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マクゴロイン 彼は嘘つきだ、マック。君は俺が会いたかった正にその人なのだよ。君のケース
を俺が取り扱うとすれば、別れる前に話し合いをしなければいけない。 マクグロイン (侮辱するように)話さないだろう。この馬鹿野郎め、俺は君の父親の息子を俺の 弁護士にしなければならないと君は思っている。彼等は君を一目見て怒鳴り散らすだろう。(ウ イリーは怯んで椅子に沈み込んだ。マクグロインは第一列のテーブルのところに行き、バーを背 にして坐る)いずれにしても、俺は弁護士は必要じゃないよ。法律なんか糞くらえだ、俺がしなけ ればならない事の全ては正義の士を見つけて言葉を渡すことだ。彼等もそうする、彼等は俺が枠 の中にいるのを知っている。一旦言葉を渡してしまえば、上々首尾なんだよ、法があろうとなか ろうと。 モッシャー 神よ、俺はこのキチガイ屋敷を出られるのが嬉しいのだよ。(鍵をポケットから引 き出しバーの上にポンと置いた)此処に俺の鍵を置くよ、ロッキー。 マクグロイン (自分の鍵をポケットから出して)これが俺のだ、(ロッキーに手渡した)あの間抜 けのヒッキーと同じ屋根の下で眠るくらいならドブの中で寝たほうがましだ、あの曲芸師め。 (暗く付け加えた)あの帽子がここの誰かに似合うなら、そいつにやってくれよ。 (モッシャ ーが憤激してマックに向き直ったが、ロッキーがバー越しに腕を掴んで制止した) ロッキー ニック、落ち着けよ。(モッシャーは収まった。ロッキーは鍵を棚の上に投げ上げ た、うんざりとしたように)君は俺に苦痛を与えるのだ、俺が君達に今夜鍵を返さなかったら安心 するだろうよ。(モッシャーとマクグロインの二人はロッキーを拒絶するように向きを変え、コ ーラに続いてチャックがホールから姿を現した時に間が空いた、コーラは酔っており彼女の一張 羅を身に付け、ルージュとマスカラ、髪はボサボサ、とにかくも帽子は被っている) コーラ (バーの中に二三歩踏み込む、抑えたくすくす笑いをしながら)今日は、みなさん。私達 来たわよ。ヒッキーが私等に言うの、そろそろ出ていく潮時じゃないのかってね、もし本気でそ うしようと思っているのならね。それでも私達はインチキじゃないよ。あの人、ハリーとジミー と一緒に下りてくるわ。あのね、二人共にまるで電気椅子にでも掛けられるみたいな感じだよ。 (びっくりた怒りで)もしこれ以上ヒッキーの与太話を聞かなければならないとしたら、私は脳み そをたたきつぶしてやるよ。(腕をチャックの腕に置いて)さあさあ、あんた。彼が下りてくる前 に出発しようよ。 チャック (不機嫌に)確かに、君が言うことは何でも聞くぞ、可愛こちゃん。 コーラ (チャックの方を向き)ええっ、そう、私は此処をおさらばしようって言ったのよ、そし て私にシェリー酒を何杯か、お別れにね、頂戴よ。 チャック 君は今、絶好調だな。 コーラ 優しくしてよ、けちんぼさん。そう、私のお金を使ってよ、ケチなんだから。あんたは 式の後で全部使ってしまっわ、知ってるのよ、(スカートをまくりあげて、ストッキングの一番 上まで見せて)此処よ、大きな浮浪者さん。 チャック (彼女の腕を叩いて離し、怒って)お前の汚い金を貯めておけよ、そしてその足を人前 で見せびらかすなよ、これから結婚するんだぞ。 コーラ (喜んで、甘えるように)分かったわ、あんた。(馬鹿げた笑いで周囲を見回して)ねえ、 あんた達バーの常連は結婚式には来てくれるの、(彼等はそれぞれの不安に夢中で、彼女を無視 している。コーラは不安そうにたじろいている)でも、私等は出て行くわ、みんな。(何の言葉も 聞かれない。彼女の目はロッキーに釘付けになり、絶望的に)ねえ、ロッキー、あんた耳が聞こえ なくなってしまったの。私とチャックはさよならするって言ったのよ。 ロッキー (バーを拭きながら)取り繕った無関心さで)それじゃ、さよならだ、ジョージーに宜し く伝えてくれよ。 コーラ (涙ぐむ程に憤って)あんたは私等の幸せを祈ってはくれない、この汚らしい男。 ロッキー そうだよ、来週までに再会するのを願っているさ。 チャック (怒って)ああ、君、何だってあんな奴を気にかけるんだい。(ロッキーは威嚇するよ うにチャックを睨んだが、彼は誰かが階段を下りてくる気配を感じて、コーラの腕を掴んだ)さ あ、ヒッキーが来るぞ。此処をずらかろう。(二人はホールへと急ぐ、通りへのドアがふたりの 背後でバタンと閉まった) ロッキー (陰気に死亡告知を口にする)一人の常連と下等売春婦が地獄に堕ちた。(痛烈に)あの 小汚いヒッキーも死ぬべきなんだ。 (一同の大半から賛同のブツブツ言う声が出た。そして ハリーホープがホールから入って来て、続いてジミートモローが、踵を接するようにしてヒッキ ーが続いた。ホープとジミーは共に自己顕示を全面に示しているし、コーラの二人に対する描写 は適切だった。彼等が歩いて入って来る姿には絶望的な誇張があるが、それは有罪を宣告された 死刑囚の最後の行進を暗示している。ホープは日曜日用の黒服を着用し、黒のネクタイ、靴、靴 下なのは葬式に行く服装であるような印象を与えている。ジミーの服はアイロンがかけられ、靴 は磨かれて、白いシャツは汚れが全くない。彼は二日酔いであり、その善良そうな犬目は血走っ ている。ヒッキーの顔は寝不足の為に少し引きつっているし、声はしゃべり続けのせいでしゃが れている。が、彼の大騒ぎするエネルギーは神経質な緊張にあらわれている。そして彼の輝く表 情は勝利の完成の一つなのだった) ヒッキー さあ、此処に来たぞ。遂にここまで来たんだよ、(ジミーの背中を軽く叩いた)よくや ったぞ、ジミー。君はそのふりをしている半分も病的じゃあないよ、どんなに遅らせても言い訳 は無用だ。 ジミー 君が俺から手を引いてくれたので感謝する。俺は明日もっと快適な状態でいると単に言 っただけだ…。でも、今日も元気なんだ、そう思うよ。 ヒッキー もうおしまいにしろ、だから、永久に御終いなんだよ、君は自由なんだ、(ジミーを ホープが彼を力づけるようにと押しやる)元気出せよ、ハリー、気づいただろうが君のリュウマチ は下の階に来る妨げをしなかった、そう言っていただろう。(周囲の者達にウインクする、ヒュ ーゴとパリットを除いてはみんなの目はヒッキーに厳しい憎悪で釘付けになっている。彼はホー プを悪戯っぽく軽く肘で小突いた)あんたにはアリバイは全くないのだよ、長官。ジミーと同様に 悪いよ。 ホープ (耳が聞こえないフリをして)えっ、聞こえないぞ。(挑戦的に)君は大嘘つきだ、俺は二 十年もリュウマチに犯されたりそうでなかったりを続けているよ。べシーが死んで以来だよ。み んながそれを知っている。 ヒッキー そうだ、君が一種のリューマチを発したり、そうでなかったりなのは我々は知ってい るさ。我々は君に期待してる、老ホラ吹きの君にだ。(クックと笑いながら又ホープの肩を軽く 叩く) ホープ (傷つき、しょげて、一種の逃避を図るようにみんなを見回して)おいおい、何だって君 らはそんな風に俺を睨みつけているんだよ、サーカスでも見物している気分なのかね。君等はど うして此処から厄払いして自分たちの仕事に戻らないのだ、ヒッキーが説得したようにだよ。 (彼等はホープを非難するように見ているが、目は傷ついている。彼等はそわそわして動こうと しているようだ) ヒッキー そうだ、ハリー、俺は確かに思ったよ、今頃は奴らも根性があるから姿を消している だろうって。(ニヤリと笑う)さもないと、多分俺には疑いがあるんだ、(突如彼は心底同情的で 熱心になる)何故って、俺は君等が何に歯向かっているか正確に知っているんだよ、君達。自分を 真実に向かわせた時に人はどんなにダメになってしまうか知っている。俺は骨身を削るような試 練を経験して来ている、そして俺自身のより嫌な偽者性と直面しなければならなかった。君達の 中の誰よりもだよ。知っているんだよ、自分のパイプドリームを消滅させて逃げ出すためにどん な汚らわしい口実だって手にしてしまう臆病者になってしまう事を。しかも、俺が繰り返し話し たように、自分自身と折り合いを付け続ける為に、そうした無駄な明日の夢が正に必要なんだ。 だから俺がそうしたように、君らも同じことをしてそんなムダを切り捨てないといけないよ。 (一息つく、彼等はヒッキーを畏怖と憎悪の感情で見詰めている。彼を呪詛し、飛びかかろうと しているようだ。が、動かずに、黙っている。ヒッキーの態度が変わり、優しく威嚇する如くに) さあ、君達、動いたらどうだ、誰が先頭を切るんだ、君か、大尉、君か、将軍、ドアに一番近い からなあ。その他にも、君らは年老いた戦争の英雄だから。君達は惨めな希望を先導しなければ いけないんだ。さあさあ、今だよ、あのモッダーリバー精神とやらを少しばかり俺たちに示して くれよ。もう聞き飽きる程に聞かされているんだ。君等は日永一日見物して、外の通りがまるで 噛み付くように恐怖するには及ばないよ。 ルイス (傷ついた怒りで振り向き、軽快な気安さで)正しいよ、君は。血だらけのノージーパー カー殿、時を押し出そう、たださよならを言うだけに待っているのだ、ハリー、老友よ。 ホープ (反発して)さよならだ、大尉。幸運を祈るよ。 ルイス おお、俺は運命に従うさ、御老人、同様に、幸運を祈ろう。(ルイスはスイングドアを 押し開けて、勇敢に外へ出た。そして右に折れて行く) ウエットジョーエン やれやれ、ライミーに出来るなら、俺だって…。 (彼はドアを押し明け、牡牛が障害物に突進するかのように重々しく歩く。左に折れ て姿を消す) ヒッキー (熱心に)お次は誰かな、どうだ、エド。素晴らしい夏の日だぞ、古いサーカスの魂が 君のちの中で奮い立っちゃあいなかい。 (モッシャーはヒッキーを睨む、そしてドアに向か う。マクグロインは椅子を蹴って立ち上がり、ドアに向かって動き始めた。ヒッキーは彼が通り 過ぎる際に軽く肩を叩いた)偉いぞ、マック。 モッシャー さよならだ、ハリー。(外に出て、右に曲がった) マクグロイン (不機嫌に目でモッシャーを追ってから)あの唐変木が空元気を出せるのなら…。 (彼は外に出て、左に曲がった、ヒッキーはウイリーを睨んで、相手が話し始める前に、椅 子からひょいと立ち上がった) ウイリー さよなら、ハリー。君の親切に大いに感謝する。 ヒッキー (背中を軽く叩いて)それでいいんだよ、ウイリー。領事館の連中は忙しいからな、君 を一日中待っているわけにはいかないや、そうだろう。 (ウイリーはドアへと急ぐ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年04月24日 17時05分06秒
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