『芸術家の魂、だって?』丸山健二
「~、作文に毛が生えた程度の、少しばかりていねいに書いた台本くらいの、あまりに稚拙な文章に終始する代物となる。 ところが、それをよしとする幼稚な価値観が、手軽に酔えるという利便性によってたちまち蔓延し、数の多さによって商売になることで主流をなし、ときたま浮上してくる、高質で高次な作品は、そんなものを認めてしまったら自分の立場がなくなるという、焦燥と嫉妬心からことごとく排除されてしまった。そしてその反動として、もっと奥深い、魂や精神の核に触れてくるような、知情意が見事にまとまった真の文学作品と出会いたがっていた人々は、呆れ果てて諦め、立ち去ったきり、二度と舞い戻らなくなった。」(2017.5.13『作家の口福』朝日新聞)