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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2024年06月12日
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(ミラーは向きを変えて行こうとする。コリアーが止めた)

コリアー ミラーさん、あなたには大変感謝致します、私の…、ペイジ夫人に対する診療に。

ミラー どう致しまして、ウイリアム卿。ほんの少ししか手助けしておりません、ペイジ夫人に

対して。

コリアー (少し気色ばんで)私の理解するところでは、ミラーさん、あなたは資格のない医療実

施者ですね。

ミラー その通りで御座います。

コリアー お尋ねしたのは、今度のように極めて微妙な場合では、医療コードに厳格に縛られて

いるからなのです。

ミラー そう聞き及んでおります。それは英国の小学生の掟と全く同じ種類のものでしょう、ど

うです。警察には知らせない、こと。

コリアー (重々しく)あなたが我々の同義語を知っておられたことに対して祝意を表しましょ

う、ミラーさん。

ミラー 私は1938年以来、マン島での一年間を除いては英語以外は話したことがありません

。ご心配は無用ですから、ウイリアム卿。或いは、あなた、ペイジ夫人。私は告ったりはしませ

ん。私は寝室に防腐剤を置き忘れてしまったのです。取りに行ってもよろしいですか。

へスター どうぞ。(彼は寝室に入る)

コリアー 彼の表情が好きになれない、心配だなあ。

へスター 人からゆすりたかりをする人物に酷似して見えるわ。

コリアー 君の意見とは違うのだが、忌々しい事だ。少なくとも、報酬は支払わなくていけない

だろう…。

へスター 受け取らないでしょうね、彼を侮辱するといけないわ…。

コリアー どうだろうか、正当なテストになるが。 (ミラーが瓶を手にして寝室から出て来た)

ミラーさん、あなたが有資格の医療者ならばひとつしなければならないことがありますね。(ミ

ラーは不審そうにコリアーを見る、コリアーは自分の財布を取り出すと、五ポンド紙幣を取り出

して丁寧にミラーに差し出した)

ミラー (少し間があり、微かに微笑み)有難う、領収書をお送りします。(彼は紙幣を受け取る

と外に出て行った。コリアーは意味深長な身振りをへスターに示す)

へスター 貴方が勝った。

コリアー 人間性の研究は、結局、私の職業だからね。もしも彼から何か問題が生じた際には直

ぐに知らせてくれたまえ。

へスター (気だるそうに)そうするわ、ビル。

コリアー (腕時計を見て)行かなくては、十五分後には法廷にいなければならないので。

へスター 車を持って来たの。

コリアー うん。

へスター まだ、オウスチンですか。

コリアー いや、新しい車だ。と言うよりは、古い型の物、ロールスロイスさ。

へスター まあ、ちょっと見て見なくては。(窓際に行って覗くと、直様急いで戻り)おや、まあ

驚いたわ。フィリットンから買ったのね。こんな下町を貴方が訪問するだろうなんて誰が考えた

でしょうか。彼には言わないでしょうね。

コリアー 勿論さ。

へスター 彼は元気ですか。

コリアー そうだよ、元気だね。

へスター 彼に会いたいわ、ねえ。友人達にお会いしたいわ、ウイルソン嬢にだって。彼女はあ

のタイプライターを誇らかに叩いて神の賛歌を歌い続けているのでしょうね、きっと。

コリアー 多分、少しは改良が加えられてもいるだろうがね、彼女のタイプ術には。(彼は向こ

うの暖炉の上の絵を指差して)私は、あの絵が非常に好きになってしまったよ。

へスター 差し上げますわ。(間)

コリアー (静かに)とても、有難いよ。なんて素敵な贈り物なんだろうか。(へスターは彼の手

を喜びで握り締めた)それで思い出すのだが、多くの幸福な、昨日からの返礼だよ。

へスター 有難うね、ビル…。(その絵を指差して)今、お持ちになる、それとも、郵送しまし

ょうか。

コリアー (少しの間があり)取りに寄ってもいいかな。

へスター 何時ですか。

コリアー ペイジは何時ごろ戻る予定なのだろうか。

へスター 夜の七時以降だわ。

コリアー お茶に来よう。

へスター 五時頃ですか。

コリアー 五時二十分。

へスター 了解しました。

コリアー さようなら。

へスター さようなら。(二人は少し照れながら握手する)

コリアー 君に私が手助け出来る方法を見つけるように努力して欲しいのだがね。

へスター (静かに)方法を見つけるように努力しましょう。

 (コリアーはへスターに微笑み返してから、外の出る。へスターは、独り残されて、ポケット

からタバコを取り出して、それから、火を点けて、窓に行き、カーテンで自分の姿を隠して外を

見る。観客は車のドアーがバタンと閉められる音を聞く。そして車の音は遠ざかる。へスターは

ため息をつく。それから、ソファに行き、その上に横たわった。背中はドアーの方に向けてい

る。本を拾い上げる、しばらくしてから、本を膝の上に置き、ぼんやりと前方を見詰めた。ドア

ーが開かれてフレディー・ペイジが入って来る。彼は二十代後半か、三十代前半の年代であり、

年齢を感じさせない少年のようなハンサムな顔立ちである。彼はスーツケースとゴルフク

ラブ用のバックを運んでいる。ゴルフクラブをガタガタ言わせて角に置いた。へスターは彼が入

って来て動いているのを聞いているのは明白だが、頭をそちらに向けようとはしない。続く場面

の間中、彼女は全く彼を見ようとしない、後で、その瞬間が来るまでは)

フレディー 今日は、フェス。元気だったかな。僕は偉大な西に九十三打で勝利したよ。アルビ

ス…強打する。ジャッキー・ジャクソンは僕を同乗させてくれた。我々はゴルフをするのを諦め

たよ。雨が降り始めた、サニングデール中がどしゃ降りさ。所で、凄く大きなロールスが此処か

ら出てきたよ、僕が入る時に。あれは誰なんだろうか、分かるかなあ。(へスターは依然として

前方を見詰めたままだ、返事をしないで)老エルトンは無茶をして、彼の寿命に投資していると思

うかな、君は。驚かなくてもいいさ、我々から何かをむしり取ろうと考えてなんかいないよ…。

へスター よい週末を楽しみましたか。

フレディー 悪くはなかったよ。勝負は二回とも勝利した。ジャッキーより五ポンド取った。ジ

ャッキーとの試合が終わってからホールが残り、そこでサヨナラした。彼は激怒した。僕は掛金

を二倍にしたかったのだが、彼は承知しなかったのだ。

へスター 全部で、どれほどの勝ちがあったの。

フレディー 七ポンドだ。

へスター 幾らか貰えるかしら、エルトン夫人に渡すのだけれども。

フレディー この絵を売るつもりなのだと思っていたのだがね。コーヒは残っているかな。

へスター 今は無いわ。

フレディー 何故…。

へスター 人に上げてしまったの。

フレディー そいつはバカバカしくつまらないや。

へスター はい、そうですね。

フレディー ああ、つまらないや。分かったよ、三ポンド渡すよ、残りは昼食用だね。僕は南米

のをレストランのリッツへ持って行くつもりだよ。リッツでランチパーティーを開こうや。

へスター 南米のって、何なの。

フレディー 昨日ゴルフで会った奴。航空関係の仕事。僕は前に彼に自分を売り込んでいたの

さ…、分かるかな、英国で最も有名なパイロットの一人だ、D.F.C の。そして名誉の線章、

D.S.O、みんな古びた戦闘機のナンセンスだよ。彼は感動したみたいだが。

へスター そうでしょうね。

フレディー 勲章についてのおかしな事さ、勲章がどんな運か考える時にさ。それは戦争では役

に立たない、自慢話として以外には。でも、平和時には非常に有用なんだ。この男は札束をカバ

ンに詰めている、彼はここのビッカーと何か連携を取っているのだと思うんだ。彼が何か決めて

くれるだろう。

へスター そうであってくれればいいわね。

フレディー 兎に角、感触は良かったのだ、君は僕が部屋に入ってから一度も僕を見ようとしな

いね。

へスター そかしらね、フレディー。

フレディー 何故なのかね。

へスター あなたがどんな様子をしているか、私はちゃんと覚えているわ。 (彼はねそべって

いた肘掛け椅子から立ち上がり、へスターの所に行く)

フレディー (何かバツが悪そうに)僕は何か悪いことでもしたのかな…。

へスター (微笑んで)いいえ、フレディー。何もしてはいないわよ。

フレディー 君は昨夜、イライラしてすねていなかったかな。ねえ、奴らは今日もゴルフをした

がっているのだ。そして僕が奴らに勝ったなら…。

へスター それでいいわよ。

フレディー 君は電話で様子がおかしかったようだがね、夕食に僕が帰ってくることを望む特別

な理由でもあったのかな。 (へスターはまだ彼の顔を見ず、返事をしない。彼女はソファから

立ち上がり、彼に背を向けた。或る思いが突然にフレディーを襲った)

フレディー (爆発的に)ああ、神よ。(困惑したような間を置いてから)誕生日おめでとう!

へスター 有難う、フレディー。

フレディー 突風だ、僕は土曜日には覚えていたんだが…、僕はバーカーの店を通り過ぎる時に

君にプレゼントをするのは遅過ぎると思ったので、日曜日に開いている店を見つけようと思った

んだよ。タバコか、何かをと。夕食に何か特別なものを用意したのかなあ。

へスター 特別には、何も。ステーキと赤ワインのクラレットよ。

フレディー 今夜、それらを飲み食いすればいい。

へスター そうね。

フレディー さあさあ、ヘス、もうすねないでくれたまえ。済まないと言っただろう。もっと何

か言わないといけないかい。

へスター いいえ、言わなくてもいいわ。

フレディー (狡そうに)さあさあ、僕に君の豪華な青い両目を見せてくれないか。丸二日、見て

いないのだ。 (へスターは振り向いて彼を見る)これが僕さ、フレディー・ペイジだ。覚えてい

るかい。

へスター お覚えているわよ。(彼は前に進んで彼女にキスした。直ぐに彼女は殆ど醜い程の感

情の集中をこめてそれに応じた。一瞬の後に彼は彼女を押し戻して、悪戯っぽくぴしゃりと叩い

た)君のフレディーに拗ねてじゃれたりしない、さあ、行って服装を変えて、高楼へ行って手っ取

り早く祝いの食事を取ろうよ。

へスター (寝室のドアーの所で)あなたの南米で昼食をするわね。

フレディー いいや、そうじゃないよ。君のビーズのような眼を見ないでよりよい方法を見つけ

るよ。

へスター ちょっと前には豪華な眼球だったのにね。

フレディー 両目はガラス玉に変化するよ。さあ、君、急いで。

へスター (じっと彼の目を見詰めていたが)はい。

フレディー (ひょうきんさで)まだ僕を愛してるかい。

へスター (堅実に)まだ愛しているわよ。(外に出る、直ぐにドアーをまた開けて、ドアーは

内側に開くのだが、彼女は話しながら寝巻きを脱ぎ、ドアーの取っ手に掛ける)ねえ、あなた、五

時と六時の間に何処に行くのかしら。

フレディー 特別には、何処にも。何故だい。

へスター 外出していて下さらないかしら。ひとりで会いたい人が来る予定なの。

フレディー お客なんだね。

へスター そう。

フレディー 分かった、僕は道を降りたところの新しいクラブに行こう。

へスター (微笑んで)それでも、あまり酔っ払わないでね。夕食の事を忘れないでね。

フレディー 黙りなさい。 (彼女はドアーを開けたままで姿を消す。観客は浴室の水が流れる

音を聞く。フレディーはポケットを探り、空の箱を引き出した) (叫ぶ)ねえ君、タバコを切らし

たんだが。持ってないかな。

へスター (外で、叫ぶ)私の寝巻きのポケットにあるわ。

フレディー 分かった。 (彼はドアーの所に行き、寝巻きのポケットを探る。彼は最初に手紙

を取り出した。それからタバコの箱を。彼は手紙を戻そうとしたが、宛名をチラっと見た。彼は

眉を上にあげ、手紙を部屋に持ってきた。坐ってタバコに火をつけて、手紙の封筒を破り、読み

始めた)

へスター (舞台の外で)ありましたか…。

フレディー 何…、うん。あったよ、有難う。(彼は手紙を読み続ける)


        ――  幕  ――





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最終更新日  2024年06月12日 21時33分24秒
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