来たの だ。(威嚇するような口調になって)馬鹿な真似はややめろよ、一ドル貸してくれ。酒を買って くれ。(これで彼は消耗してしまった如くに、自分の言葉を忘れ再び腕の中に頭を落として再度 眠り込んだ) パリット (ほっと吐息をついて)解った、君に酒をおごろう、ヒューゴ。僕は破産している が、君に一杯の酒ぐらいは振る舞える。腹を立てたりして済まない。君は酔っぱらうと誰でも便 所鳩呼ばわりすることを覚えておくべきだったんだ。でも,今の場合には冗談なんかじゃ済まさ れない。(不安げな表情で見ているラリーの方を向き、自分自身の考えに怯えたかのように、笑 みをムリに見せて)ヒューゴはまた眠ってしまった。(防御するように身を固くして)その怖い 目つきで僕に何を与えようとしているのだろうか。ああ、解った。僕が彼を打とうとしたと思っ たのだ。僕はどんな風に見えるのだろうか。僕はいつでもヒューゴを大いに尊敬し続けて来た。 例の運動の連中が老いた飲んだくれ野郎と爪弾きした時でも、僕は彼の味方に立った。ヒョーゴ は自分の田舎で十年間勤勉に働き、一人で目を潰してしまった。僕は奴らの何人かがあれに拘泥 しているのを見たいと思っている。そう、彼等は今やチャンスを掴もうとして、(急いで)いや 、そういう意味じゃあない。でもそれは忘れよう。このゴミ捨て場についてもう少し話してくれ ないか。誰が此処に屯している。誰が急性の肺炎に罹ろうとしているのだ。(ルイスを指差して いる) ラリー (殆ど怯えたようにパリットを見詰めて、それから視線を逸らして、この機に熱心に話 題を変える事に振り向てる。彼は寝ている者達を冷笑的に描写し、同時に彼等に対する愛情を示 しながら)あれはルイス大尉、往年のイギリス陸軍の英雄。彼は土人の槍で受けた背中の傷を膏 薬で塗り固めた時に、裸になってそれを見せようとする。彼に対抗する髭もじゃの男は将軍ウエ ット・ジョーエンだ。彼は義勇民軍を指揮した。二人ともこの地に来て、セントルイス市のボア 戦争の見世物で働き、それ以来親友になっのだ。彼らは南アフリカで互いに殺し合いをした勇敢 な時代を懐かしむ時間を楽しみにしている。二人の間に挟まっているちび助が、ある英字新聞の 特派員だった。彼のここでのニッ久ネームはジミー・トモロー。彼は我らの明日運動のリーダー さ。 パリット 彼らは暮らしの為に何をしているのです。 ラリー 最小限の事さ。時たま彼等の一人が上手くどこかと接触して、何人かが家庭との接触で 月に数ドル入手する。決して戻らないからという条件でだ。後の連中に関しは無料ランチと旧友 のハリーホープの援助で生活している。ホープが好きな者なら働こうと働かまいとそうするの さ。 パリット 大変な生活だね。 ラリー そうでもないのさ。同情無用だ。彼等は感謝なんかはしない。彼等は何とかして酒を飲 み、どんな手段を講じてでも自分たちのパイプドリームを持ち続ける。それが人生に連中が求め ている物の全てなのだ。奴等程に満足している人間を見た事が無い。人が心の底から欲している 目的を達するなんて、そうざらにあることじゃあない。それはハリー本人やテーブルの一番端に いる二人の旧友にも当てはまる事。ホープは今の生活にすっかり満足しきっているので、二十年 前にかみさんが死んで以来、外の場所に足を踏み出すことをしようとしない。彼は完全に外の世 界を必要としてはいない。この場所は通りを挟んだ市場の人間や河岸沿いの労働者と素晴らしい 商売が出来るので、彼の渇望と善良な心にもかかわらず、外に出る事になる。彼がタマニー派の 政治家だった頃の知り合いがいつもいるので、困難さを心配しないでいられるのだ。それに友好 的な醸造所があってしのいでいるのだ。彼の二人の友がどう働いているかなんて訊かないでく れ。こには生涯を通じた客以外はいないのだ。此処に向いている一人は義理の兄弟、エド・モッ シャー、彼は以前チケット売り場でサーカスの一員として働いていた。パット・マクグロインは もう一人で汚職が横行した時代に警官だった。が余りにも強欲だったので、粛清の査察で権力か ら追放された。(ジョーに頷いて)ここのジョーも同じく輝かしい時を持っていた。そして一頭 の色付き馬を所有してどえらい博打打だった。そう、これで吾等の身内の全部で、あとは二人の バーテンダーとその娘達、三階に部屋を持つ路上の貴婦人方だ。 パリット (厳しく)糞くらえだ。僕は二度と売春婦などとは関わりたくない。(ラリーが困惑 して目くばせすると、彼は混乱して付け加えた)彼女達はいつも困らせるのだ。 (彼が話をしているとウイリー・オーバンが目を開けた。仲間の方へ身を傾けて、大酒を飲ん でいたのでからかうような鄭重さで話す) ウイリー 何故に俺を君の人名録から外したのかね、ラリー。俺はこの仲間内では唯一血統書附 きなのに。(パリットに向かって、散漫に)ハーバード大で教育を受けてもいる。君は此処の文 化的な雰囲気に気づいているね。俺のささやかな貢献さ。そう、寛大なる他人。君が寛大なのを 認めよう。俺は高貴な血筋に生まれたが残念ながら跡取りではなかった。故世界的に有名なビ ル・オーバン、バケット商会の総帥の息子だが。地方長官によって指揮された革命的な取り締ま りで父親は廃位され、追放された。事実、ぶっちゃけた話が、彼を桶の中に閉じ込めてそのカギ を捨ててしまった。彼の精神は幽閉された冒険心のそれだ。そうして父は死んだ。こんな回顧談 を許してくれたまえ。疑いもなく、これは君がよく承知している事だし、世界中が知っている。 パリット (居心地悪るそうに)不運だ。初耳ですよ。 ウイリー (信じられないように目をしょぼつかせて)聞いた事がない。俺は世界中が…。そ う、ハーバード大でさえ評判で俺の父親の事はよく知られていた。地方長官が悪い宣伝を彼に与 える前だったけれども。新入生の頃から俺は有名だった。社会は温かい温情で迎えてくれたさ。 あたかも、ヘンリー・ワーズワース・ロングヘローがブラットル通りでカンカン踊りを踊ってい た黒人女性に示したであろう様なそれで。ハーバード大学は俺の父親の発想に依った。彼は野心 家にして高慢だった。俺にとって何が最善かを常に知っていた。そして俺は自分でも輝かしい成 績を獲得した。逆恨みした級友が汚い策略を仕掛けるのを俺は恐れた。(彼は引用する) ” 懐 かしい学生生活、楽しき日々よ。人生の最高にして素晴らしき時代 “ それは勿論、イエール大 のニュウヘイブンでの大学的な誇張に過ぎない。俺はロースクールでも抜群の成績だった。父親 は一家に弁護士を擁したいと念願していた。彼は計算高い男だったから。完全な法律の知識は法 網を潜り抜ける抜け道を探るのに便利な手段だった。しかし俺はウイスキーに抜け穴を見つけ、 父親の支配を脱した。(突然パリットに向かい)ウイスキーと言えば、どうか思い出させてくれ ないか、そいて君も思い出してくれたまえ、皇子に出会ったら形式的な挨拶を、貴方は何を御望 みですか、と。 パリット (防御的な拒絶を示して)だめだ、あんた達は僕が金銭の塊だと思っているみたい だ。皆に御馳走する銭を何処から手に入れると思うのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年02月13日 16時24分57秒
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